8th
Report: The CMO/OAA Observations made during the
period from
16 May 2003 (186°Ls)
to
An OAA Mars Section article
to be published in CMO #273 (
南 政 次 (Masatsugu MINAMI, Director of the OAA Mars Section)
♂・・・・・火星の高度は依然低いが、四月に比べ、高くなって來ている。五月半ば、視赤緯は南緯19°であったが、六月15日には南緯15°に回復した。八月の最接近時の高度に近い。今回は次の期間の觀測を概觀する:
16 May 2003 at λ=186°Ls to
季節は五月中旬南半球の春分直後で、2001年に大黄雲が發生した時期に當たり、六月中旬の時期はヴァイキングで最初の黄雲が觀測された季節である。從って、黄雲の季節に入ったわけである。今回、この間、視直徑 δ は10.7秒角から14.2秒角に伸びた。中央緯度 φ は19°Sから21°Sと深くなっている。位相角ιは43°から41°に減じたが、未だ闕けはキツイ。
尚、沖縄は五月14日の入梅であった(2002年は8日)が、九州は六月9日、近畿、関東は10日、北陸は12日に梅雨入りとなった。
♂・・・・・この期間、報告者は下記の通り三十四名に及んだ。グラフトン(EGf)氏などが參入し、熊森(Km)氏やラザロッティ(PLz)氏などが聯續觀測に入っている。
AKUTSU,
Tomio 阿久津 富夫 (Ak) 栃木・烏山 Tochigi, Japan
13 Sets of CCD Images (24, 28 May ; 2, 5,
f/32×32cm speculum with a Bitran BJ-41L
ASADA, Tadashi
淺 田
正 (As) 福岡・宗像 Munakata, Fukuoka, Japan
2 CCD Images (
BALDONI, Paolo パオロ・バルドーニ (PBl) 義大利
Genova, Italia
1 Set of CCD images (
BATES, Donald R ドン・ベーツ (DBt) コ克薩斯 Houston, TX, USA
2 CCD Images (24,
BEISH, Jeffrey D ジェフ・ビーシュ(JBs) 佛羅里達 Lake Placid, FL, USA
34 Drawings (16,〜22, 24,〜27,
29,〜31 May; 2, 3, 5,〜8,
10,〜15 June 2003)
440, 570, 650, 870×41cm F/6.9 speculum
BIVER, Nicolas ニコラ・ビヴェール (NBv) 凡爾賽
Versailles, Yvelines, France
8 Colour Drawings (23, 29, 30 May ; 6, 7, 9, 12,
FRASSATI, Mario マリオ・フラッサチ (MFr) 義大利
Crescentino, Italia
2 Sets of Drawings (7,
GRAFTON, Edward A エド・グラフトン (EGf)
コ克薩斯 Houston, TX, USA
5 Sets of CCD Images (31 May ; 1, 3, 9, 15 June ) f/27×35cm Celestron with an ST5
HERNANDEZ, Carlos E カルロス・ヘルナンデス (CHr)
佛羅里達 Miami, FL, USA
1 Drawing (
HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk) 長野・上伊那 Minowa, Nagano, Japan
5 Drawings (1, 5, 6,
ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id) 那覇 Naha, Okinawa, Japan
10 Drawings (19, 20, 21, 26, 31 May ; 4, 5 June 2003)
290, 400, 530×31cm speculum
ISHIBASHI, Tsutomu
石 橋
力 (Is) 相模原
Sagamihara, Kanagawa, Japan
4 B&W and Colour Photos (9 May ;
31cm F/6.4 speculum; FCP400F, NP400P,
HIE &TP
KOWOLLIK, Silvia シルヴィ・コヴォッリク(SKw)
薩斯圖加特
Stuttgart, Deutchland
1 CCD Image (
KUMAMORI, Teruaki 熊森 照明 (Km) 堺
Sakai, Osaka, Japan
11 CCD Images (17, 21, 23 May ; 1, 2, 4, 5, 7, 8,
f/28, 47×20cm Dall-Kirkham with a Philips ToUcam Pro
