CMO 2001 Mars Report #18
2001年十一月後半・十二月前半の火星面觀測
16 Nov 2001 (273°Ls) 〜 15 Dec 2001 (291°Ls)
東亜天文学会 火星課 『火星通信』 南 政
次
♂・・・・・・火星は視直徑 δ を落としているものの、黄雲は沈静化して模様が顕在化し、觀測にメリハリが出ている。火星の高度も夏に比べて高くなり、日没前から觀測を始めれば觀測時間は然程夏から減っていない。今回は 16 Nov 2001
(273°Ls) ~ 15 Dec 2001 (291°Ls) が範囲であるが、この間、視直徑 δ は8.0"から6.8"まで落ちた。一方、視赤緯は-18°26'から-10°52'まで昇った。足羽山には天文臺の南西に民間放送のテレヴィ塔があり、火星が蠍座に入る頃から邪魔になるのであるが、視赤緯が-12°より高くなると上を通過する。中央緯度 φ は19°Sから25°Sとなり、季節と共に大接近型になっている。南極冠が圓く小さく明確だから、2003年の予備觀測になる。ただ、位相角 ι は44°から42°へと少し圓味を帶びたものの、欠けは強い。
火星は順行が速く、これからも夕空に長く殘る。26Novには天王星を追い越してその東に移ったが、Ts氏は26日には曇が豫想されたので、前もって25Novに望遠鏡を少し動かして、翡翠色の天王星に別れを告げたそうである。
十一月19日未明の獅子座流星群は爆發的な流星雨となったが、幸い火星は夕方で今回は時間が重なることはなかった。然し、あれだけの頻度と光度があれば、街の灯りの頂上(足羽山の天文臺)で火星に取り憑いていても素晴らしい流星の幾つかは見ることが出來たのではないかと思われる。未だこちらの流星が飛びかっているときシーハン(WSh)氏からアメリカの最初のピークの記述がemailされて來たが、わが國からもTs、Mk、Ns、Km、Mo、Id、Ak、Mt氏などから次々便りがあった。
十二月10日には金澤・福井は初雪であった。今回の寒波は強く、札幌は一夜にして50cm以上の積雪であった由。然し、福井は未だ積雪はない。東京の初雪は21日と報道された。
♂・・・・・・日没時、火星は可成りの南中で凪(風平)に出會えばシーイングは好く、模様は復活しているからまだまだ觀測は可能である。今回の唐那・派克(DPk)氏の活躍は見事で、而も重要である。こちらでは表日本の天候の好かったこともあり、Km氏とMk氏、Ts氏がペースを上げた。關東の後者二人で百回を超える。Ts氏の場合、現在の南極冠の評価やφの感覺など、2003年の觀測に生きてくる經験であろう。尚、冬に掛かりながら全體觀測數は281、闕測日は僅か一日(5Dec)だけであった。
AKUTSU,
Tomio 阿久津 富夫 (Ak) 栃木・烏山 Tochigi,
Japan
10 Sets of CCD Images (23, 24, 25 November; 1 December 2001)
f/70 32cm speculum with a Teleris 2
ISHADOH,
Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id) 那覇 Naha,
Okinawa, Japan
18 Drawings (17〜20, 24, 26〜29 November; 3, 4, 9 December 2001)
400, 530x 31cm speculum
KUMAMORI,
Teruaki 熊森 照明 (Km) 堺 Sakai, Osaka, Japan
18 CCD Colour Images (20, 22〜24
November; 4, 6〜9, 12 December 2001)
60cm Cassegrain
$ with a
Sony TRV-900
MELILLO,
Frank J フランク・メリッロ (FMl) 紐約 Holtsville, NY, USA
