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th Report:

2003年十月後半(16 Oct31 Oct)の火星面觀測

The CMO/OAA Observations made during the fortnight period from

16 October 2003 (280°Ls) to 31 October 2003 (290°Ls)


16th Reportを参照するにはここをクリック


An OAA Mars Section article to be published in CMO #282 (10 November 2003 issue)


  (Masatsugu MINAMI, Director of the OAA Mars Section)


・・・・・・火星の季節は南半球の夏至を過ぎ(λ=280°Ls→290°Ls)、南極冠も可成り小さくなって來たが、中央緯度はφ=22°Sから24°Sと延びて、南半球が更に好く見える様になっている。視直徑δは落ちてきて、16Octδ=17.8"から月末、δ=15.1"となった。位相角は33°から38°となった。

 

・・・・・・ 報告觀測者數は往時の三分の一になったろうか、ただ、森田氏が後半復歸したほか、日本の觀測者は成績を上げ、村上(Mk)氏、熊森(Km)氏、岩崎(Iw)氏、阿久津(Ak)が頑張っている。海外では唐那・派克氏(DPk)氏が活躍を續ける。

 

AKUTSU, Tomio 阿久津 富夫 (Ak)  栃木・烏山 Tochigi, Japan

           13 Sets of CCD Images (16,~19, 24, 29, 31 October 2003)

                                   f/33×32cm spec with a Bitran BJ-41L

    

BENAVIDES, Rafael ラファエル・ベナビーデス (RBn)  科爾多瓦 Córdova, España

            2 CCD Images (23 October 2003)  24cm SCT with a ToUcam

    

BIVER, Nicolas  ニコラ・ビヴェール (NBv)  法國・凡爾賽 Versailles, France

            1 Colour Drawing (21 October 2003)  510×26cm speculum

    

HERNANDEZ, Carlos E カルロス・ヘルナンデス (CHr)  佛羅里達 Miami, FL, USA

       1 Colour Drawing (30 October 2003) 

250, 290, 340×23cm Maksutov-Cassegrain

    

IWASAKI, Tohru   (Iw)  小倉 KitaKyushu, Fukuoka, Japan

       20 Drawings (16, 18, 19, 21, 30 October 2003) 400×21cm speculum

     

KOWOLLIK, Silvia シルヴィア・コヴォッリク (SKw)薩斯圖加特Stuttgart, Deutchland

            3 CCD Images (16, 24 October 2003)

18cm Starfire Refraktor with a ToUcam Pro

     

KUMAMORI, Teruaki 熊森 照明 (Km)   Sakai, Osaka, Japan 

           31 CCD Images (16, 17#, 18,~20, 22#, 24#, 26, 27, 29#, 30# October 2003)

                     f/70, 84×20cm Dall-Kirkham & f/30, 40×60cm Cass# with a ToUcam

                                                  #ソフィア堺天文臺 Sakai City Observatory

  

LAU, Patrick   (PLa)  香港 Hong-Kong

            1 Drawing (20 October 2003)  200, 240, 300×25cm Dobsonian

     

MELILLO, Frank J  フランク・メリッロ (FMl)  紐約 Holtsville, NY, USA

           4 Red CCD Images (21, 25, 31 October 2003) 

                              20cm SCT with a Starlight Xpress MX5

    

MINAMI, Masatsugu 南 政 (Mn)  福井 Fukui, Fukui, Japan

           76 Drawings (16, ~20, 22, 24, 26, 27, 30 October 2003)

                              480, 400×20cm F/12 ED Goto refractor

           福井市自然史博物館屋上天文臺 Fukui City Observatory, Fukui

    

MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo)  廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan

            1 Set of CCD Images (25 October 2003)

 f/50×25cm spec equipped with an ST-5C

    

MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)   横濱 Yokohama, Kanagawa, Japan

      47 Drawings (16, 19, 20, 24, 27, 29, 30 October 2003)

320, 400×20cm speculum

    

NAKAJIMA, Takashi   (Nj)  福井 Fukui, Fukui, Japan

           12 Drawings (22, 25, 26, 27 October 2003) 

480, 400×20cm F/12 ED Goto refractor

                            福井市自然史博物館屋上天文臺 Fukui City Observatory, Fukui

    

NARITA, Hiroshi   (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan

           26 Drawings (16, 19, 20, 24, 26, 27, 29, 30 October 2003) 400×20cm refractor

    

PARKER, Donald C ドン・パーカー (DPk)  佛羅里達 Miami, FL, USA

           20 Sets of CCD Images (16, 18/19, 21, 23, 28 October 2003)

                     f/55, 59×41cm F/6 spec equipped with an ST-9XE or ToUcam

    

