2001 report #08

CMO 2001 Mars Report #08

2001年五月前半(1 May〜15 May)の火星面觀測
 from 1 May 2001 (154゚Ls) to 15 May 2001 (162゚Ls)



東亜天文学会 火星課  『火星通信』 南 政 次 

♂・・・・・・・1May(154゚Ls)には視直徑δは14.3秒角であったが、15May(162゚Ls)にはδ=16.6"となった。もう充分な大きさである。ただ、視赤緯は−25゚近くになっていて高度は可成り低い。中央緯度φは3Mayに1.9゚Sまで行ったが、降りてきて、1.5゚S止まりである。位相角ιは29゚から22゚へ、圓に近くなって來ている。

♂・・・・・・今回、報告を頂戴した觀測者(二十名)と報告數は次の通りである。

     AKUTSU, Tomio 阿久津 富夫 (Ak)  栃木・烏山 Karasuyama, Tochigi, Japan
            2 Sets of CCD Images (5 May 2001)  f/70×32cm spec equipped with a Teleris 2

     BIVER, Nicolas  ニコラ・ビヴェール (NBv)  ヴェルサイユ Versailles, France
            8 Colour Drawings (17, 19, 23 March; 1, 12, April; 12, 13 May 2001)  330,510×26cm speculum                                        

     CAVE, Thomas R トマス・ケーヴ (TCv)  長堤 Long Beach, CA, USA
            2 Drawings (6, 9 May 2001)  280, 430, 380, 550×33cm speculum

     GRAFTON, Edward A エドワード・グラフトン (EGf)  コ克薩斯 Houston, TX, USA
            2 Sets of CCD Images (10, 14 May 2001)  f/60×35cm Celestron SC equipped with an ST6 

     HERNANDEZ, Carlos E カルロス・ヘルナンデス (CHr) 佛羅里達 Miami, FL, USA
            1 Drawing  (12 May 2001)    220×20cm Schmidt-Cassegrain

     HIGA, Yasunobu 比嘉 保信 (Hg)  那覇 Naha, Okinawa, Japan 
           16 Video Images (2, 3, 15 May 2001)  25cm f/6.7 spec equipped with Sony VX-1000 

     HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk)   長野・箕輪 Minowa, Nagano, Japan
            2 Drawings (12 May 2001)  430×22cm speculum

     ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id) 那覇 Naha, Okinawa, Japan
       4 Drawings (2, 15 May 2001)   400, 530×31cm speculum

     KUMAMORI, Teruaki 熊森 照明 (Km)  堺 Sakai, Osaka, Japan 
            1 CCD Colour Image (13 May 2001)  20cm f/12 Dall Kirkham, Mintoron MTV-6368 

     MELILLO, Frank J  フランク・メリッロ (FMl)  紐約 Holtsville, NY, USA
            2 Sets of CCD Images (2, 12 May 2001) 20cm Celestron SCT with a Starlight Xpress

     MINAMI, Masatsugu 南 政 次 (Mn)  福井 Fukui, Japan
           45 Drawings (4, 5, 10 〜13 May 2001)  400, 480×20cm refractor*

     MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo)  廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan
           23 Sets of CCD Images (3, 10, 11, 12 May 2001)  f/50×25cm spec with an ST-5C

     MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  藤澤 Fujisawa, Kanagawa, Japan
           15 Drawings (6, 11, 12, 13 May 2001)    400, 320×20cm speculum

     NAKAJIMA, Takashi 中 島  孝 (Nj)  福井 Fukui, Japan
            8 Drawings (4, 12 May 2001)  400×20cm refractor*

     NARITA, Hiroshi 成 田  廣 (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan
           10 Drawings  (1, 6, 7, 12, 13, 14 May 2001)  400×20cm refractor

     PARKER, Donald C ドナルド・パーカー (DPk)  佛羅里達 Miami, FL, USA
            3 Sets of CCD Images (13 May 2001)  f/49×41cm Meade SCT with a Lynxx PC 

     PEACH, Damian A デミアン・ピーチ (DPc) ノーフォーク King's Lynn, Norfolk, UK
            3 Colour Drawings (8, 9, 11 May 2001)  405×31cm Meade SCT

     TEICHERT, Gérard ジェラール・タイシェルト (GTc) フランス Hattstatt, France
            3 Drawings  (11, 12, 13 May 2001)  330, 310×28cm Schmidt-Cassegrain

     TSUNEMACHI, Hitomi 常間地 瞳 (Ts)  横濱 Yokohama, Kanagawa, Japan
           24 Drawings (3*, 4*, 5*, 12 May 2001) 360×12.5cm Fluorite refractor/400×20cm refractor*

     WASIUTA, Myron E  マイロン・ワシュータ (MWs)   維吉尼亞 VA, USA
           13 Drawings (1〜4, 11 May 2001)   360×32cm speculum