6 CCD Images (17, 21 November; 1, 15 December 2001)
20cm SCT with a Starlight Xpress MX5
MINAMI,
Masatsugu 南
政 次 (Mn) 福井 Fukui,
Japan
71 Drawings (19〜24, 30 November; 1,
2, 11, 12 December 2001)
480, 400, 600x 20cm refractor*
MOORE,
David M デイヴィッド・ムーア (DMr) 亞利桑那 Phœnix, AZ, USA
1 Set of CCD Images (2 December 2001) f/40 36cm Cassegrain
with an Astrovid
MURAKAMI,
Masami 村上 昌己 (Mk) 藤澤 Fujisawa,
Kanagawa, Japan
29 Drawings (16, 19〜25 November; 2, 9, 11
December 2001)
320x
20cm speculum / 300×10cm ED refractor
NAKAJIMA,
Takashi 中 島 孝 (Nj) 福井 Fukui, Japan
9 Drawings (23, 24 November 2001) 480, 400x 20cm refractor*
NARITA,
Hiroshi 成 田 廣 (Nr) 川崎 Kawasaki,
Kanagawa, Japan
12 Drawings (19, 21〜23, 27〜29 November 2001)
400x 20cm refractor
PARKER,
Donald C ドナルド・パーカー (DPk) 佛羅里達 Miami, FL,
USA
30 Sets of CCD Images (20/21, 21, 23, 25〜27, 29
November; 2, 3, 8, 11, 12, 14 December 2001)
f/44 41cm Newtonian equipped with a Lynxx PC
TEICHERT,
Gérard
ジェラール・タイシェルト (GTc) 法 Hattstatt, France
4 Drawings (27, 28 November; 10, 13 December 2001) 330, 310×28cm SCT
TSUNEMACHI,
Hitomi 常間地 ひとみ (Ts) 横濱 Yokohama, Japan
72 Drawings (16, 19, 21, 22, 24, 25, 29 November; 2, 3, 8〜10, 12, 15 December 2001))
360x 12.5cm Fluorite refractor
VALIMBERTI,
Maurice モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) 澳大利亞 Viewbank, Victoria, Australia
1 Set of CCD Images (21 November 2001)
f/92 15cm refractor with a TC245 based
camera
$ ソフィア・堺 天文臺 Sakai City
Observatory
*
十一月下半期-日本(+澳大利亞)から:
16Nov(273°Ls)にはTs氏がω=263°W〜312°Wを六回觀測、ω=273°Wまでヘッラスが朝方で白いが、ω=283°Wでは黄色くなる。大きさも明るさも控えめ。但し、朝縁に靄。水蒸氣であろう。シュルティス・マイヨルは明確なわけではない。Mk氏は8:10GMT風平でω=271°Wの觀測、シュルティス・マイヨルは明確ではない。