PARKER, Timothy J ティム・パーカー (TPk) 加利福尼亞 LA, CA, USA

            3 CCD Images (18 October 2003)  15cm Jägers Achromat with a ToUcam

    

PEACH, Damian A デミアン・ピーチ (DPc)  Buckinghamshire, England

           10 Sets of CCD Images (16, 17, 18, 20, 23, 24, 27 October 2003) 

                               f/31×28cm SCT with a ToUcam

  

PELLIER, Christophe クリストフ・ペリエ (CPl)  法國 Bruz, Ille-et-Vilaine, France

            9 Sets of CCD Images (17, 22, 27 October 2003)

                              18cm spec with a modified B&W ToUcam Pro

    

ROEL SCHREURS, Eric エリック・ロエル (ERl)  墨西哥 Mexico

            1 CCD Image (30 October 2003) 

 f/50×25cm TEC Mak/MX70 with a ToUcam

     

SIEGEL, Elisabeth エリサベト・シーゲル (ESg)  丹麥 Malling, Danmark

            5 Drawings (18, 20, 22, 24, 26 October 2003) 

270×20cm F/10 SCT

    

TEICHERT, Gérard ジェラール・タイシェルト (GTc) 法國 Hattstatt, France

            3 Drawings (17, 25, 27 October 2003)  330×28cm SCT

  

VALIMBERTI, Maurice P モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) 墨爾本 Melbourne, Australia

            4 CCD Images (17, 22, 29 October 2003)

 f/34×35cm SCT with a ToUcam Pro

  

Van Der VELDEN, Erwin アーウィン・ヴァン・デア・ヴェルデン(EVl)

                             澳大利亞 Brisbane, Australia

            3 CCD Images (19, 22 October 2003)

f/31×20cm SCT with a Vesta Pro modified

    

WARELL, Johan  ヨハン・ヴァレッル (JWr)  亞利桑那 Tcuson, AZ, USA

       1 Drawing (25 October 2003)  260×25cm SCT (LX200)

            9 Sets of CCD Images (17, ~21, 23, 25, 31 October 2003)

                                       f/24×25cm SCT with a ToUcam

   

WILLIAMSON, Thomas E  トマス・ウィリアムソン (TWs)  Alburquerque, NM, USA

            1 Set of CCD Images (23 October 2003)

 f/50×20cm spec with a Philips ToUcam

 

 

・・・・・・この二週間  日本からは朝方のソリス・ラクスから夕方のマレ・キムメリウムまで觀測出來たが、ヨーロッパではマレ・シレヌムからアウロラエ・シヌス邊りまで、アメリカでは朝方のシュルティス・マイヨルからマレ・シレヌム邊りまで觀測可能であった。

 

  筆者の16Oct(λ=281°Ls)~20Oct(λ=283°Ls)の觀測から この數日は特別にシーイングが好かったわけではないが(寧ろ22Octがいい)、幾つか特徴的なことを觀測出來たと思う。この期間ソリス・ラクスの朝方からヘッラスの夕没までの範囲であるが、ワイン色領域を除いて朝霧が強く、全體に浮遊ダストが少なくなってきている印象である。17Oct(λ=281°Ls)ω=357°Wでは夕端が黄色っぽい他は、北の沙漠は赤味を出しているし(16Octに村上(Mk)氏の指摘がある)、中央から朝方の南半球の暗部は濃いワインをしている。縁の朝霧は一部を除いて強く、朝のソリス・ラクスもなかなか明確にならない。もう一つの特徴は夏至後の南極冠周りの高緯度で朝方に属すところが、褪せて來ていて、フロストの様に見えたり、然程白くはなかったり、明るいワイン色に見えたり、色は淺いながら變化していた。夕方の様に強くはないが、ダスティと思われることもあった。模様では、ボスポロス・ゲムマトゥスが朝霧を避けて濃いワイン色で(ここからアオニウス・シヌスに掛けて濃度は面上最高になる)、マレ・オケアニドゥムも濃化している。視直徑δは未だ17.5秒もあり、17Oct(λ=281°Ls)ω=062°Wなどではイウエンタエ・フォンス等も捉えられ、19Oct(λ=282°Ls)ω=357W007°Wでは、ノウゥス・モンスの消え去った跡が形好く明白に見えた。また、ω=016°Wでは、南極冠からノアキスに向かって吹き出しが出ているようである。南極冠は19Oct(λ=282°Ls)ω=357°Wでは相當歪に見えたが、詳細は分からない。20Oct(λ=283°Ls)からヘッラスが夕方より見えるようになったが、縁では白く明るく、西北部の明るさは目立つが全體鈍い。西北部は定常的に赤味を帯びるか、クリーム色で、その後月末まで同じように見えた。なお、この時期、マレ・アキダリウムがこちらを向いていたこともあり、北極雲の強さが目に附いた。

