Flux Emerging Workshop @ St Andrews, Scotland 出席日記 2007年6月11日ー17日 6月10日(日) 前日の天文教育普及研究会での講演があまりうまく できかなかったので、心残りでの出張。 前日、夜10時ー2時と4時間ほど寝たせいか、 結局、サイエンスに投稿はできなかったし、ペルージャのホテルも 予約できず、ほとんど仕事は進まないうちに海外出張に突入。 年のせいか。踏ん張りが利かなくなってきた。 朝8時過ぎに家を出て関空へ。天王寺で特急はるかに乗った おかげで、11時50分発のパリ行便にぎりぎりセーフ。 (結構、混んでたため) 飛行機の中では、大山論文を読んだほかは、たいしたことは できず。これも年のせいか?  パリで1泊。 6月11日(月) パリからエジンバラは、小さな飛行機。2時間ほど。 エンジンバラーHaymarket はバス。 Haymarket-Luchart は電車。10ポンド。1ポンド=約240円とべらぼーに高い。 電車からの眺めは壮観。英国特有のなだらかなヒルが芝生で覆われて 美しい。しかも海岸もある。 途中、アシカかオットセイが岩の上にいたのは もっと驚いた。 Luchart-StAndrews はバス。 Mathematical Institute に行こうとするが、間違って Department of Chemistry の建物に入ってしまう。 でも、宿泊予定の New Hall はすぐに見つかる。 しばらく部屋で休んだのち、夕方7時からのレセプションへ。 色んな人に出会う。なつかしい顔をいっぱい見ると 元気が出てくる。Archontis, Hood, Hughes, Longcope, Kliem, Hansteen, Pariat, Manchester, Galsgaard, Cheung, Tripathi, ,,, Priest さん、Schmieder さんも後半到着し、 盛り上がる。日本人若手組(磯部、真柄、横山)は まだ来ていない。 その後、Archontis, Schmieder, Longcope, van der Holst の諸氏とインド料理屋へ。 6月12日(火) 今日からFlux Emergence workshop. Invitation only の小さなワークショップ。 参加者は40人くらい。講演は30分または1時間。 オーガナイザーはArchontis-san と Prof. Hood. 最初にHood san が短いあいさつ。 快活そうで好感が持てる話ぶり。何やら Blandford さんに 似ている気がしないでもない。 Hood さんは10年ほど前に日本で会ったことを覚えているが、 大分年をとったという感じ。(人のことは言えた義理ではないが。 年齢は53歳で私より一つ上。) 今は Mathematical InstituteのHead。 後日、どうして英国の Solar MHD グループは Mathematical institute にいるか?と聞くと、始まりの Cowling 先生が Mathematical institute にいたから、だそうだ。ちなみに 系譜は、Chapman-Cowling-Priest-Hood 。 なお、ケンブリッジの天文がいかにして Applied Math から 分かれたかという話は、ホイルの自伝に詳しく書かれているそうだ。 帰ったら買おう。 なお、St Andrews 大学は、1400年代創設。英国では Oxford, Cambridge についで三番目に古い。大学のレベルも3番目という。 StAndrews も古い教会町。1100年頃にできた教会(Cathedral)の残骸がある。 塔つきの建物の両端だけが残っている異様な残骸。 人口はわずか1万人くらいで、その半数以上は大学関係者だそうだ。 今は、ゴルフの発祥地で有名。400年ほど前に始まった。そのゴルフ コースも後日見学。 ワークショップは、Hughes さんのダイナモ理論のレビューで始まる。 明解なレクチャー。 large scale field (dynamo) vs small scale field (dynamo) ? local (interface) dynamo vs flux transport dynamo ? などなど。alpha quenching の問題はまだ解決していないらしい (直接聞いた話:論争は収束していないという意味。ただし、 Hughes さんは前から、 alpha = alpha0/(1+B0^2xRm/v^2) が正しいという意見)。 のち、 Kersale:Magnetic Buoyancy instability の3次元MHD  シミュレーションの結果で、おもしろそうなtraveling wave を紹介。  でも、野沢君、宮越君、磯部君らの3次元計算では見たことがない。  境界で温度勾配を固定しているというから、そのような境界条件の  せいかもしれない。  Hughesさんの弟子。(降着円盤のMRI もやっているとか言っていた)  Brun:フランスのZahn の弟子だとか。元気。星内部のダイナモを  anelastic approx で直接計算している。solar differential  rotation も再現。 Jouve:Brun の弟子。女性。対流層の底からの  磁束管の浮上3次元MHDで直接計算。 昼から、 Abbet(Berkeley): Fisher の弟子。元気なレクチャー。あらゆる物理を入れた  3次元MHD計算。光球からコロナまで磁場の浮上。熱伝導も入っている。  