2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#07

2014年三月の火星観測 (λ=096°Ls~110°Ls)

-(その1) -

CMO #421 (25 April 2014)

  3 1日から 9日まで   (λ=096°Lsλ=100°Ls)


  01 March (λ=096°Ls~097°Ls, δ=11.6"): F MELILLO (FMl)氏とP GORCZYNSKI (PGc)氏から観測が送られてきた。それぞれω=161°Wω=162°Wで時間的に八分の違い、状況には違いがない。PGc氏の画像ではタルシス三山が夕縁近く、雲を被っており、些し入ってオリュムプス・モンスの朝側が雲で夕方側は地肌が出ているようである。G像でオリュムプス・モンスの東側が暗帯のように見える。アスクラエウス・モンスとオリュムプス・モンスは火口が黒ずんで居るかも知れない。FMl氏の像でも矢張り夕雲は出ていて、オリュムプス・モンスも區別が着く。FMl氏像ではプレグラなど存在は判るし、北極雲域も白いが、明確ではない。北極冠はPGc氏像で明確で、リマ・ボレアリスもオリュムピアに続く白雲でちょん切られたように見える。プロポンティスIからプレグラに掛けての描冩も綺麗で、プレグラの二重構造も明らか。アエテリアの暗斑の北端も濃く出ている。エリュシウムはG像でやや明るく出ているか、といった程度。FMl氏像では覗えないが、PGc氏像ではマレ・キムメリウムとその東側の暗部が好く見える。

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  02 March (λ=097°Ls): この日は L AERTS (LAt)氏がω=082°Wで、Ch PELLIER (CPl)氏がω=093°Wで、E MORALES (EMr)氏がω=140°Wで、A WESLEY (AWs)氏がω=287°Wでそれぞれ撮像した。LAt氏のは單像で、夕方にニロケラスの鋏状模様を綺麗に出している。南では夕方にソリス・ラクスが斑点状に出ている。ティトニウス・ラクスも大まかに出ていて、イウエンタエ・フォンスも出ているかと思える。この邊りはクサンテからの淡い白霧に覆われていて、朝方の白霧に通じているかといった状況である。CPl氏像は些し回転した状況だが、夕端からの白霧の描写が好く、アガトダエモンの北まで可成り強く出ている。また、タルシス三山の雲、オリュムプス・モンスの雲も既に夫々山の西側に明白に出ていて、LAt氏像と10°Wの違いが明確とすれば、興味深い。

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  EMr氏像ではオリュムプス・モンスが中央を過ぎた邊りで、矢張り西側の山腹に強い白雲。プロポンティスIなどの描冩は些し暈け気味。北極冠は小さく見え、オリュムピアが這入ってくるかといった状況。

 AWs氏は澳大利亞で、單像、シュルティス・マイヨルが中央に見え、ヘッラスが白く輝くが、内部構造が些し見える。エリュシウム・モンスの白雲が夕縁に沈むところ。朝方ではシヌス・メリディアニが西端から出てきたところだが、シヌス・サバエウスも含めて、なかなかの詳細に富む描冩である。北極冠本体は可成り複雜で、南側に砂の擾亂があるようだ。オリュムピアの尾っぽが極地夕方に見えている。

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  03 March (λ=097°Ls): この日はM VALIMBERTI (MVl)氏がω=266°W270°W273°W281°W284°W286°W289°W292°W26°W幅の連続撮像の勞作、次いでR KONNAÏ (Kn)氏がω=300°Wでスケッチ、更にS BUDA (SBd)氏がω=305°Wで、M JUSTICE (MJs)氏がω=308°Wで撮像した。

 MVI氏の像はリストでは5°W(20)以上離れている像を数えている。最初の像では、エリュシウム・モンスの白雲が夕端から離れて見えているが、最後の像では夕端に沈んで、白霧を遺しているという感じ。また朝端では最初、シヌス・メリディアニは見えていないが、最後は完全に出ている。その他、オリュムピアが沈んでゆくが、後になるほど明白になる感じがある。ホイヘンス・クレータも後になるほど明確である。ヘッラスの凹みも描写している。

