CMO 2001 Mars Report  #15

2001年八月後半・九月前半の火星面觀測

16 August 2001 (215°Ls) 15 September (234°Ls)

 


東亜天文学会 火星課 『火星通信』 南 政 次 


・・・・・・#243(10May)以降、六月の最接近期を含めて、月二回に分けて編集・發行を續けて來たが、火星の活動も落ち着き、視直徑も減少したので、今回から一ヶ月毎のレヴューに戻る。今回は 16 August (215°Ls) から 15 September (234°Ls)までを取り上げる。この間に視直徑 δ 15.1"から12.0"に落ちた。中央緯度 φ 5°Nから、九月上旬には南北半球同等に見え、以後 φ は南半球へ移り、15Septには2°Sまで行った。このあと南半球が好く見えるようになり#240 p2928 (英文はp2925)で觸れたように南極冠の變化の觀測の季節になる。
 尚、火星の水平高度は2526Aug邊りで最低となり、視赤緯は-27°02'を指した。これでも1986年よりマシであった。15Septには-26°41'まで回復した(と言えるかどうか)。南中高度は福井でほぼ27°、那覇ではほぼ37°であったが、2003年には福井は今年の那覇並になる。

・・・・・・今回の觀測報告者と觀測日、觀測數は次のようである。

      BARNETT, John H ジョン・バーネット(JBn) 維吉尼亞 Richmond, VA, USA

            1 Drawing (26 August 2001)   360x 18cm refractor $

 

     BIVER, Nicolas ニコラ・ビヴェール (NBv) Noordwijk, Netherlands / Versailles, France#

            4 Colour Drawings (16, 24, 25 August; 1# September 2001)

                                 300x 20cm speculum / 330x 26cm speculum#

 

     HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk)   長野・箕輪 Minowa, Nagano, Japan

            8 Drawings (16, 17, 18, 24, 25 August; 1 September 2001)

430, 400x 22cm speculum

 

     ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 (Id)   那覇 Naha, Okinawa, Japan

           15 Drawings (29, 30 August; 2, 3, 6, 10, 15 September 2001)

340, 410x 31cm speculum

 

     KUMAMORI, Teruaki 熊森 照明 (Km)  Sakai, Osaka, Japan

            5 CCD Colour Images (22, 23, 28 August; 4 September 2001)

                                             20cm Dall-Kirkham with a Sony PC-5

 

    MELILLO, Frank J フランク・メリッロ (FMl)  紐約 Holtsville, NY, USA

             7 CCD Images (16, 22, 27 August; 4, 11, 13 September 2001)

                                             20cm SCT with a Starlight Xpress MX5

 

    MINAMI, Masatsugu    (Mn)  福井 Fukui, Japan

           53 Drawings (16, 17, 18, 23, 24, 25, 27, 28, 29, 31 August; 1, 4, 5 September 2001)

                                                         400, 600x 20cm refractor*

 

     MOORE, David M デイヴィッド・ムーア (DMr)  亞利桑那 Phoenix, AZ, USA

            5 Sets of CCD Images (17, 21, 24, 25 August 2001)

                                  f/40  36cm Cass with an Astrovid 2000 video camera

 

     MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo)  廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan 

           28 Sets of CCD Images (19, 23, 27, 28, 29, 31 August; 1, 4, 9, 15 September 2001)

                                          f/50 25cm speculum equipped with an ST-5C

 

     MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  藤澤 Fujisawa, Kanagawa, Japan

           10 Drawings (16, 17, 26 August 2001)      320x 20cm speculum

 

     NAKAJIMA, Takashi   (Nj)  福井 Fukui, Japan

           27 Drawings (16, 17, 22, 24, 25, 29 August; 1, 5 September 2001)

 400x 20cm refractor*

 

     NARITA, Hiroshi   (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan

            2 Drawings  (12 September 2001)    400x 20cm refractor

 

     PARKER, Donald Cドナルド・パーカー (DPk)  佛羅里達 Miami, FL, USA

            9 Sets of CCD Images (19, 24, 29, 31 August; 3, 6 September 2001)

                                            f/44 41cm Newtonian equipped with a Lynxx PC

 

     SCHMUDE, Richard W, Jr リチャード・シュムード (RSc)    喬治亞 GA, USA

            3 Drawings (17, 23, 24 August 2001)    230x 10cm refractor

 

