Ten Years Ago (224)

 ----CMO #284 (10 December 2003), CMO#285 (25 December 2003) ----

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/cmo284/index.htm

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/cmo285/index.htm


 

回もウエッブ版の2003年十一月後半のCMO#284と十二月前半CMO#285の二号の紹介となる。この機会にぜひご覧ください。

 

 CMO#284では2003 Great Mars CMO Report (19)に、十一月後半の観測報告がまとめられている。この期間に季節はλ=299°Lsから308°Lsに進んで1973年の大黄雲の発生期をはさんでいた。視直径はδ=12.8"から11.2"と小さくなった。傾きはφ=25°Sから26°Sと南に最大となって極小期の南極冠が小さく見えていた。位相角はι=41°から42°と大きく朝方が欠けていた。

 観測報告者は22名で135観測であった。内訳は日本からは895観測。アメリカからは520観測。 ヨーロッパからは714観測。オセアニアからは26 観測であった。

 レポートには、それぞれ見出しを付けて注目点が取り上げられている。「ソリス・ラクス周邊の朝霧」では阿久津氏と森田氏の18Novから23Novω=070°WあたりのB光像を引用している。「シーゲルさんの光斑」として、19 Nov (λ=301°Ls)ω=183°W28 Nov (λ=306°Ls) ω=075°Wの二回にわたり違う部位で観測された同じ様な興味深い現象を取り上げている。エリュシウムあたりとアスクラエウス・モンスあたりが朝方にあるときWr47(蒼菫色)で光斑に見えたという現象で、衝後の朝方の山岳領域の朝霧や雲についての観測を今後計画する必要があろうとしている。「北極雲」では、南に大きく傾いているものの北縁に張り出している北極雲の様子を伝えていて、パーカー氏の22Nov(λ=303°Ls) ω=250°W~261°Wでアエテリアの暗斑を半分隠すほどになっている観測や、森田氏の北極雲からクリュセへの流れをとらえた24 Nov (λ=305°Ls) ω=013°W019Wの画像を取り上げている。「南極冠」では、パーカー氏の18 Nov (λ=301°Ls)前後の良像をみると南極冠の周りにときどきボヤケが出ているようであるとしている。ヴァイキングの観測も取り上げ、λ=297°Lsでは未だ殘留極冠にはなっていなくて、Ω=000°Wの方向には何か殘っていると指摘している。「ワインカラー地について-22 Novの影像」では、南半球の暗色模様の多くが黄塵の沈着と共にワインカラーに見えることを再度指摘して、パーカー氏の22 Novの画像と他の方の画像を比較している。 次いで以下の各氏による観測を取り上げている。「パーカー氏像に見るアウソニア-ヘッラス領域」「ヴァレッル氏のヘッラス觀察」「フラッサチ氏の17Novの觀測」で、以下のリンクからレポートへたどれる。

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/284OAAj/index.htm  

 

 CMO #284LtEには25 November から 9 December 2003の来信が紹介されている。国外からはEd GRAFTON (TX, the USA), Joseph LAUFER (Germany), Frank MELILLO (NY, the USA), Don PARKER (FL, the USA), Christophe PELLIER (France), Agustin SANCHEZ LAVEGA (Spain), Bill SHEEHAN (MN, the USA), Elisabeth SIEGEL (Denmark), Maurice VALIMBERTI (Australia), †Erwin Van der VELDEN (Australia), Johan WARELL (LPL, AZ, the USA), Ferruccio ZANOTTI (Italy)13名の各氏から、国内からは、阿久津富夫(栃木)、浅田 正(福岡)、岩崎 (北九州)、熊森照明(大阪)、森田行雄(広島)、長 兼弘 (石川)6名の方々から寄せられている。

 

 20年前のTYA(100) 南氏により、CMO#140 (25Dec1993)が紹介されている。1992/93 CMO Note (13)としてまとめられた「エリュシウムの12Feb 森田現象について」が8ページにわたり、森田氏の観測12 Feb (λ=039°Ls)を始めとする我が国の観測と、その後のフランスでの観測を中心にヨーロッパの観測をとりあげている。これまでは注目されて来なかったが、後にMGSλ=039°Lsあたりで北極冠の周りでの擾亂を観測したのを初め、幾つかの擾亂が知られており、北極冠の周りでの擾乱を洗い出すことは必要かと思うと結論している。「夜毎餘言」(XLI)では「関係代名詞」と題して、日本語では餘り英語のような関係代名詞を使わない方がいいという南氏の考えを述べたものである。CMO Fukuiには翌年八月に福井でOAA総会が開催されることとなっているとの記述がある。 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/284tya100.htm  

