CMO 2001 Mars Report #07

2001年四月後半(16 Apr30 Apr) の火星面觀測

16 Apr (146°Ls) 30 Apr 2001 (154°Ls)

 


東亜天文学会 火星課 『火星通信』 南 政


・・・・・・四月の下旬に火星の視直徑は小接近の最大視直徑を越えた。低空での視相の悪さは改善されないが、それでも可成りの暗色模様が同定されるようになった。然し、模様の詳細は觀測の基盤であって、實はその上に觀測が成り立つということに注意する。火星觀測とは火星の季節の觀測であって、近代的な觀測では違った火星面の關聨を組み立てるものでなければならない。卑近には180°Lsまでの氣象は恰好の觀測對象である。何度も言うように單發的な暗色模様の詳細な描冩など意味を成さない。緯度經度と同じく暗色模様は網に過ぎない。網に何を載せるかである。季節的な聨關を網に引っ掛けなければならない。ccdか眼視かというような子供じみた議論があるが、組み立ての無いようなものは眼視であろうが、ccdであろうが、無意味である。
これまでのCMO-Reportは觀測開始を促すためのプロローグであったが、愈々視直徑も15秒角に至って、觀測も更に佳境に入って來るから、今回から本來の形で進めてゆきたいと思う。月二回のレヴユーとし、箇々に觀測に觸れるよりも、特に180°Lsまでは雲など氣象現象に密着する。

・・・・・・16Apr(146°Ls)には視直徑δ12.1"であったが、成長は急速で30Apr(154°Ls)にはδ14.1"に延びた。この間、中央緯度φ1°Sから2°Sで、殆ど南北兩半球が對等に見える。位相角は34°から30°へおちた。この角度は未だ太陽光の偏極が大きく、朝方の白霧については注意が必要である。

・・・・・・今回報告を頂いた觀測者と報告數は次の通りである。

     AKUTSU, Tomio 阿久津 富夫 (Ak)  栃木・烏山 Karasuyama, Tochigi, Japan
            5 Sets of CCD Images (16, 26 April 2001)  f/70 32cm spec equipped with a Teleris 2
 
     CAVE, Thomas R トマス・ケーヴ (TCv)   長堤 Long Beach, CA, USA
            2 Drawings (21?, 24 April 2001)  280, 430, 380, 525×33cm speculum
 
     HERNANDEZ, Carlos E カルロス・ヘルナンデス (CHr) 佛羅里達 Miami, FL, USA
            1 Drawing  (24 April 2001)    220×20cm Schmidt-Cassegrain
 
     HIGA, Yasunobu 比嘉 保信 (Hg)  那覇 Naha, Okinawa, Japan  
           13 Video Images (18, 19, 22 April 2001) 25cm f/6.7 spec equipped with Sony VX-1000 
 
     HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk)   長野・箕輪 Minowa, Nagano, Japan
            3 Drawings (27 April 2001)  430×22cm speculum
 
     ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂  (Id)  那覇 Naha, Okinawa, Japan
            8 Drawings (17, 18, 19, 22 April 2001)   400, 530, 320×31cm speculum
 
     MELILLO, Frank J  フランク・メリッロ (FMl)  紐約 Holtsville, NY, USA
            4 Sets of CCD Images (20, 29 April 2001) 20cm SCT equipped with a Starlight Xpress
 
     MINAMI, Masatsugu     (Mn)  福井 Fukui, Japan
           49 Drawings (16, 17, 20, 22, 25, 26, 27, 30 April 2001)  400×20cm refractor*
 
     MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo)  廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan
           12 Sets of CCD Images (19, 21, 22, 25, 30 April 2001)
                                     f/50 25cm speculum equipped with an ST-5C
 
     MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  藤澤 Fujisawa, Kanagawa, Japan
           13 Drawings (22, 26, 27, 30 April 2001)    400, 425×20cm speculum
 
     NAKAJIMA, Takashi     (Nj)  福井 Fukui, Japan
            7 Drawings (27, 28 April 2001)  400×20cm refractor*
 
     NARITA, Hiroshi     (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan
            5 Drawings  (16, 17, 20, 23, 27 April 2001)  400×20cm refractor
 
     PARKER, Donald C ドナルド・パーカー (DPk)  佛羅里達 Miami, FL, USA
            6 Sets of CCD Images (24, 26 April 2001) 
                                       f/49  41cm Meade SC equipped with a Lynxx PC
 
     SCHMUDE, Richard W, Jr リチャード・シュムード (RSc)   喬治亞 GA, USA
            5 Drawings  (1, 7, 14, 29 April 2001)    230, 310×10cm refractor
 
     TSUNEMACHI, Hitomi 常間地  (Ts)  横濱 Yokohama, Kanagawa, Japan
            9 Drawings (22, 27 April 2001)  360×12.5cm Fluorite refractor
 
     WASIUTA, Myron E  マイロン・ワシュータ (MWs)  佛羅里達 Orlando, FL/ 維吉尼亞 VA, USA
           13 Drawings (16, 17, 19 April 2001)   360×32cm speculum/420×16cm refractor
           1 Set of CCD Images (23 April 2000)  16cm refractor equipped with a Lynxx PC  
 