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 Kn氏のカラースケッチは、ヘッラスが夕端に、シヌス・メリディアニが朝方に捉えられるという絶妙の角度。白霧の広がりに注意が払われていて、北極冠域ではオリュムピアの北極冠の東端での検出は見事である。

 SBd氏像ではヘッラスが東に傾いている。シヌス・メリディアニが可成り中に入り、アリュンの爪が既に明確。シュルティス・マイヨルには夕霧が既に被っている。オリュムピアは未だ見えるが、北極冠の東北からから南西に延びる棒状型は面白いが、今後の課題。B像でも明白。

 MJs氏の像でも北極冠の棒状型は出ていて、この日はMVl氏の後から目立ち始め、ω=308°Wの時點まで確認されたわけである。この日はヘッラスの凹みも可成り長く追えたということ。 

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  04 March (λ=098°Ls): 2Marに続いてAERTS(LAt)氏のω=086°Wの影像とD PARKER (DPk)氏のω=131°Wω=138°Wの影像が提出されている。

 前者ではソリス・ラクスが夕方で濃く、クサンテからの白霧がオピル-カンドルを一旦覆い、更に朝方へ流れている。タルシス三山の山頂が茶色系の斑点に見え、アスクラエウス・モンスの朝方にはアスクラエウス雲が見えているようだ(後者は朝方アスクラエウス・モンスとオリュムプス・モンスの間に見られる白い雲塊のことである。

1996/97 Mars Sketch (16) CMO #215 (10 April 1999)に取り上げてある。the white patch was located between Ascræus Mons and Olympus Mons 參照、1997年の同じλ=098°Lsの観測を基にしている)LAtの図ではヒュッペルボレウス・ラクスが明確で北極冠に接している。

 DPk氏の二像はオリュムプス・モンスを狙ったもので、ほぼCMに近い處の前後で撮っている。氣流は第一像の方が好いようで、オリュムプス・モンス雲は右側(西側)の山腹にあり、山頂は露呈しているかに見える。先行するアスクラエウス・モンスも似た振る舞いで山頂が露呈した感じである。B像ではタルシス山系の雲とオリュムプス・モンスの雲の合間はより薄暗い。アスクラエウス雲は午後は後退するようだ。北極冠の朝方にはオリュムピアが出てきている。エリュシウムは未だだが、プロポンティスIは出ている。

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  05 March (λ=098°Ls): J-J POUPEAU(JPp)氏がω=070°Wで撮像、C HERNANDEZ (CHr)氏が ω=108°Wでスケッチ、EMr氏がω=146°Wで撮像した。

 JPp氏のRGB像は 正統派で、クサンテから朝縁までの赤道帶霧(B像で明白)や南極冠に近いところの朝霧に注目している。暗色模様の詳細、例えばソリス・ラクスからティトニウス・ラクス、ニロケラスの鋏などはIR像に出ている。ヒュペルボレウス・ラクスは濃く北極冠に接し、この濃度を正常とすれば、今年のマレ・アキダリウムは淡化していると言える。

 CHr氏も夕方クサンテ発の赤道帶霧を重視している。顕著な朝方の白い圓形雲はアスクラエウス雲か。

 EMr氏の像は、夕方に來たオリュムプス・モンスの西山腹を覆う雲を顕著に示し、更にその夕方方面にはタルシス山系の山岳雲が著しい。エリュシウムは朝縁に來ている筈だが不分明。ただプレグラが見え、プロポンティスIは濃い。北極冠域はシャープではないが、オリュムピアが上がってきている。

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   06 March (λ=098°Ls~099°Ls):  J SUSSENBACH (JSb)氏がω=019°Wで撮像、K SMET (KSm)氏がω=040°Wでスケッチ、CPl氏がω=042°W(LRGB)047°W(RGB)057°W(RGB)で撮像、JPp氏がω=045°WAWs氏がω=254°W261°W270°Wで撮像した。