     TEICHERT, Gérard ジェラール・タイシェルト(GTc) Hattstatt, France

            2 Drawings (24, 25 August 2001)    330, 310x 28cm SCT

 

     TSUNEMACHI, Hitomi 常間地 (Ts)   横濱 Yokohama, Japan

           10 Drawings (17+, 25+, 26 August 2001) 

                       320x 20cm speculum+ chez MURAKAMI / 360x 12.5cm Fluorite refractor

 

    VALIMBERTI, Maurice モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) 澳大利亞 Victoria, Australia

           12 Sets of CCD Images (29, 30 August; 5 September 2001)

                                          f/85 15cm refractor with a TC245 based camera

 

                                               $ Richmond Astronomical Society Ragland Observatory

                                                 *福井市自然史博物館屋上天文臺 Fukui City Observatory

雲:

 黄雲は依然両極以外全面を覆っていて、舊來の暗色模様は姿を現していない。ただ、八月の後半には、黄雲が薄くなって來たと言う報告が相次いだ。例えばDMr氏は17Aug(黄雲發生後55)ω=352°Wの像に添えて「It appears the dust has cleared a bit on this hemisphere from last rotation(17八、p3117)DPk氏も19Aug(57) ω=295°W301°Wで「The albedo features are somewhat more visible(20八、p3115)と述べている。どちらもシュルティス・マイヨルを捉えての話である。FMl氏も24Augemailで同様の考え(p3116)。眼視でもJBt氏は26Aug(64)ω=235°Wの觀測で、マレ・キムメリウムもマレ・テュッレヌムも黄雲に覆われているが「The dust storm seems to be less intense than a month ago」とメモしている。此方側でも同じ様な見解が出ているが、同じ頃Id氏やMk氏などは黄雲の強さそのものは殆ど變わりないという考えを保っていたようである。筆者も、暗色模様の一部はコントラストが好くなっているが、眼視では丁度七月後半頃のIR像の濃度の程度で、然程暗色模様が姿を現しているわけではない、と考えている。ただ、次第に不透明さは改善されてゆくのは當然で、後述のように、黄雲層の光學的厚さは減じているかも知れない、と思われる觀測もある。位相角ιが増しているので、影が出來、輝きも少し落ちてきている爲もあろうと思う。

ソリス・ラクス、アウロラエ・シヌス附近:
 そんな中で、一向に姿を示さないのがソリス・ラクスである。日本からは24Aug(62)頃まで見える角度にあったが、影も形も拝めない。アウロラエ・シヌス邊りも同定するのが難しい。南部タウマジアからアウロラエ・シヌスの方へ流れる明帶は、タルシス山系の前方に流れる明帶と並んで見えており、例えば、23Aug(61)ω=071°Wでの筆者(Mn)のスケッチは、16July(23)ω=074°Wのそれと然程變わらず、當時話題になった形態が未だ持續しているようである。ただ、七月は後方の明帶の方が明るかったのに對し、今回は前方が目立つようであるが、全體としては明度は落ちているであろう。ただ、ソリス・ラクスの南方に相當すると思われる(南極冠に接するかも知れない)ところが、可成りの暗部で、Km氏の22Aug(60)ω=084°W23Aug(61)ω=060°Wで太く描寫されている。

シヌス・メリディアニ、シヌス・サバエウス附近:
 ノアキスはDMr氏の17Aug(55)ω=352°Wで北半球の砂漠地方やヘッラスに比べて可成り暗く描寫されている。シヌス・サバエウスの西半分は回復していない風に見える。他にDMr氏の21Aug(59)ω=330°W