17Nov(274°W)にはId氏がω=283°W、322°Wで觀測、快晴だがシーイングが悪く、シュルティス・マイヨルもままならない。
18Nov(274°Ls)のId氏はω=278°Wで、北風が強く南極冠も定かではない様子だが、マレ・テュッレヌムなどの恢復を感じている。
19Nov(275°Ls)の筆者(Mn)の觀測はω=219°W(6:40GMT)からω=287°W (11:20GMT)まで八回。福井は7:40GMTに日没、8:20GMTでは未だ南中直前であった。Ts氏はω=234°W (7:40GMT)からω=283°W (11:00 GMT)まで六回の觀測、Mk氏はω=241°W、Id氏はω=276°Wと285°Wの觀測であった。Mnのω=219°W、229°Wではマレ・キムメリウムの西端部が濃く見え、その朝側には靄が出ている。南ではマレ・クロニウムが見え、大陸が明るい帶をなしている。北ではケルベルス・プレグラ邊りに暗部があり朝方にも暗色模様が北極雲に接して出ているようである。午後端にはヘーズが見えている。ω=239°W以降、マレ・キムメリウムがマレ・テュッレヌムの東の枝と分離して見え始める。ヘスペリアの西口が抹香鯨の口か。ω=249°Wではエリダニアとアウソニアがクサントゥスで分離する。ω=258°Wでは朝方のヘッラスがGフィルターで靄って見える。そろそろシュルティス・マイヨルが内部に入ってくるが、O56フィルターでも暫く淡い。朝靄を被っているようである。ω=287°Wで明確になるが、1971年型である。ヘッラスは圓く明るい。アウソニアは午後端でやや白いか。南極冠は明白である。Ts氏も後半シュルティス・マイヨルは不明確だが、朝方のヘッラスの白味を捉えている。Ts氏のω=263°W以下ではヘッラスは赤味を帶びた黄色だが白味を帶びている。Mk氏の朝のヘッラスは明るい。Id氏はω=276°Wでシーイングが好く、南極冠圓く明白。ヘッラスはやや明るい程度。
20Nov(275°Ls)のMnは19Novと似たような状況であった。ω=231°WではCM近くの大陸は可成り明るい。マレ・クロニウムは南極冠域から離れている。ω=251°Wではマレ・テュッレヌムは先行する濃いマレ・キムメリウムに比して緑が勝っている。マレ・テュッレヌムの東の腕は明確。ヘッラスはGでは白いが、Intではクリーム色か。Mk氏はω=234°W、大陸の朝方は明るい。北極雲は夕方で強い。
この日は福井では17hJSTまで好シーイングであったが、堺でももっと長く相當好かった模様で(大きな高氣壓)、Km氏のω=244°Wは素晴らしい影像であった(102像のコンポジット)。マレ・キムメリウムは1975年型で、北側から幾つか棘が出て、西北端のスパイクも出ている。クサントゥスがアウソニアとエリダニアを分かつ。アウソニアからヘッラスに掛けて白い靄がある。これはω=253°Wではより明白である。アエテリアには東西に延びる暗帶がある様子で、これは從前に比べて複雜な様である。Id氏はω=263°Wの觀測、午後端に白いヘーズ。シュルティス・マイヨルは朝靄の中。
21Nov(276°Ls):Mnはω=202°Wから。マレ・キムメリウムの西端が朝靄から出て濃い。ω=212°W(森田角)では午後のマレ・シレヌムから運河が北へ奔る。ケルベルスは見える様だが,エリュシウムは分離しない。ω=222°Wではマレ・キムメリウムの北側の砂漠は寧ろ赤いと言える。朝靄はω=231°Wでも顕著だが、エリダニア-アウソニアはこの日も明るい。ω=263°Wまで觀測。Ts氏はω=224°W〜263°W。南極冠の朝方に白い靄を見ている。ω=243°Wではマレ・キムメリウムの西部が濃い。北極雲も部分的に相當明るい。Mk氏はω=222°Wでシーイングが好く、南極冠明瞭。大陸は明斑の聨鎖。尚、この日澳大利亞のMVl氏がやや遅く10:16GMTにω=252°Wで良像を得ていて、前日のKm氏の角度に對應する。ヘスペリアの切れ目やアエテリア地方の暗部を寫し出している。南半球高緯度は單純化されていて、寧ろ1988年の配置を思い出す。