 

に、CMO#285には、2003年十二月前半の観測が2003 Great Mars CMO Report (20)としてまとめられている。季節は λ=308°Ls から317°Ls と進み、視直径はδ=11.1"から9.7"10"を下回ってしまった。中央緯度はφ=26°S台を推移して15Dec26.42°Sの最大となり、南半球が大きくこちらを向いていた。位相角ι42°台で衝後の最大値となっている。

 観測報告者は20名から89観測と前回よりやや減っている。日本から652観測と大半で、太平洋側の観測者が活躍した。アメリカからは410観測、ヨーロッパからは924観測、オセアニアからは13観測であった。13 Dec (λ=315°Ls)にはパーカー氏がクリュセからエオス、アウロラエ・シヌスを半分覆い、アルギュレ北部に拡がった黄雲を検出した。CMOからの速報により欧米の観測は少し増加した。期間末には日本からも見えるようになってきた。

 この期間のレポートも注目された現象が見出し毎にまとめられている。「極小の南極冠」では、パーカー氏が5 Dec (λ=311°Ls)に撮った小さな南極冠を取り上げている。「日没前のIR觀測」では阿久津氏の白昼からのIR観測を取り上げている。本文から引用すると「Ak氏は8Dec (λ=312°Ls)IR14:30JST(5:30GMTω=178°W)から撮像を試み、問題の13Decには更に早く13:55JST (4:55GMT)から始めている。肉眼では、筆者の場合10Decに日没三十分前の16:00JSTが最初であるから、IRでのこうした試みは今後も効果的であろうと思う。」としている。「13 Dec (λ=315°Ls)DPk氏の黄雲検出」では、クリュセからアルギュレ北部にまで大きく拡がった黄雲の様子が 13Decから日付を追って15Decまで詳説されている。これも本文を引用しておく。

 

 「13DecDPk氏は01:35GMTω=072°Wで、クリュセからエオス周邊、アウロラエ・シヌスを半分覆い、アルギュレの北部まで擴がった大きな黄雲を検出した。後方はカンドルにも廻っているし、アラムにも黄塵が立っているかも知れないという状況である。ω=092°Wまで追っている。ι42°であるから、この時點でアウロラエ・シヌスは日の出後80°ほど經っているが(正午前)、ソリス・ラクスなどは未だ正常であるようである。DPk氏のemail16:31JSTに着信したのだが、cmo@Mk氏は外出中であったので、筆者の方から18:38JSTCMO Notice#07としてCMOのメーリングリスト(DPk氏の使っているリストより大きい)を使い通報した。20hrsJST過ぎにはMk氏も歸宅し、DPk氏の像をGalleryに擧げると共に、ファサードのウィンドー(Director's Notes)に警告を出した。ただ、當面は美國での觀測が中心になる譯であるが、フロリダでも既に黄塵は午後に移っていたから、ヨーロッパの觀測は氣になるところであった。然し、もしヨーロッパで相當粘って21hrsGMTまで觀測出來たとしても、ω=355°W迄であったから、難しいところである(實際に12DecにはスペインのACp氏のω=333°Wの像がある)。一方日本では17hrs JSTω=166°Wである。Ak氏はこのニュースより前、前述の様に13:55JSTIR-980で撮像しているが、一寸像が安定しない。ω=162°Wで安定してくるが、アウロラエ・シヌス+90°Wで=150°Wであるから難しいところであった。

 