途中で意識を失うが、眠った時間は数分くらいだと後でわかる。 Hansteen: これも磁束浮上の3次元計算。輻射輸送も解く。  ひのでと比較(し始め)。計算モデルとしては  一番進んでいるという感じ。ただし、何がわかったのかが、今一つ。 Cheung(Lockheed PD): 粒状斑と磁束浮上の相互作用の輻射MHD計算。  ひのでとの比較。粒状斑のパタンを良く再現。 Dorch: 以前NAP98の時に東京に来た。そのときから10年近く  たったら、すごくおっさんになったという感じ。以前は  かわいかったのに。先日の電子メイルにまだ返事していなかったので  後で謝っておく。(しかし、原稿書きを引き受けたとは  言わなかったような、、、)  レクチャーは、浮上磁場とその上にある磁場とのリコネクション。  ここで私が質問、コメント。質問は、hyper-resistivityについて。  かなり食らいついたので、後でhyper resistivity が出るたびに  笑が起こる。 毎回、議論の時間がたっぷりあるが、磯部君がなかなか元気。一杯質問を している。それに比べると横山君と真柄君は静か。ちょっと元気がないのが 心配。 携帯の電源がバチッといって故障。電圧が外国向けになっていないのを 忘れていた。これで充電ができなくなる。 (充電機も使えなくなった! 困った) 6月13日(水) 最初の講演は磯部君。常田君の代役で、ひのでの成果のレビュー と磯部君自身の3次元MHD 計算。ひのでの成果はわかりやすく、 上手に話す。素晴らしいムービーにみんな圧倒される。 後半、石川さんの研究紹介のところが少しわかりにくくなり 前半の勢い(みんなの感動)が止まったのが残念。 次は、 Schmieder: 南極のバルーン観測、テミスの観測など。  浮上磁場のカルシウム観測もある。初めて見た。  結構地上観測も進んでいる。Ellerman bomb の  bald patch model など。 Magara: 浮上磁場3次元計算と黒点固有運動観測との比較。  昨年12月13日のフレアに応用。観測では激しい渦が  できているのに、真柄君の解析ではどれほど渦が  とらえられるのか?と質問。 Pariat(NRL PD): 磁気ヘリシティの話。残念ながら、電子メールのチェックに  神経をとられ、話について行けず。 昼から: Shibata: 睡眠2時間で頑張って準備した。personal historical review と最新ひのでジェットの話。結構受けた模様。とくに、  修士論文の手書きの図、および、出席の目的が西洋人に  日本人の論文を引用するプレシャーをかけること、  という発言には大爆笑。終わってから、Priest さんが  superb talk と言ってほめてくれた。ppt file をほしいとのことで  あげる。Longcope さんが私の話を聞いて、磯部君の  Nature paper を初めて知ったとのこと。びっくり。  席に戻るとSchmiederさんが私の研究を引用していないと  クレーム。「ジョークよ」と一言追加。 Arber(UK): 初めて見る。頭がつるつるのおじさん。  resistivity に中性粒子の効果を考慮。3次元だと  ダイナミックスがかなり変わるとのこと。彩層上部で  磁気レイノルズ数が0.1 程度になるという。本当か? Moreno-Insertis: radiative transfer を考慮に入れた  浮上磁場のシミュレーションの話。 Parnel(StAndrews): small scale field の統計の研究のレビュー。  K. Harvey の研究と Hagenaar, Title らの研究の比較。   はたして、ephemeral region とactive region は  本当に異なるのか? 6月14日(木) Longcope: 浮上磁場にともなうリコネクションの研究のレビュー。  私の関係の研究をかなり取り上げてくれる。私が時間が  なくて割愛した話題(私の研究)も紹介。うれしい限り。 Galsgaard (Nordita/NBI): 熱伝導を入れて3次元浮上磁場計算をしたとのこと。  しかし、その証拠が不明。evaporation は出ているかと聞くと  ないという。あとで、Forbes, Priest, Malherbe の  リコネクションスローショックが熱伝導で、等温ショックと  熱伝導フロントに分解する現象を再現したか?と聞くと  まだしていないという。 Murray: 対流層中の2つの磁束管の間で起こるリコネクションの  3次元MHDシミュレーション。Hood さんの弟子。大学院生。 Yokoyama: 今回は元気がなさそうだったが(質問がほとんどない!)、  発表はちゃんとやっていた。3つの話題。フィラメントの下の  光球磁場ひので観測(inverse polarity => flux rope model support)、  長島さんの話(filament very slow rise, canceling flux trigger) 能登谷君の話(フィラメント噴出の3次元MHDシミュレーション)。 昼から、 Rust: historical review から最新の南極観測の話まで。  最初に、Shibata, Nozawa, Matsumoto (1992) の ADS Reads の  time evolution の図を見せて、みんな結構見ているよ、最近  とくに増加傾向にあるとのこと。爆笑。 Tripathi: emerging flux によるフィラメント噴出のトリガーの  観測の話。