Seventh Report: The CMO/OAA Observations made during the one-month period from
16 April 2003 at λ=169゚Ls to 15 May 2003 at λ=185゚Ls.

Based on the OAA Mars Section article published in CMO #272 (25 May 2003)

Masatsugu MINAMI, Director of the OAA Mars Section

♂・・・・・・火星は北半球からは高くなって來ており、五月中旬視赤緯は−18.5゚まで回復した。今回は

16 April at λ=169゚Ls から 15 May 2003 at λ=185゚Ls.

迄レヴューするが、更に視直徑 δ は8.4"から急速に伸び出し、10.6"まで來たので随分觀測が楽になった。缺けは期間中最高の43.1゚まで來ているが、見窄らしくはない。中央緯度 φ は14゚Sから19゚Sへと移り、愈々南半球が久しぶりに此方を向いてきた。季節は2001年に大黄雲が發生した時期に入った。

♂・・・・・・觀測報告者は既に廿名を越え、觀測も多くなった。先の木星で活躍した香港のNG氏も19Aprから參加しているが、こちらでは熊森(Km)氏が2Mayから觀測を開始した。ムーア(DMr)氏も24AprからToUcamで開始した(前回LtE)。皆さんToUcamでは木星と違って火星ではシビアなところがあるので、この時期では未だ戸惑っている。今回はヨーロッパから數人参加しているので心強い。前回登場のペリエ(CPl)氏もわれわれからは新人であるが、2001年にはCMOのWebをチェックしていたようである。 尚、ビーシュ(JBs)はスケッチをemailで、23Aprから聯續して送って來ている。


 BATES, Donald R ドナルド・ベーツ (DBt)  コ克薩斯 Houston, TX, USA                 
            1 CCD Image (26 April 2003)  @f/21  25cm speculum with a Philips ToUcam Pro

 BEISH, Jeffrey D ジェフ・ビーシュ(JBs)  佛羅里達 Lake Placid, FL, USA             
           10 Drawings (23 April; 4, 5, 6, 10, 12, 13, 15 May 2003)                     
                                        440, 570, 650, 870x  41cm F/6.9 speculum        

 BIVER, Nicolas  ニコラ・ビヴェール (NBv)      Versailles, France                 
            4 Colour Drawings (16 April; 3, 12, 15 May 2003)    410x  26cm speculum
   
 HERNANDEZ, Carlos E カルロス・ヘルナンデス (CHr)  佛羅里達 Miami, FL, USA          
            1 Drawing (8 May 2003)         250, 370x  23cm Maksutov-Cassegrain
           
 HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk)     長野・上伊那 Minowa, Nagano, Japan                 
            6 Drawings (28 April; 3, 4 May 2003)   430, 390x 20cm speculum   
         
 ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id) 那覇 Naha, Okinawa, Japan                       
           7 Drawings (2, 10, 11 May 2003)      290, 400, 530x  31cm speculum 
       
 IWASAKI, Tohru 岩 崎  徹  (Iw)  小倉北 Kitakyushu, Fukuoka, Japan                 
            8 Drawings (2, 3 May 2003)                                                  
                            400, 480x  20cm ED refractor/ 260x  25cm Meade at Fukui 

 KUMAMORI, Teruaki 熊森 照明 (Km)  堺 Sakai, Osaka, Japan
           4 CCD Images (2, 5 May 2003)  @f/28  20cm Dall-Kirkham with a Philips ToUcam Pro

 LAZZAROTTI, Paolo R  パオロ・ラッザロッティ(PLz)トスカーナToscana, Italia            
           2 CCD Red Images (6, 12 May 2003) 18cm Maksutov-Cassegrain with a KC381     

 MINAMI, Masatsugu  南 政 次 (Mn)  福井・三國 Mikuni, Fukui, Japan 
           55 Drawings (16, 17, 18, 21, 26, 27, 28, 30 April; 1, 2, 3+ , 9, 13 May 2003)
                            400, 480, 600x  20cm ED refractor / +also 260x  25cm Meade 

 MOORE, David M  デイヴィッド・ムーア  (DMr) 亞利桑那 Phœnix, AZ, USA
            7 Sets of CCD Images (24, 25, 27 April; 1, 12 May 2003)                     
                                 @f/35  25cm speculum with a Philips ToUcam Pro        

 MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo)  廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan              
           12 Sets of CCD Images (12, 21, 26, 30 April; 1 May 2003)                     
                                       @f/50  25cm speculum equipped with an ST-5C  
    
 MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)   横濱 Yokohama, Kanagawa, Japan 
            8 Drawings (16, 17, 18 April; 3+  May 2003)    320, 400x 20cm speculum /  
                               +400, 480x  20cm ED refractor/ 260x  25cm Meade at Fukui 

 NAKAJIMA, Takashi 中 島  孝 (Nj)  福井 Fukui, Fukui, Japan                          
            9 Drawings (2, 9 May 2003)      400, 480x  20cm ED Goto refractor           

 NARITA, Hiroshi 成 田  廣 (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan 
            8 Drawings (27, 28 April; 1, 3, 9, 13 May 2003)   400x  20cm refractor     

 NG, Eric 呉 偉 堅 (ENg)  香港 Hong Kong
            2 CCD Images (19, 27 April 2003)  @f/35  25cm Royce spec with a Philips ToUcam Pro

 PARKER, Donald C ドナルド・パーカー (DPk)  佛羅里達 Miami, FL, USA 
           21 Sets of CCD Images (16, 18, 21, 22, 24, 29 April; 2, 4, 10, 15 May 2003)  
                                @f/60  41cm F/6 Newtonian equipped with an ST-9XE       

 PAU, K C 鮑  國 全 (KPa)  香港 Hong Kong 
            2 CCD Images (23, 25 April 2003)  21cm spec (CN212) with a ToUcam Pro       

 PELLIER, Christophe  クリストフ・ペリエ (CPl)  法國 Bruz, Ille-et-Vilaine, France    
           5 CCD Images (16, 17 April; 3, 10, 13 May 2003) 18cm spec with a Philips ToUcam Pro

 TAN, Wei-Leong  陳  韋 龍 (WTn)  新加坡 Singapore             
           2 CCD Images (5, 6 May 2003)  @f/27  25cm Meulon with a Philips ToUcam Pro   

 TSUNEMACHI, Hitomi  常間地ひとみ (Ts)  横濱 Yokohama, Kanagawa, Japan
            5 Drawings (3 May 2003) 400, 480x  20cm ED refractor/ 260x 25cm Meade at Fukui 

 VALIMBERTI, Maurice P  モーリス・ヴァリムベルティ (MVl)   澳大利亞 Melbourne, Australia      
            7 CCD Images (17, 18, 22, 29 April; 5, 6, 15 May 2003)                      
                                         @f/34  35cm SCT with a Philips ToUcam Pro        

                                         福井市自然史博物館屋上天文臺 Fukui City Observatory
 
♂・・・・・・ 肆月16日:觀測陣が整ってきた16Apr(169゚Ls)にはどの様にworld-wideな觀測が行われたか、列挙してみよう。未だ、觀測は何處も早朝だけであるから、繋がりは悪いが、先ず法國のビヴェール(NBv)氏ω=217゚W(4:40GMT)、ペリエ(CPl)氏ω=221゚W、美國に渡ってフロリダの唐那・派克(DPk)氏ω=300゚W(10:20GMT)、304゚W、日本へ來てMo氏ω=073゚W(19:28)〜089゚Wで觀測している(筆者 (Mn)は眼視でω=051゚W〜090゚W(20:40GMT)まで觀測したが、これは範囲としては精一杯ギリギリである。通常はMo氏が標準的であろう)。矢張り、ヨーロッパへの繋がりが悪いが、香港、新加坡に少しの延長が期待出來る。尚、DPk氏から日本までに間にはアリゾナのムーアDMr氏(フロリダとは二時間西へ離れている)、澳大利亞のヴァリムベルティMVlが入る(17Aprilには18:21GMTで觀測)。