                                                               福井市自然史博物館天文臺 

 

 

・・・・・・實際に視直徑の成長で幾つかのポイントが擧がって來ていることはどの觀測者も感じていると思う。今後Fortnight Reportではそうした點を採り上げる。

 

 前半22Apr迄の觀測:


 沖縄は例年より十一日早く、五月6日に梅雨入りしたが、その前から天氣は愚図ついていた様子で、Hg氏、Id氏とも22Aprで止まった。然し、ここまでヘッラスが見えている。Id氏は17Apr(147°Ls)ω=253°Wでヘッラスの南部が白く明るく、夕方の南極雲はやや薄暗い。Hg氏の18Apr(148°Ls)ω=236°W246°Wの像にはヘッラス南部と夕方の南極雲の間には弱い暗帶が見える。前者ではヘッラス南部は寧ろ黄色みを帶びているが、後者では明るくなる。この暗帶は19Apr(148°Ls)ω=234°W244°Wでも見えていて安定している(Hg氏の觀測は17hGMTから20.5GMT頃まで)Id氏の1819Aprのスケッチにもこの境界が出ている(18Aprω=251°W19Aprω=254°W264°Wなど)Mo氏の19Apr(148°W)ω=252°Wccd像によると、ヘッラス部はR光でも明るく、氷結が出ていると考えられる。南極雲の成分がヘッラス南部を覆って、明るさを落とすのか増すのか興味のあるところであるが、未だ分からない。Mo氏の2122Apr(150°Ls)の像ではエリダニア-アウソニアに固定された明部があるようである。
 尚、150°Ls邊りから山岳雲は衰退期に入るが、この段階でまだ午後のエリュシウム・モンス215°W)の山岳雲は健在である。Hg氏の1819AprVideo像ではω=234°W邊りで可成りの明るさだが、ι33°で、まだ地方時(LMT)は午後3時半頃である。エリュシウム自身はω=180°W邊りから内部で周りより一回り明るく見える。Tsさんも22Apr(150°Ls)ω=206°Wで認めている。

 

 南極雲の動き:


 季節は150°Lsに達しているから、大氣からのCO2の滑落はピークであろうと思われるが、南極雲が漂っている。度々氷結(極冠)と浮遊物(極雲)は明るさで區別されると言われるが、180°Lsを過ぎるまでは必ずしもそうではないであろう。明度は反射光によるものであるが、入射角の方が影響が大きいからである。然し、氷結は緯線に添うであろうが、極雲には動きがある。もともと北極雲は極からの偏芯によって發見されたと考えて好い。南極雲についてはよく分かっていないことが多く、内部の明度の違いは分かるものの、必ずしも明部が氷結によるものでもないであろう。


Schematic description of the south polar region
extracted from MINAMI's drawings on 25 April (151°Ls)
27 April (152°Ls)
(observed from the same angles every 40 minutes)
showing an apparent movement of the cloud matter inside the sph
(the brighter parts being encircled by dotted lines).

 25Apr(151°Ls)に筆者(Mn)ω=132°W(15:40GMT)から觀測を開始、南極雲のf側に著しい明部を認め、これを、この日ω=201°W(20:10GMT)まで追った。既にω=142°Wでは、この明部はマレ・シレヌムの南で殆ど南中であった。ω=162°Wには既に夕方に移っている。ω=171°Wでは、f側に別の明部が現れ、二つ玉になり、ω=181°Wでは第二の明部が可成り中に入り、エリダニアからアウソニアに降りていると思われた。問題は次の日に起こった。
 26Apr(152°Ls)にはω=123°Wから開始したが、ω=143°Wになっても前日の明部は存在していないのである。ω=152°Wには第二の明部に相當する可成りの明部が現れてきたが、前日ω=162°Wに未だ著しかった第一の明部は存在せず、鈍い灰色であった。f側の明部の出現はMk氏もω=150°Wで認めている。この第二の明部はω=171°Wでもまだf側だが、前日より明るい。ω=191°Wまで觀測、未だCMを過ぎてはいない。
 27Apr(152°Ls)には(Mnω=114°Wから開始)シーイングが悪化してきたが、矢張りω=143°Wでは、南端は明るいものの、25Aprのような輝きはない。ω=153°Wからはf側に明部が現れてきている。ω=172°WではO56でも濃淡が明確。Hk氏は同日ω=176°Wでこれを認めている。この三日の觀測で、明部の意味するものが明確ではないが、南極雲の動きが強く存在することは確かである。

 幸い、廣島のMo氏が25Apr(151°Ls)ω=149°W162°W172°Wと聨續撮像を行い、ω=149°Wではマレ・シレヌムの南に殆ど南中の明部を捉えてこれを證明している。Ak氏の26Apr(152°Ls)の後半像とMo氏の25Aprの像を比較すると第一の明部の輝度に相違のあることは明白である。尚、この明部はB光で強いのは勿論だが、R光でもやや弱く出ている。