LAZZAROTTI, Paolo R パオロ・ラッザロッティ(PLz)
トスカーナMassa,Toscana,
Italia
16 Sets of CCD Images (17, 24, 25, 31 May ; 1, 4, 5, 7, ~
18cm Maksutov-Cassegrain with
an Astromeccanica KC381
MELILLO, Frank
J フランク・メリッロ (FMl)
紐約 Holtsville, NY, USA
2 Red CCD Images (18 May ;
20cm SCT with a Starlight
Xpress MX5
59 Drawings (20, 21, 22, 23, 27, 28, 29 May ; 1, 2, 5, 6,
400, 480, 600×20cm
ED refractor*
MOORE, David M デイヴィッド・ムーア (DMr)
亞利桑那 Phœnix, AZ, USA
11 Sets of CCD Images (16, 24, 30, 31 May ; 4, 5, 6, 10, 11, 14,
f/35×25cm speculum with an HX-5 or a Philips ToUcam Pro
MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo) 廿日市
Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan
26 Sets of CCD Images (17, 20, 23, 28 May ; 1, 2, 3, 5,
f/50×25cm speculum equipped with an ST-5C
MURAKAMI, Masami
村上 昌己 (Mk) 横濱 Yokohama, Kanagawa, Japan
10 Drawings (2, 7,
NAKAJIMA, Takashi
中 島
孝 (Nj) 福井
Fukui, Fukui, Japan
8 Drawings (17, 23 May 2003) 400×20cm ED Goto refractor*
NARITA, Hiroshi
成 田
廣 (Nr) 川崎
Kawasaki, Kanagawa, Japan
9 Drawings (21, 28 May ; 1, 2, 3,
NG, Eric 呉 偉 堅 (ENg) 香港 Hong
Kong
9 CCD Images (22, 26, 29, 30, 31 May ; 1, 2,
f/35×25cm Royce speculum with
a Philips ToUcam Pro
PACE, Ben ベン・ペース(BPc) 達爾文 Darwin, Australia
2 CCD Images
(7,
PARKER, Donald C ドン・パーカー (DPk)
佛羅里達 Miami, FL, USA
27 Sets of CCD Images (20, 30 May ; 1, 5, 11,
f/55×41cm F/6
Newtonian equipped with an ST-9XE
PAU, K C 鮑
國 全 (KPa) 香港 Hong Kong
6 CCD Images (21, 22 May ; 1,
21cm spec (CN212) with a ToUcam Pro
PELLIER, Christophe クリストフ・ペリエ (CPl)
法國
Bruz, Ille-et-Vilaine, France
14 Sets of CCD Images (26, 27, 28, 29, 31 May ; 5, 6,
18cm Newtonian with a Philips ToUcam Pro
SEIP, Stefan ステファン・ザイプ(SSp) 薩斯圖加特 Stuttgart, Deutchland
3 CCD Images (7,
TAN, Wei-Leong 陳 韋 龍 (WTn) 新加坡
Singapore
3 Sets of CCD Images (24 May ;
f/27×25cm
Meulon with a Philips ToUcam Pro
TEICHERT, Gérard ジェラール・タイシェルト (GTc) 法
Hattstatt, France
3 Drawings (8, 12,
Van Der VELDEN, Erwin アーウィン・ヴァン・デア・ヴェルデン(EVl)
澳大利亞 Brisbane, Australia
3 CCD Images (18 May ; 12,
VALIMBERTI, Maurice P モーリス・ヴァリムベルティ(MVl)
墨爾本 Melbourne, Australia
10 CCD Images (22, 23, 24,
WARELL, Johan ヨハン・ヴァレッル (JWr) 亞利桑那 Tcuson, AZ, USA
2 Drawings (14,
ZANOTTI, Ferruccio フェッルッチオ・ザノッティ(FZt) フェッララFerrara, Italia