 14Dec(λ=316°Ls)にはDPk氏が(D'AURIA氏、FAWORSKI氏と共に) ω=044°W(00:19GMT)で、またカナダのBCl氏がω=047°W(00:30GMT)で撮像した。黄雲はマレ・エリュトゥラエウムを中心に大きく擴がり、エオス、カプリ・コルヌそれにアラム、更にはアルギュレ西に幾つかのコアがあるか、といった状況になっていた。コアは朝方に立ったものであろう。この日はAk氏がω=111°W (4:56GMT=13:56JST)IR像で、この西側を捉え、Km氏もω=118°W (5:23GMT=14:23JST)R-640で撮像した。黄塵の西端はソリス・ラクスの半ばまで、またもっと南の方ではアオニウス・シヌスの西に達し、後者は明るいコアとなっている。Ak氏はω=145°W(7:15GMT=16:15JST)RGB像を構成することが出來(B像でも稍明るい)Km氏もω=152°W (7:45GMT)でカラー像を得たが、黄塵は未だ明確である。Km氏はω=167°Wまで追ったが、未だ痕跡は見える。眼視のMk氏は9:00GMT (ω=171°W)が最初だが、リムヘーズを感じる程度であった由。この日はAk氏が直ぐ處理して、報告があったので、20:52JST (11:52GMT)Ak氏の成果をCMO關係に通報した。DPk氏からCongratulations to Tomio!15Dec4hrsGMTに届いた。なお、14Dec19:07JSTに理査・麥肯(RMk)氏から返信があり、今度の黄雲は1990 Nov (λ=326°Ls)の場合を思い出させるということであった。ただ、その後の經過からすると、今度の方が規模は大きく思える。ただ、RMk氏はグローバルになるには時期が遅すぎると考えている。なお、この日ヨーロッパではCPl氏が撮像しているが、ω=313°W (18:42GMT)であった。

 

  15Dec(λ=316°Ls)にはEGf氏がω=038°W (00:36GMT)で良像を得た。既に黄雲は可成り上空に昇り殘留しているらしく、シヌス・サバエウスの西半分は變形、淡化してしまっている。明るいコアがアラムの南にあり、更にその南のアルギュレ東にも帯が見える。エオス邊りにもまだコアが幾つかある。ただ、マレ・アキダリウム邊りには變形が無く、黄雲の影響が無く、白雲が漂って通常の姿であることは重要であると思われる。更に注目されるのはB像でアルギュレからその西に明るい擴がりがあることで、水蒸氣が立っていることである。日本では、この日Mk氏が7:00GMT(16hrsJST)から10cm赤道儀で追って、二回ほど觀測したが(これは没)8:20GMT (ω=151°W)20cmに移り、黄雲がソリス・ラクス邊りから南を覆っているのを確認する。ダエダリア邊りの暗部は未だ見えている(ω=161°W171°W181°Wと觀測、次第に明部は押し込まれてゆく)Ak氏はω=166°W180°WRGB像を得た。Bでも黄雲部が可成り明るいのが分かる。一方、ヨーロッパ側ではCPl氏がω=295W(18:10GMT)邊りで、δ=9.7"と思えないような像を得たが(C14使用)、ノアキスとマレ・セルペンティスが少し朝方に出ていて、興味がある。B像では朝方ノアキス南部に水蒸氣が強く、それがマレ・セルペンティスの邊りまで降りている。但し、同日ESgさんのω=292°W (18:00GMT)の觀測ではIntで朝方南部に明部があるようだが、W47では、朝方明部は南部より北の方が強かったようである。」

 

最後に「MGS-MOCの観測」では、13Dec以前の探査機からの画像を解析して、12Dec(λ=314°Ls)にはクリュセの西南部で強い黄塵が立っているのが確認できるとしている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/285OAAj/index.htm 

 

 LtEには、10 December から 24 December 2003の期間にあった来信がまとめられている。外国からは、Jeff BEISH (FL, the USA), Nicolas BIVER (France), Brian COLVILLE  (Canada), Ed GRAFTON, Silvia KOWOLLIK (Germany), Josef LAUFER, Richard McKIM (the UK), Eric NG ( 偉堅, Hon Kong), Don PARKER, Damian PEACH (the UK), Christophe PELLIER, Bill SHEEHAN, Johan WARELL, Sam WHITBY (VA, the USA), Tom WILLIAMSON (NM, the USA)15名の方々。国内からは、阿久津、平岡 (東京)、岩崎、熊森、牧野彌一(富山)、宮崎勲(沖縄)、森田の各氏7名からの来信であった。

 

Greetings としては、 K C PAU ( 國全, Hong Kong), Félix MASSÓ MILLEIRO (SPAIN), Barry ADCOCK (Australia), Christophe PELLIER, Mario FRASSATI (Italy), Don PARKER, Brian COLVILLE, Eric ROEL (Mexco), Ferruccio ZANOTTI, Jeff BEISH, Maurice VALIMBERTIの皆さんからのメッセージが紹介されている。

この号ではTYA(100)の英語版として南氏がCMO#140 (25Dec1993)を英文で紹介している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/285tya100e.htm  (English)

 

村上 昌己 (Mk)


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