 南極冠:今年の接近はφの動きが1986年に似ていて、前回報告のように南極冠の出現がλ=160゚Ls邊りで程良く捉えられたが、未だ南極雲の遺りが出るのか、21Apr(λ=172゚Ls)のMo氏のω=024゚Wの像ではアルギュレに向かって浮遊物が降りているような感じである。λ=170゚Ls臺に入ってもう二つの特徴、ダークフリンジの顕在化、と南端が翳るという現象が現れて來ている。筆者の眼視では四月の終わり(〜λ=175゚Ls)からダークフリンジは細く見えている。五月の觀測會(3May(179゚Ls))でもTs氏などはデプレッシオネス・ヘッレスポンティカエに先立ってヘッラスの南で見ているようである。一方南端の蔭は筆者の眼には17Apr(λ=170゚Ls)邊りからときどきみられ、四月終わりから五月初め頃から度々觀測される様になった。翳りがλ=180゚Lsより前から始まっていることに注意する。DPk氏の22Apr(λ=173゚Ls)ω=242゚Wの像には内部がもっと繊細に翳っている。Km氏の2May(λ=178゚Ls)ω=261゚W、278゚Wにも凹みとして出ている。9May(λ=182゚Ls)ω=225゚W では更に明確に見えた。ビーシュ(JBs)氏は10May(λ=182゚Ls)ω=054゚W〜059゚Wで南極冠の中に模様を見ている他、12May〜15Mayでは南端の蔭を描いている。Id氏も10May(λ=183゚Ls)ω=216゚W、228゚W以降この蔭を描いている。

 ヘッラスDPk氏の22Apr(λ=173゚Ls) ω=230゚W〜242゚W24Apr(λ=174゚Ls)ω=212゚W、221゚Wでは朝方のヘッラス上に朝雲か霜が出ている。 Mo氏の1May(λ=177゚Ls) ω=292゚W〜300゚Wでヘッラスの西部が明るく見えている。これは注目である。2001年にはλ=176゚Lsで見えており、大黄雲の發生した185゚Lsでも顕著であったが、外に出ることはなく大黄雲とは無關係であった。 Km氏の2May(λ=178゚Ls) ω=261゚W、278゚W5May(180゚W) ω=245゚W〜254゚Wでも見えている。Id氏は2Mayの觀察などで、ヘッラスが埃っぽいことを記述しているが、西端は福井の觀測會でも然程の話題になるほどの肉眼的には明るさは無かった。ヴァリムベルティ(MVl)氏の6May(λ=181゚Ls) ω=244゚Wでも西端に白い明るさがあるが、ToUcamの色は信用がならない。陳韋龍(WTn)の5May(λ=180゚Ls) ω=289゚W 及び6May(λ=181゚Ls) ω=277゚Wの強調像では明るく出ている。

 ヘッレスポントゥス:DPk氏の16Apr(λ=169゚Ls) ω=300゚W、304゚Wは未だδ =8.4"ながら優れた像で、特にヤオニス・フレトゥムのラインとヘッレスポントゥスが分離している。前者はデプレッシオネス・ヘッレッスポンチカエに繋がっている。ヘッレスポントゥスは寧ろノアキスに曲がっているから、傳えられるヘッレスポントゥスとは違うかも知れない。この時期のこういう分離像は珍しい。

 マレ・ハドリアクム:DPk氏の22Apr(λ=173゚Ls) ω=242゚Wでは依然マレ・ハドリアクムは出ていない。MVl氏の5May(λ=180゚Ls) ω=234゚W6May(λ=181゚Ls) ω=244゚Wでも然りである。肉眼でも異様である。2May、3May、4MayにはIw氏やTs氏、Mk氏、Hk氏などが戸惑っているが、Ts氏の3May ω=244゚W、264゚W邊りが標準的であろう。

 朝のシュルティス・マイヨル:シュルティス・マイヨルはω=218゚Wぐらいから火星の西端で見えるようになるが、DPk氏のB光では22Apr(λ=173゚Ls) ω=230゚W近くでもガスの中で未だ見えない。ω=242゚Wで朧氣に見えるかと言ったところで、正常である。然し、この時期のToUcamはまだ覺束かなくて、ムーア(DMr)氏の25Apr(λ=174゚Ls) ω=237゚WのBでもくっきり見えるのは拙い。MVl氏の5May(λ=180゚Ls) ω=234゚WのBでも見える。ShottのWG295とKG3を使っている。前者はUV-30程度、後者はIRをカットするRである。大事なところでは、正確なB像が必要。福井から9May(λ=182゚Ls)にω=225゚Wまで觀測したが、矢張り未だ朝霧が見える。Id氏は10May(λ=183゚Ls) ω=228゚Wでシュルティス・マイヨルの出現を肉眼で確認している(日の出後)。

 エリダニア:眼視でもエリダニアがマレ・キムメリウム領域を南極冠の縁から綺麗に分離して見えている(13May(λ=184゚Ls)など)。

 エリュシウム:DPk氏の24 April (λ=174゚Ls) ω=212゚W、221゚Wの像にはエリュシウムが北極雲と共に白く出ている。然し、春分を越えId氏は10May(λ=183゚Ls) ω=216゚W、228゚Wでエリュシウムには明るさがないと觀測している。9Mayの福井でも同じい。