7 Sets of CCD Images (16, 25 May ; 5, 8, 13,
23cm SCT or 40cm spec with
a Philips ToUcam Pro
*福井市自然史博物館屋上天文臺
♂・・・・・南極冠とその周邊: 南極冠の内部には五月初め(φ=17°S邊り)、春分(λ=180°Ls)前後から翳りが見え始めていたが、19 May (λ=188°Ls)邊りから(例えばId氏のω=127°Wなど)、翳りの詳細が捉えられる様になった。DPk氏の20
May (λ=188°Ls)の像ω=310°W〜320°Wではリマ・アウストラリスが見え、ノウュス・モンスが内部に確認できるようである。Mnは23 May (λ=190°Ls) ω=041°W前後で、後にモンス・アルゲンテウスと同定されるが、一際輝く突起の夕方の南極冠周邊部に出かかっていることをチェックしている。同日23 May (λ=190°Ls)のω=063°W〜078°WのVMl氏の南極冠には凹みと共に後方の周邊のギザギザが描冩されている。モンス・アルゲンテウスの趨りはPLz氏の10 June (λ=200°Ls)ω=020°Wで見えていると思われる。27 May (λ=192°Ls)邊りからは、南極冠の周邊部が内側より明るく際立つようになり、水の氷に依っていることを示している。同時に南極冠を取り巻く暗帶は太く濃くなり、20 May (λ=188°Ls)の先のDPk氏のccd像には特にノアキスの南で顕著である。六月上旬の日本からのヘッラス正面での觀察では、ヘッラス南方ではフリンジは細くなっている。EVl氏の15
June (λ=204°Ls) ω=211°Wの像では、更に東のアウソニア南方では暗帶は太く濃い。尚、PLz氏の10 June (λ=200°Ls)から13 June までの像では、ノアキス南方の同じ暗帶の外にやや淡い帯が出来ている。南極冠の凹みについては處理の仕方に依るが、26 May (λ=192°Ls) ω=077°WのENg氏の像ほかでも明確。福井では5 June (λ=198°Ls)、6
June 邊りで、構造は顕著・複雜であった。Mnの5 June ω=286°Wでは陰翳は黄土色であったが、既に2 June にはENg氏の像の陰翳は黄土色である。一回りしてのアメリカの方からも然りで、1 June (λ=195°Ls) ω=222°WのEGf氏の南極冠の陰翳が褐色系統であることは明確で、また、縁のΩ=250°W邊りにギザギザが強く現れている。5 June (λ=198°Ls)ω=163°W〜170°WのDPk氏の南極冠内の描冩も優れていて、多分周邊部にテュレス・モンスの趨りが見えている。6 June (λ=198°Ls)のDMr氏のω=189°Wには南極冠周邊部の擴大像がある。
黄 雲:黄雲の季節に入っているが、この期間、全体に亙り顕著な巨視的な黄塵、黄雲は見られていない。然し、局所的な黄塵が觀測された。21 May (λ=189°Ls)にMnがω=080°W、090°W、100°W、109°Wにおいて、またKm氏(20cmドール・カーカム)がω=094°Wにおいてソリス・ラクスの後方、シュリア・プラヌムに小さいが明るい黄塵が立っていることを検出した。これは22 May 03:37GMTに和文で通知し、24h前後には香港や澳大利亞などに觀測依頼を出した。パーカー氏他から返事が来ている。後、2 June にMGSの像が発表された:
http://www.msss.com/mars_images/moc/2003/06/02/
この黄塵は發展が無く、22 May (λ=189°Ls)には、MVl氏がω=076°Wで、KPa氏がω=096°Wで、ENg氏がω=110°Wで、福井ではMnがω=080°W、090°W、100°Wなどで觀測したが、再生は弱く(23 May にはMnがNj氏と觀測)、24
May までに衰退したことが、その後のVMl、KPa、Km、WTn、Mo氏などの像により明らかである。一方、29 May (λ=194°Ls)になって、VMl氏がω=009°Wにおいてエオス・カスマ邊りの亀裂に充満した黄雲が細く出ていることを検出した。ENg氏の同日ω=045°Wにも出ていると思われる。然し、その後数日ENg氏の像があるが確認できない。
マレ・エリュトゥラエウム:漸く視直徑が大きくなり暗色模様の變化が窺えるようになったが、 15 May (λ=185°Ls) ω=010°W〜018°WのDPk氏の像によると、マレ・エリュトゥラエウムの東側と北側が弱くなり、マルガリティフェル・シヌスとの間が空いて見える。2001年の黄雲のfalloutによると思われる。月末には日本からも視野に入った。28 May (λ=193°Ls)のAk氏のω=011°W、021°W、Mo氏のω=012°W〜032°Wの畫像參照。ENg氏の2 June (λ=196°Ls) ω=000°Wにはこの他アルギュレが相當に目立って出ている。