 
                                                                                        *福井市自然史博物館天文臺 
1゚ リビュア雲の衰退とシュルティス・マイヨルの夕方:
 今回日本からは10May(159゚Ls)邊りからリビュアが見え始めたが、リビュアの夕雲は前回145゚Ls頃の顕著さに比べ、格段に弱くなっていた。但し、ι が35゚から25゚に落ちていることも考慮しなければならない。
 Mk氏は12May(160゚Ls)ω=351゚Wにおいて、夕端に來たシュルティス・マイヨルは北端を殘して、南部をリビュア雲が幽かに覆っている様子を検出している。これは13May(161゚Ls)のω=349゚Wでは、Mk氏はこの靄が端のイヤピュギア・ウィリディスを通ってヘッラスから流れ出ているのではないかと見ている。Mk氏は既に12May(160゚Ls)ω=319゚Wでイヤピュギア・ウィリディスも含めてシュルティス・マイヨルの南側が濃度を落としていることを正しく指摘している。
 筆者(Mn)の觀測も10May(159゚Ls)以降似た結果であるが、ω=330゚W邊りから、シュルティス・マイヨルの東岸がボケ始めることもこれと關係する。一般にシュルティス・マイヨルは東端では傾斜の爲に細くなるのであるが、今回は一見太くなる様に見える。Mnの12May(160゚Ls)でのω=341゚W、13May(161゚Ls)でのω=329゚Wの觀測がその典型である。靄は決して白くはないが局所的に可成りの厚みで、屈折を起こしているのであろう。

2゚ ヘッラスとシュルティス・マイヨルの南:
 既にヘッラス北部は夕方でも白味はなく、更にヘッラスの北のイヤピュギア・ウィリディス邊りも淡化して、1969年などに見られたヘッラスの「ずり下がり」現象が既に見られるが、夕端ではヘッラス北部、イヤピュギア・ウィリディス、シュルティス・マイヨル東南部、更にはリビュアさへ全體が同じ灰色色調で鈍くなる。上に引用した12May(161゚Ls)ω=329゚Wなどが典型である。1969年などには灰色の霧などと言われたが、これは矢張り白霧であろう。可成り厚みの所爲と位相角が減じたことで輝かず、ヘッラスの北の淡化に關聨して、モノトーンになるのだと思われる(何れ2001Noteで調べる)。
 13May(161゚Ls)ω=334゚WのKm氏の像は好い角度である。リビュア雲の白味を出している。ヘッラスはoff-whiteである。Hg氏の最後の像:15May(162゚Ls)ω=327゚Wの夕端も似ていて、ヘッラスは白色系ではなく、未だ、暗色模様やリビュア雲が分離して見える。

3゚ 南極雲と南極冠:
 これに關してはEGf(エドワード・グラフトン)氏とDPk氏の畫像が示唆的である。 10May(159゚Ls)にはEGf氏がω=247゚W、 13May(161゚Ls)にはDPk氏がω=224゚W、230゚W、ω=235゚W、 14May(161゚Ls)ではEGf氏がω=226゚Wで撮っている。


 DPk氏の畫像では、南極雲はアウソニア・アウストラリスを覆っていて、50゚Sを越えていることは確かである。R像は周邊部の雲を透かせて明るい南部アウソニアを冩し出している。
 ここまで南極冠が來ているかどうかは問題だが、EGf氏の畫像はIR光を利用したLRGB像で、ヘーズを可成り透過するはずで、14May(161゚Ls)の畫像からは、南極冠はアウソニアには達して居らず、60゚S邊りで留まっていると判断される。この高解像のL像にも未だヘーズが周邊部に出ている。炭酸ガスの氷結は極大を過ぎている時期であるが、これから未だH2Oの氷結が周邊部にあるかも知れないので、注意が必要である。

4゚ マレ・セルペンティスとノアキス暗帶:
 ヤオニス・フレトゥムとマレ・セルペンティスは分離し(間にヤオニス・レギオが入る)、マレ・セルペンティスからノアキスの大きな太い弧が伸びる。これはパンドラエ・フレトゥムではなく、1984年から顕著になった暗帶である。この暗帶の東部は暗斑からなっている(12May(160゚Ls)ω=341゚W、351゚W)が、これも1984年の暗帶を彷彿させる(1984年には130゚Ls台では見えなかったが、166゚Ls (19June1984)以降見えてきた。δ=15.4")。Mo氏の11May(160゚Ls)ω=000゚Wには表現されている。尚、マレ・セルペンティスとシヌス・サバエウスは大まかには途切れているので注意。

