Forthcoming 2024/25 Mars (1)

2024/25年小接近の火星

村上 昌己・西田 昭徳

CMO #532 (10 March 2024)

 


火星の次回の接近は、メーウスの接近表によると、最接近は、2025 Jan. 12,  13h38 m TD で、距離は0.64228au、最大視直径は14.57”の小接近である。2024年には、下表のように「西矩」と「留」があり、年末に逆行に移り接近してくる。

2024/25年の火星接近の事象の日時は以下のようになっている。

事象

星座

赤径日時 (JST)

黄経日時 (UT)

視直径

西矩

ふたご

2024 Oct 22, 10h09m

2024 Oct 14, 08h15m

8.6”/8.2”

かに

2024 Dec 08, 05h59m

2024 Dec 07, 20h59m

12.3”

最接近

かに

2025 Jan 12, 22h38m

2025 Jan 12, 13h38m

14.6”

ふたご

2025 Jan 17, 01h53m

2025 Jan 16, 02h39m

14.5”

ふたご

2025 Feb 24, 18h35m

2025 Feb 24, 09h35m

11.3”

東矩

かに

2025 May 01, 10h15m

2025 Apr 21, 01h34m

6.6”/7.0”

いて

2026 Jan 10, 10h10m

2025 Jan 09, 11h41m

3.9”

 

国立天文台 暦計算室 天象 長期版 https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/cande/phenomena_fy.cgi

および メーウスの接近表WinJuposを参照した。留と最接近以外は、日時が異なってくる。

「天文年鑑」(誠文堂新光社)の値は、赤径での日時になっている。

 

今接近の火星と地球の軌道上の位置関係は次のようになっている。今後、20272月と20293月の接近は火星の遠日点付近での距離の大きな小接近となる。

 

軌 道 図

 


 

 

◎ 接近状況

接近時には、「ふたご座」と「かに座」の間をループを描いて運行してゆく。赤緯も20°N以上あり、北半球では、南中高度が高く条件の良い接近となる。

 




◎観測指針概況

毎月の観測指針は、今後の観測報告記事に添付することとして、今後の観測方針の概況を示しておく。

視直径(δ)は、20245月末にはδ=5”を越えてくる。デジタル撮影観測の開始時期となる。火星は「うお座」にあり赤緯は北緯に上がっている。季節(λ)260°Lsに達していて、南半球の「夏至」直前で、傾き(φ)が南向きに大きく、小さくなった南極冠がまだ見えている。

視直径がδ=8”を越えて、眼視観測でも暗色模様が捉えられるようになるのは、夏場の良いシーイングが終わりに近づいている10月中旬で、火星は「ふたご座」まで進み赤緯も20°Nを越えている。季節は345°Lsを過ぎて、北半球の「春分」間近にまで進んでいる。北半球起源の黄雲発生の期間(λ=310°Lsからλ=350°Ls)もまだ含まれている。傾きもこの頃には北向きになっていて、北極雲が大きく見えていることと思われる。ドーズのスリットと呼ばれる、マレ・アキダリウムの一部が北極雲から透けて見える現象もこの時期に観測できる。以下の論攷が参考になる。

 

Forthcoming 2005 Mars (9)  CMO#305

北極域の重要觀測期間(ドーズの1864年の觀測に寄せて)

"Watch the North Polar Region from λ=310°Ls to λ=350°Ls"

    https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2005Coming_9j.htm

 

視直径かδ=10”を越えて、小口径の望遠鏡でも火星の暗色模様が認められるようになるのは、11月中旬まで待たなければならない。季節は北半球の「春分」λ=360°Ls直前である。欠けは最大は過ぎているが、位相角(ι)40°弱と夕方側が大きく欠けている。傾きはφ=15°N程に傾いて、北極域が此方を向いている。火星面経度によっては、北極雲から北極冠が垣間見られる時期が来ている。

 

視直径かδ=12”以上の期間は、最接近を挟んで、12月上旬から2月中旬までの2ヶ月強の期間となる。詳しくは、5 Dec 2024 (λ=011°Lsφ=15°Nι=30°)18 Feb 2025 (λ=046°Lsφ=7°Nι=24°) である。

 

 


 

図のように傾きは大きくないが、期間を通して北向きで、春分過ぎの北半球の観測となる。図には予想される北極冠の雪線以北は経緯度線を消して白くしてある。

位相角も衝(16 Jan 2025)の頃に最小(ι=2.6°)となり、欠けが夕方側から南側を廻って朝方へと移って行く。

 

視直径かδ=10”を下回るのは、20253月上旬となる。季節はλ=054°Lsまで進んでいて、北極冠の縮小が進んでいる。視直径かδ=8”を下回るのは4月上旬で詳細は捉えられなくなる。順行を続けて55日には、プレセペ星団の北を通過する。

視直径かδ=5”を下回るのは、6月下旬のこととなる。火星は「しし座」まで進んでいて、630日にはレグルスの北を通過してゆく、日没後の西空で同様の明るさで並んでいる二星を見て、今接近の観測シーズンは終わりになることと思われる。


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