 ノアキスはオセアニアや東洋からは29Aug(67)頃から見えてきた。MVl氏のIR像はω=326°W347°W352°W004° で得られている。福井(Nj&Mn)ではω=333°Wω=022°WId氏はω=000°W012°Wで觀測している。矢張りノアキスは薄暗く、デプレッシオネス・ヘッレスポンチカエは薄暗く惚けてしまっている。ω=333°Wではマレ・セルペンティス邊りが最も濃い。シヌス・サバエウス東部は西へ延びず、シヌス・メリディアニはIRで可能かと思われたが、MVl氏像ではハッキリしないし、Mo氏のω=024°Wをここに掲げるが、マルガリティフェル・シヌス邊りに比べて弱い。従ってこの邊りは#249 p3095での記述と變わりがないと思われる。
 MVl氏は30Aug(68)にはω=312°W323°W332°W358°WRGBカラー像を得ている。Id氏はω=015°W024°W31Aug(69)には筆者(Mn)ω=313°Wからω=353°W迄。Mo氏がω=358°W005°W009°Wと續く。シュルティス・マイヨルが可成り中に入ってきた。シヌス・サバエウスは西半分は見えず、依然シヌス・メリディアニの邊りがやや暗いかという程度。4Sept(73)にはマレ・セルペンティスは多分大口徑IRでは詳細に富んでいるであろうと思われる現れ方であった。Km氏の畫像ではノアキス南部は可成り濃い(ω=308°W, 315°W)

シュルティス・マイヨル近傍:
 DPk氏の19Aug(217°Ls57)ω=295°W301°WR像ではシュルティス・マイヨルが中心で、シヌス・サバエウスの附け根、マレ・テュッレヌムが三點セットで見えている。DMr氏の21Aug(59) ω=313°W24Aug(62) ω=286°W25Aug(63) ω=304°WMVl氏の30Aug(68) ω=312°Wでも同じである。日本では4Sept(73)10:40GMT5Sept(74)11:20GMTω=295°Wであった。この邊りは肉眼でも好く確認された。Mo氏は4Septにはω=295°W309°W312°W320°W331°W等で撮像している。デルトトン・シヌスが少し回復しているかも知れない。5Sept(74)にはMVl氏がω=280°W320°Wで良像を得ている。

マレ・キムメリウム:
 #250p3111(英文p3109)9Aug(47)からマレ・キムメリウムが常態に近くなってきていることを述べたが、DPk氏の29Aug(67)ω=207°Wはおとなしいマレ・キムメリウム周邊を寫し出していて、筆者の10Aug(48)ω=203°W11Aug(49)ω=204°Wでのスケッチに似ている。エレクトリスも明るい。一回り後のこの領域はMo15Sept(84)にはIRで、ω=190°W195°Wの他、ω=203°Wω=207°W213°Wで像を得ている。δ12.0"で辛いが、ω=213°W#248 p3071のシリーズを狙ったものである。マレ・キムメリウム西端はMVl氏の5Sept(74)ω=270°Wに正常な姿が出ていると思う。

マレ・シレヌム:
 マレ・シレヌムの邊りがどうなっているか、今回のDPk氏の3Sept(72)ω=169°Wの像を同じくDPk氏の24June ω=167°Wの像と比較して、二つの點がハッキリした。24Juneの像ではマレ・シレヌムは1986年以來の形をしていて、アントニアヂの火星圖の西端部は淡化していたのであるが、3Septの像ではここが寧ろ比較的濃くなっている點、更に東部は回復しておらず、尻尾のように北へ暗部が下がっている點である。これは所謂ヴァルハラの東端になるのではないかと思われる。既に14Aug(52)にはMo氏のω=168°WR像があり、これらの點はやや弱いながら出ているようである。

エリュシウム邊り:
 DPk氏は29Aug(67)ω=207°Wφ2°Nに於いて、エリュシウムもプレグラの暗斑も何も見えないとしている。31Aug(69) ω=198°W等では朧気にプロポンティスTが出ているようである。Id氏は15Sept(84)ω=215°W邊りで、アエテリアの暗斑などを精査したようだが、不分明であったようである。

オリュムプス・モンス:
 1971年や1977年の大黄雲はマリナー九號やヴァイキングの觀測で上空40km50kmに到ったという紀録があるが、今回はオリュムプス・モンスの火口などが暗點として見えるから、20km上下を保っているようである。我が方からは、オリュムプス・モンスは前回(9Aug)に引き續き、16Aug(54)にはω=118°W147°Wで見えていた(Mn)Hk氏はω=120°Wで朧気に捉えている。Nj氏はω=142°Wなど。朝方や南中より、午後に移った方がハッキリする。アルシア・モンスも茶系統で見える。18Aug頃まで見られたが、17Aug(55)にはMk氏と出張のTs氏が20cm反射で確認している。Ts氏はω=135°Wなど、福井のNj氏はω=138°WDPk氏の3Sept6Sept(75)ω=127°W135°WにもRGBそれぞれで明確に出ている。タルシス山嶺も見事である。15Sept(84)にはId氏がω=178°W188°Wでオリュムプス・モンス暗點を夕方で確認した。