22Nov(277°Ls)はTs氏がω=204°W(7:40GMT)からω=253°W(11:00GMT)迄、南極冠西隣には靄。北極雲は夕方に寄る。夕端もリムライト。ω=233°Wでエリダニア明るい。Mk氏はω=212°W、Km氏がω=217°W、Mnはω=229°Wから、エリダニア-アウソニア明るく、マレ・キムメリウムの西部は濃い。ω=248°Wではエリダニアの東部、像の東端で白雲。ω=258°W迄。
23Nov(277°Ls):Mnはω=180°W(6:40GMT)〜248°Wまで、Mk氏はω=190°W〜241°W迄の六回の觀測、Nj氏はω=214°W〜243°Wまで四回。北半球深くに暗色模様が幅廣く出ているが、詳しくは掴めない。マレ・シレヌムは可成り濃く見える(濃茶)。ω=190°W(7:20GMT)等では大陸に朝霧。Mk氏も青白味を指摘。Mk氏は北半球朝方にも明部。ω=199°Wではマレ・キムメリウムが朝霧とは無關係に全體濃い。大陸は鈍い。ω=238°W、248°Wでは大陸東端に白雲。マレ・キムメリウムは下膨れ。Mk氏はω=241°Wでアウソニアを分離。Km氏はω=208°W(+214°W)、マレ・シレヌムの西部が好く出ていて、スカマンデルが見えるか。大陸内の色は複雜。Ak氏はω=210°Wで撮像、午後のマレ・シレヌムが明確で、北半球に模様。スカマンデルも出ている。福井では7:35GMTに太陽は山に隠れた。
24Nov(278°Ls)もMnは6:40GMTから開始。ω=170°W:ケルベルスかプレグラ邊りが見えている。ω=180°Wではゼピュリアには朝霧。ω=199°Wでは大陸朝方に靄。マレ・キムメリウムは既に濃く、ω=219°Wでは中に入って朝霧が從う。ω=238°W迄。この日はどの角度でも南極冠の深さが狹い。Nj氏はω=175°W〜214°Wの五回の觀測。Ak氏はω=180°W、192°Wの報告だが、IR820での像が七像、ω=172°W〜203°W迄。この日の像では午後端がやけに明るい。南極冠の寫りは悪い。Mk氏はω=180°W〜199°W (229°W迄觀測するが、報告から省く)。マレ・シレヌム確認。Ts氏はω=185°W〜233°W。晴朗風平。南極冠は平たく、その東隣に靄。北極雲明るい。ω=204°Wではマレ・キムメリウムがくすんだ深緑。Km氏の像はω=207°W。Id氏はω=217°W、234°W。沖縄シーイング良好、530×使用。南極冠は明るいが縁が不明瞭。大陸爲明帶。エリュシウム不分明。北極雲明亮。
25Nov(279°Ls):Mk氏はω=151°W〜219°Wまで八回觀測、ダエダリアの暗帶確認。ω=170°Wで小さな南極冠明確。屈折で火星らしい赤味。ω=189°Wではマレ・シレヌムとマレ・キムメリウムを分離。Ak氏はω=152°W(6:08GMT)〜174°W(7:35GMT)で赤外像を七像得ている。Ts氏はω=165°W(7:00GMT)〜223°W(11:00GMT)まで六回觀測、南極冠は淺いながら明瞭、ω=175°Wではマレ・クロニウムの東部が濃い。ω=214°Wでは南極冠の朝方に靄。スカマンデルが見えている模様。
Id氏は26Nov(241°Ls)にはω=241°W(12:50GMT)、27Nov(280°Ls)にはω=192°W(10:10GMT)、204°Wで觀測。前日は時間的に遅く不良だが、ω=192°Wでは6/10のシーイングで、マレ・シレヌム午後に。マレ・クロニウム。朝方縁は朝霧か白っぽく鈍い由。北極雲の活動。後者でも朝霧觀測。南極冠明白。更にId氏は28Nov(281°Ls)にはω=189°W、29Nov(281°Ls)にはω=177°Wで觀測。30Nov(282°Ls)にはMnがω=133°W〜155°W。