5゚ ヘッラス以西の南極雲:
 161゚Ls(13May)邊りでは未だヘッラス南部は夕方ではヘーズが出るが、これはω=310゚W邊りでは南極雲との境の蔭で區別される。總じて、この方面からの南極雲は薄い。以後朝方に明部が現れる。これはアルギュレに位置すると考えられ、その顕著な様子は3May(156゚Ls)邊りからHg氏の3Mayω=056゚W〜075゚Wの像やTs氏(20cm屈折)の4May、5May(156゚Ls)のω=052゚Wでの觀察、Ak氏の5Mayω=051゚WのInt像など、日本で見られているが、安定している(Ak氏の5May(156゚Ls)ω=077゚WのRGB像は良像であるが、アルギュレは沈んでいる)。Mo氏の11May(160゚Ls)ω=019゚W、030゚Wにはアルギュレの突出が見られる。Mnの11May(160゚Ls)ω=005゚W〜046゚Wでも明白だが、ω=046゚Wではその後續の南極雲は極端に弱い。12May(160゚Ls)ω=010゚Wではコンパクトな局在が明確で南極雲から飛び出す様な格好であった。その尾は南端へ向かう。Hk氏も12May(160゚Ls)ω=020゚W邊りでアルギュレの出っ張りを見ているようである。遡って4May(156゚Ls)には更にその西が見えたわけだが、ω=091゚W等では隠れるアルギュレ雲とマレ・シレヌムの南の朝雲の間が明るさを落とし、南端はむしろ翳っている様に見えた。
 (EGf氏が既に30April(154゚Ls)の南極雲+アルギュレを冩し出している:http://www.ghgcorp.com/egrafton (http://www.ghg.net/egrafton) 參照。又1969年のMnの同様なスケッチが『天文年鑑』に出ているが、これは169゚Lsであるから、可成り長く安定すると思われる。) 
 尚、13May(161゚Ls)ω=359゚W〜008゚Wでは、アルギュレに先行して數個の明斑部が洗濯板のように並んでいるのが見えた。南極雲内は單純でなくなって來ている。この邊りの高解像のInt像が必要だが、Ak氏は天候とカメラ故障で成功しなかった(5Mayω=077゚WのRには南極冠は出ていない)。Mo氏はEGf氏の方法に刺激されて、LRGB、RGB二刀流に切り替えた。今後を期待したい。微細構造より、IRに依る南極雲内の透過を期待する譯である。(EGf氏の方法に就いては、LtE參照、また一般的な方法に就いては次のWebを見られたい:http://www.ghgcorp.com/akelly/artdraf7.htm

6゚ その他:
 朝方での白霧の活動は未だ盛んで、クリュセなどは朝霧に包まれる。160゚Ls。テムペなども朝方非常に白い。クリュセ北部には6May(157゚Ls)にMk氏が可成り内部(ω=036゚W、046゚W)でやや白い明部を見ており、これが夕霧と繋がるようである。筆者は11May(160゚Ls)ω=024゚W、036゚Wで矢張りニリアクス・ラクスに接して明部を見ている。

 夕霧はリビュア雲と同じく、然程強くならないが、クサンテはTs氏などが5May(156゚Ls)に注意している(ω=081゚Wなど)他、Mo氏の3May(155゚Ls)には次第に夕端で強くなる様子が出ている(〜ω=106゚W)。下が明部(クサンテ)か暗部(シュルティス・マイヨル)で違って見えるわけであろう。
 エリュシウムはDPk氏の像(161゚Ls)では、BよりもRで明るい。EGf氏のB像ではエリュシウム・モンスの邊りは小さいながら複雜な形をしている(地方時午後1時半)。
 視直徑の増大で、微細構造も見え始めている。グレースの泉は瞥見出來るし、午前のタルシスの暗斑部などもところどころ(例えばポエニキス・ラクスとここからアルシアを囲む暗帶など)見えている。マレ・シレヌムは1986年型であるが、矢張り1986年と同じくアオニウス・シヌスが西に延びた形になっている。ダエダリアも翳っている。   
♂・・・・・・・・南極冠形成時、更には溶解が始まる頃には、南半球高緯度の暗色模様は南半球の夏の様子とは違う事が知られている。これからデプレッショニス・ヘッレスポンティカエが現れたときのノアキス南部には注目されたい。ヤオニス・レギオ近邊、シュルティス・マイヨルの南なども觀測對象である。更に、マレ・シレヌムの東や南も春と夏では違っているので注目されたい。このことは南極冠外周でH2Oが可成りの働きをすることと關係があるであろう。 尚、180゚Ls迄は南極はまだ陽を見ていないことに注意する。南極冠なども缺けている。
消息:
♂・・・・・・・・Mk氏の今回からの400×はAk氏から拝借したIenaの4-Oに依るもので、好い像を結ぶそうである。XP3.8はどうも好くないようである。福井の400×はIw氏のIenaの6-Oを十年來お借りした儘使っている。アイピースも年々進化するかも知れぬが、Nj氏ともども滿足している。480×はNikonのOr-5を使うがこれはどういう譯か、二本ともゴミが附着する。今年はO-4を使うに到らない。Ts氏はIw氏から拝借した12.5cmフローライトで觀測している(K點も)。觀測場所は實家の萬騎ケ原(139.3゚E、35.2゚N)で、高臺の空の空いているところらしい。五月の聯休には福井(36.1゚N)で講習がてら、四十分聯續觀測を經驗された。   
♂・・・・・・次回は16 May 2001 (162゚Ls)から31 May 2001 (170゚Ls)までの觀測のレヴューとなります。
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