Okano #237

Letters to the Editor


from Kunihiko OKANO in CMO #237

●・・・・・・・いつも『火星通信』をありがとうございます。No.236も楽しく読ませていただきましたが、記事中のクアッラ氏の発言(Site502とコダックEチップの比較)は、正しくないように思います。CCDの感度と量子効率は、どちらも「感度」と呼ぶ人がいるので、このような混乱の元になります。コダックEチップを、2×2ビニングすると、ピクセル面積が四倍なので、感度は四倍、という言い方をすることもあります。しかし、惑星の場合、2×2ビニングでは合成Fを二倍に伸ばさねばならず、単位面積あたりの明るさは四分の一になり、結局同じ露出時間がかかります。ビニングは露出の観点ではなんの得にもならないのです。これは、ビニングでは量子効率が変わらないからであるとも言いかえることが出来ます。
 Site502は、「感度がコダックEチップの二倍」なのではありません(この点が誤りです)。量子効率が二倍なのです。これは、仮にピクセルが同じ面積になるようにコダックのチップをビニングできたとしても、Site502の感度は、なお、その二倍の感度があることを意味します。焦点距離が自由に設定できる惑星に関しては、量子効率のみが感度を決めるということです。したがって、惑星用CCDはピクセルサイズより、主に量子効率で選ばれるとよろしいかと思います。例えばST-9EとST-7Eは、量子効率は殆ど同じなので、惑星用で9Eを選択するメリットは殆どなにもありません。

PS:スカイセンサー(本来は25pps相当)を移動用として使っているEM200につけてもらったところ、惑星では条件次第では若干振動がでるのを確認したので、徹底的に改造してもらいました。ギア比を交換したのと(83pps相当)、DCモーターの振動を消す新回路を開発してもらった結果、驚くほど滑らかになりました。これで惑星も問題なしで、来年八月のニュージーランドで火星も撮る準備は整ったわけです。誠報社さんはこの改造機をEMスカイセンサーの「NZ仕様」として売るらしいです。ま、うるさい客のおかげでいいものができたという良い例です。
 大気分散補正用の小角プリズムは、2度と4度だけが納品されてきましたが、そんなわけで、スカイセンサーであそんでいて、まだプリズムは試しておりません。1度角の納品を待ってからテストします。

(2十一2000 email)

(註) 以下は西田昭徳(Ns)氏と岡野(Ok)氏のやりとり(7十一2000 email)です。

 Ns> その1.量子効率について
> これは、いわゆる光電効果でCCDにぶつかったフォトンが電子にかわる割合と理解すればいいのでしょうか。

 Ok replies:>> 「フォトンのエネルギーが電子に変わる割合だと思います。なお、開口率というのもありまして、これも混乱を招きます。天文用CCDでは、一応、開口率も含めて量子効率が表示されているようです。たとえば、コダックチップのABGあり、なしの量子効率の差は、実質的にはABG電極の存在による開口率の差だと思います。

 Ns> その2.量子効率と感度の関係
> 量子効率は単位面積当たりの数値で、感度は表面積も加味しなければいけないということでしょうか。
 例えば、
   チップA 量子効率 90%、一素子の大きさ 20μ×20μ
   チップB 量子効率 45%、一素子の大きさ 10μ×10μ
という二種類のチップがあったとします。
 量子効率はチップAが二倍ですが、面積は四倍ですので感度はチップAはチップBの八倍とい>うことになるのでしょうか。

 Ok replies:>> そういうふうに表現されていることが多いのですが、私は惑星として同じ解像度を求めたら、Aの感度はBの二倍というべきだと思うのです。感度の定義の問題ですけど。


岡野 邦彦 (Kunihiko OKANO, Tokyo)