Ten Years Ago (195)

 

---- CMO #249 (10 August 2001) pp3091~3106  ----

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/249/cmo249.html

 


13回目となるレポートは2001年七月後半の観測が取りあげられている。火星は「へびつかい座」を進み赤緯はまだ南下していた。この期間に季節λ196°Lsから205°Lsに進み、視直径δ19.1"から17.2"へ落ちた。中央緯度はφ7°N台を上下している。位相角ιは増して35°とやや欠けが目立ってきた。31 Julyで黄雲発生から38日目となった。1956年の黄雲は発生20日ほどで透けてきたが、今回はまだ火星面を覆っている。

 寄せられた報告は、国内13299観測、国外1250観測であった。シンガポールのタン氏(WTn)17セットと多くの観測を送ってきている。

 

 黄雲はこの期間も両極域を除いて火星面を濃く覆っており、ヨーロッパに廻ったマレ・キムメリウムの西部の濃化部分は、低空とシーイングの悪さのためか、14 July~19 Julyなどでまだマレ・キムメリウム~マレ・シレヌムが見えていると誤解されていて、暗色模様が見えているときには、悪シーイングでは黄雲が検出できない証左だとしている。ソリス・ラクス付近の明るい黄雲の平行する二本の筋は我が国から見えるようになり、2021 Julyの沖縄での合同観測会でも捉えられている。ソリス・ラクス地域は7月末にはアメリカに廻ってこの明るい筋は新しい黄雲の動きとされているが、基本的には変わっていないとされた。

 前号では紙数が足りず取りあげられなかったが、北極雲の様子が詳しく取りあげられている。七月前半からアスクラエウス・モンスの北で北極雲の縁が飛び出すなど活動的だったのだが (13 July [20 days]~15 July [22 days]、黄雲発生から20~22日目)16 July [23 days]には、マレ・アキダリウムに続く北極雲の縁は特に明るかった。次いで17 July [24 days]には北極雲の朝方の縁に特別に輝く白斑のような存在があり、吹き出しのようになって北極雲の暗帯は切れていた。ω=074°Wあたりが一番顕著でω=094°Wに南中した頃には輝度は落ちていた。南氏(Mn)は眼視で、比嘉氏(Hg)はモニターでも確認出来て青色光で顕著だったという。同日にはタン氏(WTn)の連続画像があるが青色光の処理が弱くこの白斑を見ることができない。19 July [26 days]にも縁の活動は激しかった。

 沖縄の懇談会での合同観測会となった20 July [27 days]では北極雲が二つ玉であることが早くから明白で、常間地さん(Ts)・日岐氏(Hk)が追跡している。また、マレ・アキダリウムの西には明部の飛び出しが確認されている。21 July [28 days]も合同観測日であったが、北極雲の強い動きは見られなくなっていた。この日にはデウテロニルスと北極雲の暗帯の間の明るさが観察されている(Mn, Mk)22 July [29 days]にはマレ・アキダリウムの東の黄塵の流れが複雑で暗部が見え、マレ・アキダリウムがもう一つあるように見える不思議な光景であった(Mn, Ts)。広島に戻った森田氏(Mo)も撮影に成功している。しかし23 July [30 days]には元に戻り、デウテロニルスが捉えられている。

 月末にかけても北極雲の活動は活発で、アメリカでもアスクラエウス・モンスの北で、北極雲の張り出しが見られている(31 July [38 days])

 この時期の北極雲の活動は、後の2001 Mars CMO Noteに纏められ、「黄雲発生中の北極雲 その1・その2 "The North Polar Hood during the Dust Clouded Period. I II" として以下のURLから参照できる。

2001 Mars CMO Note 06 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn1/260Note6j.htm  (和文)

2001 Mars CMO Note 08 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/262Note8j/index.htm  (和文)

 

 北極雲自体はそれほど厚いものではなく、マレ・アキダリウムの北側は透けて濃く見えていることもあった。南側は黄雲で霞んでいるのに、北極雲の下のマレ・アキダリウムはむしろ正常で、黄雲が北極雲を避けているように見えるとしている。他にも北極雲周りの暗色模様は濃く現れる傾向があった。

 

 その他、黄雲覆われて山頂だけ暗点で見えている、タルシス三山とオリュムプス・モンスは引き続き捉えられているが、アスクラエウス・モンスが比較的弱くなっているように観測されている。

 ノアキス地方にかかる疑似シヌス・サバエウスの暗帯も健在で、淡く認められるシヌス・サバエウスより濃く見えていた。その南には、デプレッシオネス・ヘッレスポンティカエが青黒く見えている。

 南極冠は南縁に薄く見えていて、例年よりも早く縮小している様に観測されている。南極域の朝方には濃い朝雲が期間中常に見られていた。ダークフリンジの見えることもあり南極冠と間違われるようだった。

 

 LtEには、外国からはNélson FALSARELLAファウサセッラ (Brasil), Dave MOORE (AZ, the USA), Maurice VALIMBERTI (Australia), Ed GRAFTON (TX, the USA), Brian COLVILLE (Canada), TAN Wei-Leong 韋龍(Singapore), Maurizio Di SCIULLO (FL, the USA), John ROGERS (the UK), Nicolas BIVER (the Netherlands), Don PARKER (FL, the USA), Alan HEATH (the UK), Thomas CAVE (CA, the USA)の諸氏のものが、国内からは、森田行雄(広島)、浅田正(福岡)、熊森照明(大阪) 湧川哲雄(沖縄)、阿久津富夫(栃木)のお便りが紹介されている。

 

 FORTHCOMING 2001 MARS (12) は、西田 昭徳氏の「2001年の火星観測暦表(その5) "Ephemeris for the 2001Mars. V" A NISHITA で、20019月から12月末までの火星物理表が三ページにわたり掲載された。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/coming2001/0112/12j.html

 コラム記事「アンタレス研究所訪問」の八回目は、南氏の筆となり、「CMO-Okinawaは親切な魔法使い(安謝にて:その2)」と題されて、七月上旬から沖縄入りした南氏の観測三昧の生活風景と、協力している沖縄の同人の様子が述べられている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn1/Ant005_8.htm

 

                                     村上 昌己 (Mk)  

 


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