 

 アマゾニスの朝霧#14から前回(#16)までアマゾニスでのキャノン・劉(CLa)現象を見てきたが、引き續き、パーカー(DPk)氏が逐っている。28 Oct (λ=288°Ls) ω=143°W151°Wには依然少し殘っていて、特に01:17GMT(ω=152°W)B像には朝霧の取れた部分が未だ可成り明確である。01:56(ω=161°W)ではこれは南中している。この日ι37°であるから朝縁から53°、從って3時間半ほど經っている。後續のアマゾニスの朝霧は顕著で、16 Oct (λ=281°Ls) ω=159°Wのピーチ(DPc)氏のB像、17 Oct (λ=281°Ls)のペリエ(CPl)氏のω=159°WDPc氏のω=167°WB像には朝方に強く出ている。朝霧は可成り中に入っても残るようで、DPk氏の23Oct(λ=285°Ls)の像を見ると、B00:35GMT(ω=189°W)から01:24(ω=201°W)の連續像にはCMまで殘っている。早い方では22 Oct (λ=285°Ls) ω=111/112°WB像で朝方に強く出ている(この像は岡野氏がCPl氏に送ったフジのフィルターSP-4を使っている)

 

 ヘッラスの朝霧:朝霧は北半球だけでなく、南半球でも顕著で例えばヘッラスの朝霧は目立つ:DPk氏の16Oct(λ=280°Ls) ω=264°W~278°W參照。他に北半球低緯度のシュルティス・マイヨルからリビュアに掛けても朝霧が出ていて、分布が複雜である。同じく18/19Oct (λ=281°Ls)DPk氏のω=228°W232°W241°W246°W249°WB光連續像に描冩がある。21Oct (λ=284°Ls) ω=269°W290°Wのヴァレッル(JWr)氏の像も參照。26 Oct (λ=287°Ls) ω=259°W の筆者の觀測では、ヘッラスを含んで南半球の朝方は大きく白っぽい。ウィリアムソン(TWs)氏の23 Oct (λ=285°Ls) ω=213°Wはまだ角度が淺いが既に朝霧が目立つ。熊森(Km)氏の29 Oct (λ=289°Ls) ω=250°W30 Oct (λ=289°Ls) ω=239°W249°W289°W307°W324°Wの追跡をDPk氏の像と比較すると異同のあることが判る。村上(Mk)氏はω=251°Wで大きく縁を覆う朝霧の凸凹を記述している他、ω=260°Wでは白い明るさと指摘している。朝霧に弱い岩崎(Iw)氏もω=275°Wでシュルティス・マイヨルの後方に遺る朝霧を認めた。阿久津(Ak)氏の31 Oct (λ=290°Ls) ω=256°W262°WB像も好い描冩である。Km氏の像は必ずしもB光ではないが、彼の30 Octの一部とDPk氏の18/19 Oct像を比較する。

 

 ソリス・ラクスの朝霧  ソリス・ラクスが朝方すっぽり朝霧に包まれているのは、アオニウス・シヌス等と違う點である(次項參照)Km氏の17 Oct (λ=281°Ls) ω=055°W19 Oct (λ=283°Ls) ω=053°Wに好く顕れている。ω=068°Wでは出ているようである。ピーチ(DPk)氏の27 Oct (λ=287°Ls) ω=059°Wも同じ様な角度である。同日のCPl氏のω=070°Wの像では、まだソリス・ラクス全體にそこはかとなく霧が掛かっている。シーゲル(ESg)さんは26 Oct (λ=287°Ls) ω=066°Wのスケッチではソリス・ラクスの西半分が霧の下、東半分が外に出ている。

 

