96/97 Mars Sketch (10)

1996/97 Mars Sketch (10) - from CMO #207


** オリュムプス・モンスと タルシス・モンテスの間の暗帯 **

◆CMO #186 p2023のブラジルのネルソン・ファウサレッラ(NFl)氏のLtE(27Feb1997と1Mar1997)に興味深い記述がある。夕方のオリュムプス・モンスとタルシスの間に蔭の條が見えるというもので、OAA MARS SECTIONのコーナーでも觸れたが、讀者の注意を惹いたであろうか。

NFL 27 Feb ◆NFl氏はこのとき次の様に追跡している:

 26 Feb (083゚Ls) ω=155゚W〜170゚W  (但し、同日 ω=185゚W〜192゚Wでは見ていない)
  27 Feb (084゚Ls) ω=154゚W〜169゚W
  28 Feb (084゚Ls) ω=148゚W   
  01 Mar (085゚Ls) ω=131゚W〜151゚W
四月に入っても
  06 Apr (101゚Ls) ω=133゚W〜141゚W
で検出している。 27MarのNFl氏の例を挙げる(Fig1)。
FALSARELLA's drawing on 27 Feb 1997 (084degreeLs)
at LCM=160degreeW by 260x 20cm spec
showing a dark band preceding Olympus Mons

 ◆この暗帯については、以前#158 p1610などで觸れたことがあるが、1982年には日本側で好く觀測されている。 #201 p2247のFig10 のスケッチはその一例で、097゚Lsであるが、この時期は7 Mar 1982 (095゚Ls)から見えている。δは12.9秒角で、未だ最接近前である。四月に入っても見えていた。
 ◆1997年の場合は、例えば、同じ頁のFig8に出ている様な具合であった(10Feb(076゚Ls))。δ=11.5"。もう一巡り後の、三月には日本からは最接近と重なって、この風景は17Mar(092゚Ls)から25Mar(095゚Ls)まで見えていたが、報告集を拝見すると案外と福井以外はこの角度の觀測は少ないのである。


Hk-065 : 20 Mar 1997 (14:30GMT) ω=161゚W 340×16cm反射
Mn-406 : 20 Mar 1997 (14:00GMT) ω=154゚W 630×20cm屈折

その中で、日岐敏明(Hk)氏の20Mar14:30GMTのスケッチω=161゚Wを拝借する(Hk-065: 340×16cm反射)。比較參考の爲、三十分前の筆者(Mn)のω=154゚Wのスケッチ(Mn-406)も掲載する。中島孝(Nj)氏はこの日、ω=159゚W、ω=169゚Wで觀測している。

◆LtEでNFl氏が觸れていることで、彼が困惑するのは、HSTの像にはこれが出ていないことである。この點については、この暗帯は所謂暗色模様ではなく、地肌そのもので、水蒸氣と無縁である場合に顕れる條であると考える事が出來よう。從って、三色分解で言えば、青色系に顕れる模様である。實際、肉眼では波長は可成り幅廣く捉えられるから、オリュムプス・モンス等の白色が綺麗に捉えられる場合は、却って、この地肌が暗帯の様に映るのであろう。
 ◆こうした例は、#191 p2102で紹介してある様な 30Marに撮られたHST像の中に見られる。青色光では所謂暗色模様と白霧と無關係な褐色の處が區別が附かない。勿論この圖柄に該當場所(オリュムプス・モンスとタルシス・モンテスの間)が冩っているが、偶々朝方で白雲に覆われていて、青色光では白くなっている。これが夕方へ遷れば、白雲が消えるということがNFl觀測などの骨子であるるということである。
 ◆似たことが、デウテロニルスの現れ方にも言える。デウテロニルスは、もっと明確だが、寧ろ暗色模様ほど濃くはなく、白霧に侵されにくい寧ろ地肌色に近い筋なのである。然し、肉眼では暗線のように顕れる。

◆次回1999年の接近は、季節的にオリュムプス・モンスの夕方の様子と共に、この暗帯を觀察する最後の機會である。機會を逃がさぬように注目してほしい。

(南 政 次)