ソリス・ラクス周邊: ソリス・ラクス邊りの最初の印象的なR光描冩はPLz氏の4 June (λ=197°Ls) ω=077°Wである。パシスその他、ポエニキス・ラクス邊り、更には西のネクタルの西端に出来た明るい"お堀"(英語ではbaseとする)が見えている。勿論DPk氏の13 June (λ=202°Ls)ω=075°W〜083°Wではこれらは完璧に捉えられている他、EGf氏の15 June (λ=204°Ls)ω=089°Wの像も(ひどく強調されているが)優れて暗示的である。前號で報告したDPk氏の10 May の像に見られたアラクセスは11 June (λ=201°Ls) ω=103°W〜106°Wで更に明確になっている。
タルシスの白雲:オリュムプス・モンスのλ=180°Ls頃までに活動を休止することはSMITH-SMITH以來よく知られたことであるが(CMO#134參照、ちょうど十年前、TYA參照)、1988年や1990年の経験からアルシア・モンスなどは更に活動を続けることも知られている。但し、黄雲が發生すると山岳雲は消えてしまう。2001年の場合の經驗では、λ=180°Ls台で黄雲が發生したため、流石のアルシア雲もλ=180°Ls台で消えてしまった。從って、アルシア雲はこの時期の氣象の指標になるが、今回は正常に觀測されている。タルシス雲の際立った活動は前回に述べてあるが、今回も極東から17 May (λ=186°Ls)にMo氏のω=127°W、Km氏のω=130°W、18 May (λ=187°Ls)のオセアニアEVl氏のω=131°Wに夕端のアルシア白雲が見えている。Id氏は眼視で19 May (λ=188°Ls) ω=127°W、20 May (λ=189°Ls) ω=124°Wで詳しく検出した。25 May (λ=191°Ls)にはPLz氏のω=155°WのB像に出ているほか、28 May (λ=193°Ls)にはCPl氏がω=153°W、31 May (λ=195°Ls)ω=130°WなどのB光(まだW38A)で捉えている。また、フランスのNBv氏が眼視で29 May (λ=193°Ls) ω=141°Wで検出している。特筆すべきはDPk氏の5 June (λ=198°Ls、δ=12.9")のω=163°W〜170°Wの像で、夕端のアルシア・モンスには雲が掛かっているが、オリュムプス・モンスは快晴で、然し明るく見えている様子が明白である。EGf氏の9 June (λ=200°Ls)ω=138°Wにも同様に明白である。アルシア・モンス、パウォニス・モンス邊りの白雲の擴がりも明確であるから、緯度・高度の究明に役立つ。10 June (λ=201°Ls)のDMr氏のω=144°WのB光にも好く出ている。13 June (λ=202°Ls) ω=080°W邊りのDPk氏のB光では、タルシスに漂う白雲は可成り早くから出ているのが分かる。15 June (λ=204°Ls) ω=083°WのEGf氏のB光も參照。尚、SMITH-SMITHの古典的な論文はIcarus 16 (1972) 509、最近のMGSによる結果はJ L BENSON et al, Icarus
165 (2003) 34を見られたい。この現象は、1988年、1990年の結果との比較のみならず、1894年などのバーナードやローヱルの觀測との比較でも重要である。
エリュシウム:DPk氏の30 May (λ=194°Ls) ω=215°Wではエリュシウムの内部にスジが見える。EGf氏の3 June (λ=196°Ls)ω=204°Wではエリュシウムが地肌で明るく、スジも明確。EGf氏のは過剰処理に属するが、こういう點ではハッキリさせる。
アエテリアの暗斑:アエテリアの暗斑は2001大黄雲後に見られた新しい形をしているらしく、模様として著しく明確で濃い。DPk氏の30 May (λ=194°Ls)ω=229°Wでは暗斑の西側に沿う部分が短冊状に明るい。
シュルティス・マイヨルの夕靄:20 May (λ=188°Ls)のDPk氏のω=310°W〜325°W邊りのB像には夕端のシュルティス・マイヨルに掛かる夕靄を捉えている。眼視ではMk氏が2
June (λ=196°Ls) ω=320°Wで夕靄で淡くなる細いシュルティス・マイヨルとその後方(アエリア)に染み出す明るい靄を認めている。
ヘッラス:ヘッラスが大黄雲の發祥地であるというのは傳説で、ヘッラスは低地で氣壓が高いから大きいものは發展しないし洩れ出すことは殆ど無い。然し、地底が大きく他の明部と違っていると思われ、大氣の擾亂もあるから、觀測の指標となる。この時期、ヘッラスは然程の變化を示していないが、我が國からは、六月上旬ヘッラスの西南端に短冊状の明部が見えていた(2001年にも黄雲前に觀測されている)。5
