LAI #214

Letters to the Editor


from Wu Yang LAI in CMO #214

●・・・・・さて、平野啓一郎『日蝕』を読みました。なかなか読み応えがありました。見馴れない漢字用法や漢語は、平野流だと割り切って容認し、全文の10パーセントあたりまで読めば、もう馴れて気にならなくなります。『日蝕』という題名から多少の天文学的内容を期待しましたが、これはだめでした。そのかわり、中世の神学や錬金術が主題となっています。もし平野氏の記述が学術的に正確なら、私はこの小説から、よい知識が得られたわけです。
 焚刑の経過で九頁(『文藝春秋』誌上)にわたる饒舌をなし得た手腕はみごとです。そのうちの一頁半は空白ですが、空白へ進入する前の数行と相俟って、すばらしい効果を挙げています。
 ところが焚刑の後、村は平静に帰り、何の変化も起こっていません。それが当然ですが、拍子抜けの感がしました。この小説にたいする私の評価は、「誉めるべき点がたくさん、けなすべき点はわずか」です。

 『日蝕』のなかの漢字漢語よりも、パソコン操作に使われるカタカナ用語や、アルファベットの大文字を並べた用語のほうが、私には苦手で、今もって意味がわからないままほったらかしている語がたくさんあります。意味はわかっているけれども「マウス」というのは「ねずみ」にしたいものです。日本語にトゥという音節がないため、TOOLがツールになっているのも困ったことです。台湾の中国語では、これを「工具」としています。
 ・・・魑魅魍魎がIME98一発で出てきました。旧一高の寮歌『嗚呼玉杯に花うけて』の終わりごろにあるので、有名な単語になったのでしょう。
 森鴎外が翻訳した小説『即興詩人』は、小説としては甘すぎるけれども、訳文が実にいいですよ。文語体の名文で、漢字漢語の使い方もみごとです。私は終戦直後に読み、その本はもう持っていませんが岩波文庫だったように記憶しています。・・・

(13三1999 email)

○・・・・13日のメールをありがとうございます。私のパソコンに現れた受信時刻は11:41ですが、たぶん南さんの送信時刻は日本時間の12:40ごろでしょうね。
 正字のョは化けずに着きました。鴎の正字はIME98にもありますが、電子メールのメッセージ作成画面に出そうとすると?になってしまいます。
 近頃当地の新聞に「運將」という単語が出てきます。どんな意味か南さん、当てられますか? タクシーの運ちゃんのことです。日本へ観光に行った人たちが運ちゃんということばを聞き覚えて、台湾へ輸入したのです。「運將」を北京語音で読むと、ュンチャンとなります。日本で運ちゃんと呼びかけると、ご機嫌がわるくなるだろうと思いますが、台湾で運將と呼べばご満悦? さあ、どうですかな。

 以前私がWindows95を使っていたときは、ハードディスクが傷だらけだったせいか、しょっちゅうハングしていました。現在はWindows98を使い、ハードディスクは新しい傷ひとつないものです。故障を起こすことはあっても、せいぜいCtrl+Alt+Delで回復し、やれやれと胸をなでおろしています。95のときとは格段のちがいです。
 ただ98に乗り換えた当初びっくりしたのは、fax機能が失われたことです。泡をくらってT-ZONEに問い合わせたところ「98のCD-ROMのなかには、95時代のfax機能fileが残っているから、それを引っ張り出して使いなさい」とのこと。よってその方法の書いてある本を買って、苦心研究し、やっとのことでfax機能のインストールに成功しました。私は空白のハードディスクに98を吹きこんだからこんなことになったのであって、もし95からアップグレード吹きこみをした場合は、ハードディスクに95のfax機能がそのまま残っているから、心配はいらないとのことです。

(14三1999 email)

ョ 武 揚 (Wu Yang LAI 臺灣 Taiwan)    laiwy@tpts5.seed.net.tw
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