 福井では次の晴天は30Apr(154°Ls)に來たが、17:30GMT(ω=113°W)で曇ってしまった。しかし、Mo氏のところはω=133°Wで晴れ間があり、良像を得ている。これを見ると再びパエトンティスからエレクトリス邊りが明るいように思う。しかし、この日觀測していたMk(ω=103°W113°W123°W132°W142°W)によると、f側に強さを感じている。ω=142°Wは薄明で條件は悪いが、明部は大きく、マレ・シレヌムを含む暗部が濃いとしている。これは25Aprも同じであった。明部の日替わりの著しい變化が極雲に依ることは確かだが、明るさが何に依るものか、周邊の暗色模様にどの様な影響があるかなどは、難しいところで、これから180°W邊りまでの觀測が重要である。(2003年には150°Lsりはδ6.5"180°Lsでもδ10"にしかならないのである。)

 尚、同時期、DPk氏が百度(°W)ほど先行して良像を得ている。 24Apr(151°Ls) ω=028°W034°W049°W056°W; 26Apr(152°Ls) ω=031°W036°Wの觀測で、兩日とも南極雲の描冩は壓巻である。南極雲は二つ玉で、ネレイドゥム・フレトゥムが薄暗く二つを分けている。東側はアルギュレであろうか。西側は張り出しており、24Aprには朝方から可成り強い譯である。26Aprには弱くなっている。これは25Aprω=140°W邊りに見えた著しい同じ明斑の別角度からのものであるかも知れない。MWs氏の23Apr(150°Ls)B光のccd(ω=043°W; Wr47+Murnighan IR rejection )にもアルギュレ方面は濃い。DPk氏の像にはCM過ぎのクリュセが淡い霧に包まれている。テムペも白い。

夕方のオリュムプス・モンス:
 オリュムプス・モンスに懸かる白雲の消長については(#134 p1251必讀)、古典的には100°Ls110°Lsのピークの後、140°Lsぐらいから衰退し180°Lsで微弱になることが知られている(タルシスは200210°Ls)。現在衰退期にあると思われるが、25Apr(151°Ls)の筆者の觀測は次の様であった。ω=142°Wにオリュムプス・モンス(Ω=133°W)の裾野を含む領域が巻き毛の様な淡い暗帶に囲まれて圓い位置が分別出來たが、ω=152°Wでも未だ白さは出ない。ω=162°Wにはオリュムプス・モンスが輪郭好くクッキリと見え、Gフィルターでも明瞭であったから、可成りの雲であったかもしれないが、然程ではない。ω=172°Wで初めて未だ縁から離れた位置で白くなった。地方時LMTは午後4時であった31°)Gでは綿毛のように見えていたが、往事の凄さはない。視直徑δ=13.4"であるから、1995年、1997年、1999年等と遜色はない。オリュムプス・モンスに先行してタルシスが不定形で白くなるから、追跡には時間配分が必要で、易しくはないが矢張り210°Ls前後までは注目すると好い。尚、「古典的」というのは、多分の統計操作が入るからで、「ずれ」があり毎回の觀測は重要である。1988年の様な例(#077 p0636)もある。尚、これから(2003年も含めて)視直徑が大きくなるとオリュムプス・モンスの全體像は常時見えると思う。

 


その他:
・・・・・・CAVE(TCv)さんは1935年以来の火星觀測者で八十歳近くだが、お元気で、ω=089°Wでユゥエンタエ・フォンスを検出している。これが毎回接近の流儀だそうである。24Apr ω=075°Wでは失敗した。幸せな方法で、歐美に多いが古典的である。
 クリュセの朝方に黄雲が出たという話が美國で出た(cf CMO Web-Site)が、ι30°邊りではダストより水蒸氣の方が強く反射するのである。#161 p1639を見られたい。これまで似たような話は雲霞の如くある。この点でも位相角の意識が必要である。


 

・・・・・・現在、觀測時間が限られる上、シーイングに恵まれることも稀であるから現象や模様の様子の追跡も容易ではない。入梅すると更に困難になる。五日も觀測が跳ぶと繋がらない。更にカンが鈍るから、イメージトレーニングと入念な準備が必要であろう。私は1986年の臺灣で今の季節の火星を觀測していたが、南極雲の状況など好く把握出來ていないのである。137°Ls145°Lsまで半月も雨で跳び、146°Ls150°Lsまで九日間天候不順で休まざるを得なかった。145146°Lsの二日九回の觀測を除いて(幸いヘッラス)、四週間近く駄目だったわけで、觀測をなしていない(而も梅雨期前であった)。從って、今回の四月(139°Ls154°Ls)の好天でこの季節を十五年振りに挽回した様なものである。折しも沖縄は雨や曇りマークが並ぶが、本土は入梅まで頑張らなければならない。こちらが入梅すれば、沖縄にはこちらの分までフル回転願いたい。それにしても空梅雨というのもあるのだが。

・・・・・・次回は1 May 2001 (154°Ls)から15 May 2001 (162°Ls)までの觀測のレヴューとなります。


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