 夕方のタルシス邊り:DPk氏の2May(λ=178゚Ls)のω=133゚W邊りのB光では夕方のタルシス山系に沿ってロール雲が出ている。この頃、オリュムプス・モンスは南中で雲はなくただ明るく見えている。4May(λ=179゚Ls)のω=116゚W、125゚WのB光ではタルシスは更に中に入って、山岳雲は大きなW雲を成しているようで見事である。Rの方ではポエニキス・ラクスの暗點、アルシア・モンスが矢張り暗點で且つ雲を被っているようである。W雲の頂点の一つはアルシア・モンス、二つ目はシュリア・プラヌム。三つ目はティトニウス・ラクスにあるようである。ω=116゚Wでのアルシアの地方時は午後2時半程である(ι=43゚)。15May(λ=186゚Ls)のω=137゚WのMVl氏の像でもアルシア雲は綺麗に出ている。

 ソリス・ラクス邊り10May(λ=183゚Ls) ω=049゚W、060゚W、066゚Wも優れた像で、從來の(1986年以來顕在化した)ソリス・ラクスの西半分が淡化し、ソリス・ラクス全體が1926年型になって見える(このことはMo氏の16Apr(λ=169゚Ls) ω=089゚Wの像やCPl氏の3May(λ=178゚Ls) ω=053゚Wで感じられる)。バテュスが濃く、パーシスが太く顕著である。4Mayの畫像と合わせるとマレ・シレヌムの東端の尻尾からダエダリアに掛けてアラクセスあたりにもう一つ陰翳が出ている。1973年型より弱い。これらはもっと早く、呉衛堅(ENg)氏の19Apr(λ=171゚Ls)ω=079゚Wなどでも窺う事が出來る。

 マレ・エリュトゥラエウム邊り:矢張りDPk氏の15May(λ=185゚Ls) ω=010゚W、014゚W、018゚W が優れている。マレ・エリュトゥラエウムの暗部とアウロラエ・シヌスとマルガリティフェル・シヌスのレベルの暗部との間が非常に空いていて、マレ・エリュトゥラエウムの東部は淡化してる。これは砂塵の降下によると思われる。アルギュレも見える。アルギュレはラッザロッティ(PLz)氏の6May(λ=180゚Ls)ω=009゚WのR像に出ている。マレ・エリュトゥラエウム東部の淡化は、鮑國全(KPa)氏の25Apr(λ=174゚Ls)ω=014゚WENg氏の27Apr(λ=175゚Ls)ω=359゚Wでも窺える。この両者ではアラムが可成り明るい。アラムやオピルは地肌なので、白く冩るのは困る。

 北極雲: 北極域は最早視界から出ているので、難しいところであるが、四月半ばからときどき吹き出しが見えている。夕方にコアが17Apr(λ=170゚Ls) ω=071゚W、081゚Wなどに見える。クリュセも夕方に明るい。ccdでは難しいが、DPk氏の22Apr(λ=173゚Ls)ぐらいからBで明白になる。五月の初めの福井の觀測會では一様に北極雲を觀測している。ヘルナンデス(CHr)氏は8May(λ=181゚Ls) ω=056゚Wで明るさを1としている。日本側からも9May(λ=182゚Ls)でも濃い。JBs氏も13May(λ=184゚Ls)ω=011゚W〜015゚Wで北極雲をハッキリ描いている。DPk氏の15May(λ=185゚Ls)ω=010゚Wでも可成り濃い。φ=19゚S。
♂・・・・・・ 以上、觀測は唐那・派克氏のものが抜きん出ているし、ツボを押さえているが、右往左往のToUcamも最近は向上してきている。ただ、未だ餘程用心しなければならない。眼視觀測の方も未だ難しい段階で、上で餘り引用していないが、觀測を續けていれば視直徑が増すに聯れて好くなるはずで、いまの觀測を端折ってはいけない。五月初めの福井での朝の觀測會ではシーイングは中程度であったが、δ =9.7"ながらシュルティス・マイヨル中心で好く見えると評判であった。
 Ts氏一句「明け急ぐ 足羽の水面 白みたり」。

♂・・・・・・ 次回は16 May から15 June 2003 (λ=204゚Ls、δ=14.3")迄をレヴユーします。ccd像などは處理後jpgファイルでInternet用に直ぐMnにemailでお送り下さい。


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