June (λ=197°Ls)、Mo氏のω=301°W〜306°W、Km氏のω=304°Wに明白で、Ak氏の像にも窺える。7 June (λ=199°Ls)にはMo氏のω=273°W〜291°W、Km氏のω=283°W、As氏(宗像市)のω=286°Wなども同じである。福井でも5 June 以降視野に入り、この短冊は見えており、ヘッラスの先行部分は夕方になっても暗い方である。5 June のMnはω=266°W、276°W、286°W、296°W、305°W、315°W、325°W、6 June (λ=198°Ls)はω=277°W、286°W、296°W、のち曇り、8 June (λ=200°Ls)はω=(228°W、238°W、248°W)、257°W、267°W、277°W、286°W(19:50GMT)。SWの短冊は南部の方が明るい。この短冊明帶はこれより前、DPk氏の20 May (λ=188°Ls)ω=310°Wにも既に出ている。
ヤオニス・フレトゥムとマレ・セルペンティス:上の5 June の諸觀測では、ヘッラスの南西部の短冊明部に接するヤオニス・フレトゥムの南部延長部は南極冠のフリンジと一緒に濃く見えるが、ヤオニス・フレトゥム自身は淡い。マレ・セルペンティスは濃い斑点からなり、シヌス・サバエウスとは切れているように見える(1986年型か)。ヤオニス・レギオはやや明るい。これらはWTn氏の8 June (λ=200°Ls) ω=324°Wの像に明らか。
エリダニア/エレクトリス:PLz氏の24 May (λ=190°Ls) ω=186°W、CPl氏の26 May (λ=192°Ls)ω=180°Wでは朝方のエリダニアが明るい。EGf氏の3 June (λ=196°Ls) ω=167°W、DPk氏の5 June (λ=197°Ls) ω=163°W〜170°Wでは、エリダニア・エレクトリスの地肌が明るい事が判る。但し朝縁には白い靄が出ている。
北アウソニアとマレ・ハドリアクム:LPz氏の17 May (λ=186°Ls)ω=253°Wでは小さい像ながら、トリナクリア(北アウソニア)が淡化していることと、マレ・ハドリアクムが矢張り淡く顕著でない事が出ている。この爲、ヘッラスの東の境界は西に比べて少し曖昧に見える。トリナクリアの淡化はアメリカ側に移って、未だ角度が浅いが、EGf氏の31 May (λ=195°Ls) ω=230°W、1 June (λ=195°Ls) ω=222°Wの像で可成りハッキリする。Km氏の11 June (λ=201°Ls) ω=245°Wでも出ている。マレ・ハドリアクムとトリナクリアの淡化は1988年と著しく異なる點である。この新展開は2001年の大黄雲による暗色模様の"荒廃"の結果と思われる。
北 極 雲:中央緯度φが19°Sから21°Sであるから、北端の觀測は易しくないが、眼視では北極雲の存在が確認される。ただ、ccd像では、ιが大きい爲か火星像西端の描冩が悪く、北端も餘り信用がならない。ただ、DPk氏の20 May (λ=188°Ls) ω=310°W〜325°Wの像では、イスメニウス・ラクスの北まで北極雲が張り出していることなどは確かである。55°N邊りが境界か。24 May (λ=191°Ls) ω=032°WのMVl氏の像では北極雲がマレ・アキダリウムの北半分をくっきり覆っている様子を好く描冩している。アキッリス・ポンスより北で、矢張り55°N以北であろうか。ENg氏の30 May (λ=193°Ls)ω=025°Wも似ている。マレ・アキダリウムが朝方にある時の北極雲の偏りは興味があるが、28 May (λ=192°Ls)のAk氏のω=011°Wなどがそれであろうか。2 June (λ=196°Ls)のENg氏のω=000°Wではその偏りが描冩されている。12 June (λ=202°Ls)のPLz氏のω=359°WのB光も好い。眼視ではNBv氏の12 June (λ=202°Ls)ω=002°Wのスケッチには明白である。なお、DPk氏の5 June (λ=198°Ls) ω=163°W〜170°Wの像ではプロポンティスIがくっきり描冩され、その北まで北極雲が張り出しているから、境界は50°N〜55°N。ソリス・ラクスが見えているときの北極雲像はDMr氏の15 June (λ=204°Ls)ω=104°Wを参照されたい。
良 像: 好く検討したわけではないが、期間中印象深い畫像を一枚ずつ上げれば、VMl氏の24
May ω=032°W、ENg氏の2
June ω=000°W、DPk氏は強いて挙げれば、5 June のω=163°W、PLz氏の8
June ω=040°W (δ=13.3")などである。
♂・・・・・追 悼:CMOにも報告を寄せられ、交信のあったTom CAVE氏が4 June に亡くなったのは突然で殘念であった。CAVE氏は1923年生まれであったから、1924年以来の大接近を前にしてご本人も殘念であったろうと思う。CMO-Webでは速報した。ご冥福をお祈りする。尚、CAVE氏についてはCMO#198 (25 Dec 1997)で紹介している。またTom DOBBINS氏が
http://skyandtelescope.com/news/article_974_1.asp
で追悼記事を書いている。
♂・・・・・・次回は16
June (λ=204°Ls) から30
June 2003 (λ=213°Ls、δ=16.5")
迄をレヴユーする。
筆者は23
Juneから觀測のため沖縄へ移る。
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