巻頭論攷

2013年欧州惑星科学会議(ロンドン)

クリストフ・ペリエ

近内令一譯

CMO/ISMO #415 (25 October 2013)


English



  今年の欧州惑星会議 (The European Planetary Science CongressEPSC) はロンドン市内のUCL (ユニバーシティカレッジロンドン) で開催された。


本会議では二度目となるアマチュアの天文学的活動に焦点を当てたセッションが喜ばしくも開かれ、昨年度のマドリッド大会同様、筆者はこれに参加することができた。その週末にはBAAの分科会の一つで、やはり惑星天文学にテーマを絞った会合に出席することができた。ここにこれらのイヴェントの概要を紹介しよう!

 

 

  EPSC2013年のアマチュア部会が2012年に比べてさらに面白かったのは、まず、第一に発表された研究の内容がより充実していたからであり、そしてより多数の参加者が来場して親交を深めることができたからである。

  Ricardo ALONSOの口演からEPSCのアマチュア部会は開始された。演者はビルバオ高等工科大学所属 (事情により参加できなかったFrançois COLASの代理発表)。内容は、Experimental Astronomy誌に投稿されたもので、アマチュアとプロの天文学者との共同研究活動が可能な総ての分野についての概括を試みたものである (この本格的な論文のさらに詳しい紹介については、CMO日本語版第411号の著者による巻頭論攷参照)。この論文は現時点でまだ受理審査中である。

  続いて筆者が口演発表の光栄に浴したのは、SAF所属のベルギーの観測者Giuseppe MONACHINOと共に1年間に渡って実施した金星観測の分析の幾つかについてのまとめである。我々が試みたのは近赤外画像による自転周期の測定で、紫外域画像による観測結果と差異があるかどうかを探る目的であった (我々の分析結果では、紫外域での観測結果3.8日に比べて、近赤外域では丸一日長い4.9日の自転周期が得られた)。さらにまた筆者が手短に報告したところであるが、金星の夜側の1μmによる熱放射画像により、金星の高山の幾つかを確認できた。

 


  Manos KARDASISが続いて解説したのは、彼がDDO (Digital Daylight Observation)と呼ぶところの観測法についてである。これは、惑星の位置が空で太陽に近くて日中に観測しなければならない条件下に画像を得るテクニックである。これにより惑星の追跡可能期間が格段に延長し、とりわけ木星で注目すべき効果を示した (2012年に我々は、合の直前に始まった木星の北半球の大異変を追跡できた)

 

  Marc DELCROIXは、彼が昨年Ricardo Alonsoと共に打ち上げた計画について述べた:DeTeCT、すなわちアマチュアの木星画像上で未検出の衝突閃光を探し出すプロジェクトである。これは自動的に検出作業を実施するソフトである。現在までのところ閃光現象は検出されていないが、実際にこのソフトで分析作業にかけられたデータの量はまだ非常に少ない。この計画の最終目標は木星への衝突現象の発生頻度についての見積もりのデータを増やすことであり、総てのアマチュアの参加が大歓迎となる。

 


  John ROGERSが立ち入る目的は言うまでもなく木星である。彼が報告したのは、近年木星の北半球に観測された大異変についてである;前例のない幾つかの現象が見つかった。

 (譯者註:EPSC2013の口演録にはNEB Revivalについての類似性のある前例の候補として、1893年のE. M. ANTONIADIの眼視観測や、189697年のT. E. R. PHILLIPSの眼視観測が引用されている:

http://www.astrosurf.com/delcroix/doc/EPSC2013/EPSC2013.htm

このような成果は、Jupos計画の助けや、今日かくも多数報告され続けるアマチュア天文家の画像なしには得られなかったであろう!

  最後に、少々別の分野であるが、BAARichard MILESがテミス族の小惑星の低位相角での測光観測で得られた結果を報告した。

 

BAA分科会

  翌日、我々は総出で、同じくUCLで開催されたBAA主催のアマチュア天文家のミーティングに参加した。広範囲のトピックをカヴァーする内容の発表が豊作であった:サイバースケッチ (コンピュータを用いた眼視スケッチ:Peter GREGO口演)、アマチュアによる惑星撮像の近年の発展 (David ARDITTIによる好内容の解説)、そして衝突閃光現象の分析についてはMark Delcroixが木星について再び解説し、また月面の衝突閃光に関する非常に詳細な研究がTony COOKによって発表された;Richard Milesは小惑星についての別な口演で午前中のセッションを締めくくった。

 

 

そして午後の部に移って、まずPaul ABELによる天王星の研究発表を聞き、続いてWinJuposについての二つの演題に耳を傾けた:Michel JACQUESSON (JUPOSのための測定)、及びManos Kardasis (展開マップ作成とderotationについて―Manosは口演の最後に、筆者に動画のderotationについて簡単にコメントする機会を与えてくれた)。続いてChris HOOKERは月面のレゴリスを分析するテクニックとしての偏光観測法について話した。最後にNigel MANSONVirtual Atomic and Molecular Data Center (VAMDC:仮想原子分子データセンター) について解説した。

 

 

 

  ここで筆者は上記の会合が成功裏に終わったと強調する。証拠を一つだけ挙げろと言うならば、EPSCのアマチュア部会をわざわざ聞きに来たプロの天文学者の数を挙げれば―十数名に余ったと思う―納得するだろう。惑星天文学は今日、多くのアマチュアにとってやりがいのある実り多い極めてダイナミックな分野であり、何年か前までのひっそりとして、何やら外れのオタッキーな活動という印象とは雲泥の差の発展である…。


  筆者のブログでも関連の内容について記している:

Amateur planetary astronomy under the spotlightsthe EPSC 2013

http://www.planetary-astronomy-and-imaging.com/en/epsc-2013-london/

またEPSC 2013のアマチュア部会での口演、ポスターセッションについてはMarc DelcroixEPSCページからアクセスできる:

http://www.astrosurf.com/delcroix/doc/EPSC2013/EPSC2013.htm

 





日本語版ファサードに戻る / 『火星通信』シリーズ3の頁に戻る