以上、視直徑の所爲で詳細は無理だが、好く暗色模様の見えることから大氣は極めて透明であることが判る。氣温の起伏が激しくなって、朝霧などの氣象も恢復している。北極雲の活動も活發である。
唐那・派克(DPk)氏の十一月下旬:
DPk氏の活躍は素晴らしく下旬は聨日の様に良像を得ていて、重要なものばかりである。
20Nov(276°Ls、δ=7.8")のω=101°W(23:59GMT)にはソリス・ラクス領域の暗斑が中央に出ている。この暗斑の緯度は筆者の測定では16°Sから24°Sに入っているから、所謂ソリス・ラクスとは北にずれている。コラキス・ポルトゥス(Coracis P)と思われる暗斑は46°S邊りにあるからタウマシアは正常と思われる。ダエダリアに1973年型の暗條がマレ・シレヌムの方に列なっている。
21Nov(277°Ls)にはω=077°W/081°Wで、矢張りソリス・ラクス領域の暗斑が朝方に濃く描寫され、近くにティトニウス・ラクスの痕跡が少し見える。アウロラ・シヌスも濃い。南ではアルギュレから西のオギュギス・レギオが明るく、また南極冠の周りも、特に朝方に靄状のものが見える。北ではルナエ・ラクスとニロケラスが北極雲に接してやや出ている。
23Nov(278°Ls)にはω=068°W/070°Wだが、これらは前日,前々日に比べてもより秀逸で、メラス・ラクス-ティトニウス・ラクスからアウロラ・シヌスに掛けてや、ルナエ・ラクス、ニロケラスの邊りの描寫が詳しい。オギュギス・レギオがRで明るい。ネレイドゥム・フレトゥムも出ているかも知れないが、五月のもっと視直徑の大きいときには出なかった様な濃淡が出てきている様子である。濃淡はfalloutに依るだろうが、Rで見る限り大氣は昼間の水蒸氣も含めて透明なのであろう。
25Nov(279°Ls)のω=044°W(+046°W)、049°Wも壓巻で、過度な處理ではあるが、濃淡は安定している。マレ・セルペンティスからマレ・エリュトゥラエウムへの暗帶は直線的に明確で、アルギュレから東のノアキスの明部を仕切っている。マルガリティフェル・シヌスから南への枯れ具合も際立つ。ニリアクス・ラクスも北極雲に接して出ている。尚、これらの像にはソリス・ラクス領域での朝霧が可成り濃く出ている(B像に依る)。
26/27Nov(280°Ls)はω=036°W、044°Wで、やや不安定だが、アウロラエ・シヌスに續く朝霧は明白。南極冠の朝方に靄(RとBでの南極冠の大きさの違いによる)。
27Nov(280°Ls)はω=016°W、021°Wで、シヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニがアントニアディ流に見事に出ている。パンドラエ・フレトゥムの西部は不明瞭。マレ・エリュトゥラエウムへ向かう暗帶の南のノアキスは赤味を帶びて明るい。エドムは明斑、アラムも明るい。
29Nov(282°Ls)はω=355°W(+358°W)、002°Wで、マレ・セルペンティスからマレ・エリュトゥラエウムへの暗帶の詳細が分かる他、ノアキスに縦の暗條が見えている。シヌス・メリディアニは綺麗なアントニアディ風で、順次二本の爪の朝霧からの現れ方を三枚は描寫する。エドムが異常に明るい。南極冠はRで眞ン丸である。尚、マレ・セルペンティスはシヌス・サバエウスと分離している。以上、Rで見る限り大氣は黄雲發生前より寧ろ透明であり、氣象が復活しているが、黄塵の沈殿は殘っていると思われる。ただ、余り異常はなく、却って古典的な配置に戻っている。
十二月上半期:
1Dec(282°Ls)にはMnはω=113°W〜142°W、Ak氏がω=143°Wの觀測である。黄雲前にはω=113°Wでは西端にソリス・ラクスがK々としていたが、今は見當たらない。少し中に暗斑があり、ダエダリアからマレ・シレヌムの方に暗帶。勿論DPk氏のR程の濃度はない。Ak氏でも同様。FMl氏がω=325°W、340°WのR像、シュルティス・マイヨルとシヌス・サバエウスが出ている。