 ワイン色の領域  ソリス・ラクスより東のボスポロス・ゲムマトゥスを含む暗色模様が朝霧から飛び出して濃いワイン色に見える點については、16 Oct (λ=281°Ls)Km氏のω=055°W076°LsAk氏のω=072°W084°W17 Oct (λ=281°Ls)ヴァリンベルティ(MVl)氏のω=026°W078°WKm氏のω=048°W055°W060°WAk氏のω=069°W18Oct(λ=282°Ls)Km氏のω=055°W073°Wなどに出ている。17Octの像ではどれもマレ・オケアニドゥムのワインカラーが顕著である。19 Oct (λ=283°Ls)のヴァン・デア・ヴェルデン(EVl)氏のω=008°W030°Wには朝霧の空き具合の他、ノアキス以西の暗部の色も暗示する。Km氏の22 Oct (λ=184°Ls) ω=314°Wではこれがマレ・アウストラレに續いていることを示す。筆者の觀測では26 Oct (λ=287°Ls) ω=247°W邊りでノアキスがワインカラーに好く見えていた。尚、Ak氏の16Octω=072°WRIR像ではマレ・オケアニドゥムの邊りの地表模様が興味深い顕れ方をしている。

 

  南極冠の周り:既に述べたようにMk氏も16 Oct (λ=281°Ls) ω=059°W~081°W前後で、南極冠外側の朝方が白く褪せている様子を描冩している。19 Octでも同じ指摘。24Oct (λ=286°Ls) ω=069°W078°Wのコヴォッリク(SKw)さんの像にはこれが好く顕れていると思う。砂塵混じりの白霧が出ているかも知れない。27 Oct (λ=288°Ls)CPl氏のω=070°W082°Wにも同じ様なボケが見られ、ダストが舞っているように思われる。

16OctAkの像などを見ると、未だ南極冠からの吹き出しがあるのかも知れない。筆者の19Octに見た南極冠からの吹き出しは、EVl氏の同日の19Oct (λ=283°Ls)ω=008°W030°Wに出ているものの様である。26Oct(λ=287°Ls)の筆者の觀測ではω=279°W前後に、南極冠の周りの高緯度がぐるりと全体に淡いワイン色という記述がある。

 

  南極冠の分裂:ヒュッペルノティウス・モンスが孤立し始める時期である。DPk氏の16 Oct (λ=280°Ls) ω=264°W~278°Wでは、南極冠が左手前戸向こう側に分裂し始めていることを示している。左手前が、ヒュッペルノティウス・モンスを含む明るい 部分である。DPc氏の23 Oct (λ=285°Ls) ω=101°W109°Wでは縦に割れている。右側がヒュッペルノティウス・モンスとして遺るところである。尚、1894年の7 Oct (λ=296°Ls)E Eバーナードのスケッチにはソリス・ラクスの方から二つ玉とし て描かれている。視直徑δ21秒ほどあったはずである(圖參照)

 Iw氏は30 Oct (λ=289°Ls) ω=285°Wに内部構造を認めているが、右側が明るいとしていて逆である。2005年はλ=280°Lsは未だ最接近前で九月はじめ、視直徑δ14秒台であるが、バーナードの季節は九月末、視直徑δ17秒を越えている。この期間注意して追うとよい。

 

 マレ・セルペンティスの様子七月初めのデウカリオニス・レギオ西端での黄塵の擾亂によって濃化擴大したマレ・セルペンティスはまだ擴大状態を続けていて、森田(Mo)氏は25 Octω=328°Wで撮った。この角度は、DPk氏やCPl氏など の以前の角度と對比できるもので、重要な角度である。岩崎(Iw)氏は前半この邊りを觀察しているが、思いこみが激しくて、依然正確な様相が捉えられない。右図はMo氏の15Aug22Sept25Oct (今回)の比較圖である。

 

 消 息24Octの像を最後として、SKwさんは今期の觀測を締め括った。この像は南極冠の周りの描冩の他、テンペ邊りの北極雲を好く描冩している。SKw12 June (λ=202°Ls)から始め、同じスタイルで觀測日數は四十五日、像の多いときは一夜に20分ごとに十點というときもあり(動畫が可能である)172點に及んだ(前半143點、後半29)。ご苦労様でした。

Mo氏は赤道儀の故障で一ヶ月許り休んだが、復歸したのは幸いである。ただ、まだ本調子ではないと思う。

Km氏は、勤務先の60cmカスで觀測したあと、自宅に戻って20cmで續けて撮像しているときがある。その間、ほぼ二時間ほど跳ぶが有り難い。

Mk氏は今回大活躍で、16Octには8:30GMtから13:20GMTまで八枚、30Octには8:00GMTから12:00GMtまで七枚であるが、この日は13:30GMTまであと二回觀測したようである(シーイング悪化で登録から外した)。福井では30Octの場合7:20GMTから12:40GMTであった。福井は横濱より日の入りも遅いが、赤道儀だから導入が速い所爲であろう。


♂・・・・・・次回は1 November (λ=290°Ls) から15 November 2003 (λ=299°Ls, δ=12.9")迄の半月間をレヴューする。


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