実例をたくさん紹介。磯部君との共同研究の  フィラメント振動のところで、昨日の夕食時の私の居眠り振動の  ムービーを紹介。大爆笑。 Torok: Kliem の弟子。CMEのフラックスロープモデルを話す。  kink instabiltiy, torus instability など、全体的な描像を  わかりやすく話す。おたく人間風なのが好感がもてた。 Kliem: torus instability にともなうself-similar evolution (solution) 不安定性の条件が、overlying field の磁場減少率で決まっている、  など。おもしろい。こういう研究こそ必要だと思っていた。  eruption にとってリコネクションは重要でない、という計算結果。  これは不安定性が先に発達すればそうなると思う。しかし実際は  もっと色々あるのではないか。不安定性が起こるずっと前に  有限擾乱(浮上磁場リコネクションなど)で loss of equilibrium になった場合などは、リコネクション driven もあるのでは? 夕方:Priest san の自宅で1時間半ほどパーティ。奥様とも久しぶりに会う。  向こうはあまり覚えていないよう。カラチというお菓子を食べる。  日本(語)が起源だとか。 夜:ゴルフ場中のレストランで conference dinner。  Archontis, Hood, Yokoyama, Kliem, Torok, の諸氏とテーブルを囲む。  いろいろ盛り上がる。その後、英国で最も古い橋を訪問、写真撮影。  New Hall に帰って、横山、磯部、真柄君らと再来週の太陽将来計画研究会  の「フレア、理論」の部分の打ち合わせ。  途中、横山君と宇宙天気談義を長々とやる。  結局、フレアの物理過程は磯部君、理論の部分(コード共同開発や  スクールの開催など)は横山君に担当してもらうことに。  研究会後にドキュメントを作ることを強調しておく。寝たのは3時半。   6月15日(金) Manchester (Michigan): 観測されているshearing motion は  flux emergence による、という話。これは大賛成。  また、flux emergence の発展によって  内部reconnection を介して eruption (CME) も可能という話。  こういうケースもあるかもしれない。Kliem san の対極に  ある話。後で個人的に話すと、もともと、イリノイ大学で  Prof. Mihalas の弟子だったという。Mike Norman とも交流あり、  ゼウスコードを使っている。Prof Mihalas の元では  choromospheric shock wave を non-LTE radiative transfer を  解いてモデル化しようというのが当初の目論見だったが、 同じ問題が  Calsson and Stein によってやられてしまったので、emeging flux MHD modeling をやりだしたとか。B. C. Low さんとはその関係で  交流開始。ただし、今はCMEについて意見が異なるという。良く理解。 Van Der Holst (Belgium, Poedts group); Chen-Shibata model と  Breakout model の solar wind + corona MHD への発展。  solar wind がないと、飛ばないケースも、solar wind があると飛ぶ、  という結果。 Moreno-Insertis: コンファランスサマリーの講演。radiation MHD、  観測との比較の重要性を強調。solaire network project を紹介。 最後の議論のときに、私も、international CAWSES symposium (Oct 23-27)  の紹介と、Solar C の紹介をする。 workshop は午前で首尾良く終了。大変おもしろい有意義な研究会だった。 昼から、電子メール、買い物、ミニ観光でSt Andrew 街中を歩く。 小さな町なので、店をのぞきながら、2時間も歩けば大体わかる。 町はずれの Catheadral の残骸は、迫力があった。よくぞこの形で 残ったものだ。 夜は、Hood-san, Archontis-san夫妻とお子さん, Longcope さん、 Isobe-kun で、中華料理屋に行き、夕食。うまかった。 6月16日(土) 朝、7時にNew Hall 入口で Kliem san と待ち合わせてタクシー(8ポンドくらい) で駅まで行く。ただしKliem san が払ってくれた。 Manchester さんもいっしょ。電車(10ポンド)の中では、 ひのでの結果などを見せて議論が盛り上がる。もっぱら私のジェットや スピキュールなどの話が主。 Edingburgh でKliem さんと別れ、Manchester さんとは空港まで タクシーに乗る。(13ポンド+チップ) 空港で別れ、私は13時45分発ロンドン行きの飛行機まで、延々4時間以上待つことに。 ロンドンでは、また延々数時間の待ち時間。途中、電子メール (有料〜1000円/1時間くらい)で上出さんに陳謝。 飛行機の中ではあまり仕事ができず。この日記を書いたくらい。 60年代、70年代の日本の懐メロばかり聞いて(半分寝て)いた。 JAL だったが、座席横にコンセントがあるのを、降りるときに知って がっかり。次回は活用しよう。 6月17日(日)夕方に無事帰宅。