2Dec(283/284°Ls)にはDMr氏がω=013°W(1:20GMT頃)に撮像、シヌス・メリディアニが比較的濃く出ている他、ノアキスからマレ・エリュトゥラエウムへの暗帶が顕著で(DMr氏の15July(196°Ls)の像と對應。CMO#248 p3076參照)、その南は明るい。日本ではMk氏がω=091°W(6:40GMT)〜111°W(121°Wは報告から省く)、Mnもω=091°W〜150°W。最初アウロラエ・シヌスが見え、例の暗斑が續く。ω=111°Wでは、續いて朝方に可成り廣範囲に朝霧。Mk氏は問題の暗斑を見ている様である。ω=140°W邊りではダエダリア-クラリタスが濃い。Ts氏はω=123°W〜152°W。南極冠の右側に白い靄。ω=133°Wでダエダリアの描寫。フロリダではDPk氏が22:45GMTからω=325°W、335°W、341°Wで良像を得る。ノアキスを奔る暗帶はマレ・イオニウムに發する。デルトトン・シヌスは出ている。シヌス・サバエウスの東部は濃いが、マレ・セルペンティスと分離している。シヌス・サバエウスの北には併行して淡い暗帶が見られる。ヘッレスポントゥス、ヤオニス・フレトゥムの描寫は不安定。
3Dec(284°Ls)にはTs氏はω=103°W(8:10GMT)〜132°W、ソリス・ラクス領域の色とその西側の色が違い朝方は白っぽい。北極域は夕方に傾いて明るい。Id氏はω=123°W(9:30GMT)、南極冠を小さく描き明瞭とする。ソリス・ラクス北の暗斑からダエダリア暗帶。DPk氏は23:01GMTからω=319°W(+321°W)、329(+330°W)で矢張り良像。ヘッラスは白くなっているが、ゼア・ラクスが見える。マレ・イオニウムの北は淡化していて、未だ奇妙な感じ。トリナクリア(アウソニア・ボレアリス)が可成りの明部で、マレ・テュッレヌムは細くシュルティス・マイヨルの方に喰い込んでいる。これは前回、マレ・テュッレヌムが切り離されている様に觀測された時に既にこうであったと思う。
4Dec(284°Ls)にはKm氏がω=095°W(8:19GMT)、111°Wで撮像、アウロラエ・シヌスと後續の暗斑の間に明部、111°Wではアルギュレ方面が端で明るく、朝方ではダエダリアが濃く出てきている。Id氏はω=123°W、137°W。前者は前日と同じ角度だが、シーイングが好く、ソリス・ラクス領域の暗斑はやや濃く、南極冠も前日より大きく描寫。後者ではダエダリアからマレ・シレヌムの北側がほんのりと明帶が沿う。これはワルハッラとの間の明帶で見事な觀測である。
續いてKm氏が6Dec(285°Ls)にはω=099°W、7Dec(286°Ls)にはω=064°W、073°Wで撮像している。ソリス・ラクス北西の暗斑が明確、アルギュレ方面の明部は下旬のDPk氏の像を彷彿とさせる。
8Dec(287°Ls)にはKm氏がω=044°W(7:30GMT)、065°W、アルギュレ方面が明るい。Ts氏もω=044°Wから開始、ω=083°Wまで、前半はアウロラエ・シヌス、後半はソリス・ラクス領域の暗斑、北極雲は夕方に傾いて強い。南極冠明確。ω=073°Wでは南極冠の東側に明斑。
この日DPk氏は22:51GMTから翌日00:45GMTまで、ω=267°W(+270°W)、273°W、285°W、293°W(+295°W)で重要な像を得ている。シュルティス・マイヨルは痩せ形に戻り、モエリス・ラクスやネペンテスが復活している可能性がある。28June(4日)のこの邊りでの局所黄塵によって砂被りが拭えた可能性がある。この像は、他にヘッラス盆地が朝方でスッポリ丸く白くなっていること、然しゼア・ラクスが見えること、エリダニアにも白雲があるが、アウソニアは北まで地肌を見せた明部であること、ヘスペリアが切れ上がり、昔ケルベルスIIIと喧伝された運河が横切っていること等を示していて、興味深い像である。