タルシス以西:
 オリュムプス・モンスやタルシス三山の暗點は黄雲の明るさのためのコントラスト効果である。然し、DPk氏の6Sept(228°Ls75)の良像では、クラリタス・フォッサエの北端や、ティトニウス・ラクスの暗點などが出ているが、これらは寧ろ凹型の傾斜地や陥穽で、正常なときも暗斑・暗點として見えているものである。地表の通常の暗色模様が未だ復元するほどの透明さはないが、これらの像から判断する限り、傾斜の強いところはもともと砂を受け附けないし、この邊りでは、ι =45°も關係して、可成り濃い影を作る凹型地形はIRの長波長光を透って再現される程には黄雲が稀薄化している可能性がある。

南 極 冠:
 南極冠の朝方に見られた濃い朝霧乃至朝霜は前回報告(p3113英文p31103111)のように、9Aug(211°Ls)邊りから衰退し始めたが、南極冠の周りがスッキリしたわけではない。日本ではこの朝霧は15Augから月末までω=170°W邊りから東回りでω=330°W邊りまで弱く見えている。17Aug(216°Ls)ω=116°WTs氏は南極冠がハッキリしないと述べている。南極冠は18Aug(216°Ls) ω=110°W120°W邊りで少し見える程度(φ=5°N)19Aug(217°W) ω=300°W邊りのDPk氏の像 でも南極冠は瞥見できる。
 南極冠のサイズは角度と共にこの時期(黄雲との關係以外でも)重要な問題なので、やや五月蠅さを我慢して角度を詳しく書くが、26Aug(221°Ls) ω=016°Wで、Ts氏は南極冠をその北の暗色模様と區別して捉えているようである。筆者の觀測では28Aug(223°Ls) ω=017°W29Aug(223°Ls) ω=333°W352°W等で南極冠についてexplicitな記述がある。29AugMVlω=326°W等では南端が白く明るいが、Id氏のω=360°Wでは、南極冠は弱く目立たない。30AugMVl氏の像 ではω=324°Wで南極域は明るいが、次第にω=360°Wでは目立たなくなっている。31Aug(224°Lsφ=2°N)DPkω=190°W邊りでは幅狹い南極冠がダークフリンジで囲まれているようである。同じ日、日本からはω=330°W邊りから好く見えていた(Mn)
 九月に入ると南極冠は餘程しっかりしてきた。Hk氏は1Sept(225°Ls) ω=328°Wで南極冠とヘッラスを區別している。Id氏は2Sept(226°Ls) ω=317°Wで幽かに細く見えるとするが、3Sept(226°Ls) ω=303°Wでダークフリンジを認め、ω=329°W339°Wでは南極冠は明瞭とする。4Sept(227°Lsφ=1°N)筆者のω=300°W邊りの觀測では、南極冠の深さは幾らか厚いとする。場所柄ダークフリンジは當然である。最早朝霧はない。5Sept(227°Ls)にはω=276°W315°Wで明確であった。但し、この日のMVl氏の像では南極冠は不明である。6Sept(228°Ls)DPkω=130°W邊りでは明確である。Id氏はシーイングの所爲で610Septと南極冠が捉えられなかったが、15Sept (234°Lsφ=2°S)にはω=178°W215°Wで南極冠をしっかりダークフリンジと共に捉えている。この頃から正常なら偏芯が始まるのと、φが更に南を向くので、南極冠の觀測は今後の重要な課題である(#240 p2928 (英文はp2925) 參照)


♂・・・・・・追加報告: 

   ISHIBASHI, Tsutomu   (Is)  相模原 Sagamihara, Kanagawa, Japan

            5 B&W Images (1, 3, 10, 16, 23 July 2001)    31cm f/6.4 spec; HIE, NP400P, TP

 LtE參照。10Julyには印象深いAk氏のω=133°Wccd像があり、比較してIs氏のω=123°WR(TP)は印象が薄いが、B(B390)は特徴は出ている。ただ、南北線が誤っている。


・・・・・・次回(25 Oct 2001)16 Sept (234°Ls)から15 Oct 2001 (253°Ls)迄の觀測をレヴューする。


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