9Dec(287°Ls)にはMk氏がω=020°W〜039°W、Km氏がω=028°W、038°W、050°W、Ts氏がω=034°W〜063°W、Id氏がω=073°W、090°Wの觀測。Mk氏のω=020°Wではアルギュレはやや薄暗い。マルガリティフェル・シヌスが可成り濃いか。Km氏の像ではシヌス・メリディアニとマルガリティフェル・シヌスが分離している。アルギュレ域はやや白い明部。Ts氏:北半球午後端が明るい。ノアキスからアルギュレに明帶。Id氏の觀測では、アウロラエ・シヌスが濃く、アルギュレ西が明るい。ソリス・ラクス域の暗斑は淡い。
10Dec(288°Ls)にもTs氏がω=024°W〜073°Wの六回の觀測。暗色模様は詳細は無理だが好く見える。マルガリティフェル・シヌスが濃いか。
11Dec(289°Ls)にはMk氏が日没前3:30JSTにω=000°Wで觀測、シヌス・サバエウスからシヌス・メリディアニを濃く認め(形状までは掴めない)、ヘッラスは午後端で白い。北極雲は廣く大きく低緯度まで來ているように見える。Mnも同じくω=000°Wから開始、南極冠の右は暗部、ω=058°Wまで觀測。ω=039°Wではシーイングが向上、南極冠は極めて明瞭で圓い。ノアキスからアルギュレに掛けて明帶、シヌス・サバエウスはその南の暗部の境界。アウロラエ・シヌスが濃く見えてきている。午後端が可成り明るい。DPk氏はω=237°W(+239°W)、242°Wでマレ・キムメリウム全景。エリダニアが地肌で明るく、クサントゥスとスカマンデルが出ている。ヘッラスか、朝縁に地上霧か霜。アエテリアには暗斑。
12Dec(289°/290°Ls)にはMnは5:40GMT(14:40JST)から開始、ω=338°W〜046°W。この日はシーイングは良好であった。ヘッラスは午後端で明るいが黄色味、ヘッレスポントゥスの南部は濃い。ω=357°Wではシヌス・サバエウスが明確、ω=007°Wでは夕方ではヘッラスの境界が明確、朝方ではニリアクス・ラクスが少し見える。朝縁が鈍く白い。南極冠の明確さに比べ、矢張り暗色模様は冴えない。ω=017°W、ヘッラスは縁に來ているがoff-whiteである。朝縁は水蒸氣。Ts氏はω=004°W〜043°W、風平で安定。南極冠が圓く明白、浮き上がって見える。シヌス・サバエウスは好く確認出來る。北邊は大きく明るい。ヘッラスの殘滓はω=024°Wまで見えている。Km氏はω=019°W、028°W。ヘッラスが午後端で顕著。シヌス・サバエウス-シヌス・メリディアニは見える。DPk氏はω=225°W、235°W。明るいエリダニアを挾んでマレ・クロニウムが濃い。ω=233°WではB光に大陸朝端に白雲の塊が見える。13Dec(290°Ls)にはGTc氏がω=136°W(17:11GMT)で觀測。
14Dec(291°Ls)にはDPk氏はω=223°W、(227°W)228°Wで12Decと似ているが、ω=225°Wでは未だ大陸朝端の霧は強くない。R光ではケルベルスの邊りが複雜である。
15Dec(291°Ls)にはTs氏がω=325°W(6:50GMT)〜014°Wの觀測、シュルティス・マイヨルが把握出來るが、東端では淡くなる。シヌス・サバエウスも明確。アエリアあたりが明るいか。最後の觀測がTs-347Dである。FMl氏は22:22GMTからω=192°W邊り、マレ・キムメリウムが出ている由。
♂・・・・・・愈々、年も押し詰まりました。好い意味でも悪い意味でも多彩な年でしたが、2002年は佳い年と祈願しましょう。次回のレヴューは25 Jan 2002號で行いますが、16 Dec 2001 (291°Ls)〜15 Jan 2002 (310°Ls)迄の觀測を扱います。報告は三國の方へご送附下さい。では佳いお正月をお迎え下さい。
南 政 次
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