 JSb氏のカラー像は必ずしも色は鮮やかでも、暗色模様の境界も鮮鋭度は高くないが、アリュンの爪は出ているように見えるし、マルガリティフェル・シヌスからアウロラエ・シヌスの掛けての暗色模様の北岸は大まかに好く出ているし、ニロケラスの鋏も見えるようである。アガトダエモンも朝縁近くにみえる。重要なのはマレ・アキダリウムの北東に色違いで些し明るく見えるところが区別でき、これはもともと黄塵の溜まりであろう。矢張りヒュッペルボレウス・ラクスはマレ・アキダリウムより濃い。

 KSm氏のスケッチはマレ・アキダリウムが中央近くで、ニロケラスも出ており、白いテムペを抱えるような格好である。

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 CPl氏の三像はシヌス・メリディアニが沈みはじめる處から退場までである。赤道帶霧はω=047°WRGB像が鮮明である。朝縁の處理は必ずし成功ではないが、三枚で示す内容は安定していて豊富で、例えば三枚ともアスクラエウス・モンスが褐色の暗斑として朝方に出ていて、最後のω=057°Wでは懸案の"アスクラエウス雲"が白く、前二者に比べて大きく出ていると思う。これはB像で顕著。ソリス・ラクスやティトニウス・ラクスは濃く描冩され、イウエンタエ・フォンスの飛び出しも見え、アウロラエ・シヌスの北への飛び出し角(つの)の二本は明確である。ちょっとその邊りの地肌は明るい。最大の濃度はヒュペルボレウス・ラクスにあり、マレ・アキダリウムは内部に茶けた擴がりが分布しているように見える。ニロケラスの鋏も含めて、外形は前回接近時の様子と然程変わらない。北極冠には亀裂が見えているかも知れない。

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 JPp氏のRGB像はややぼんやりしているが、IR像ではニロケラスやティトニウス。ラクスの邊りの可成りの詳細が出ている。

  AWs氏の像は妥当な三連像で、シヌス・サバエウスの見えない角度から、朝方に半ば見える状態の活写である。注目するのはエリュシウム内部の明部で、エリュシウム・モンスに懸かる白雲とアエテリア暗斑に沿う地肌(または黄塵)の明るい筋とが色合いで区別されていることである。此は三枚ともに出ている。シュルティス・マイヨルの北端の描冩も好く、ホイヘンス・クレータの内部も顕著である。北極冠南東にはオリュムピアが可成り白く見える。ヘッラスの様子も注目される。ω=270°Wでは中央の薄暗い陥没が可成り中に入ってきている。

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   07 March (λ=099°Ls):  S GHOMIZADEH(SGh)氏がω=015°WJPp氏がω=024°WLAt氏がω=027°Wω=044°WPete LAWRENCE (PLw)氏がω=033°WXa DUPONT (XDp)氏はω=041°W049°W051°W056°WEMr氏がω=101°WMJs氏がω=263°Wの像を提出した。SGh氏像は暗色模様の濃度差に變化が乏しく(コントラストが強い)、色合いも似たままである。地肌の色を見極めて欲しい。北極冠のスケールにも注意を払いたい。マレ・アキダリウムの北東の色合いのズレに注目。

  JPp氏の像は穏やかで、ゴーストが見當たらない。R&IR像は詳細に富み、アリュンの爪やブランガエナの存在、は明確、オクシア・パルスの形状の描冩、アウロラエ・シヌスの角(つの)、茫洋としたマレ・アキダリウム、クリュセの白霧はB像に見られる綺麗な赤道帶霧に直結して居る。アウロラエ・シヌスやニロケラスの詳細はOK。南端に靄。

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 LAt氏像は良像で、前者はシヌス・メリディアニの二本爪が未だ東端に見える。二枚目には九割方沈んでいるが、ブランガエナが出ているのには感心。両者ともマレ・アキダリウムの内部の描写が好く、前者には東北方面の地の色の違いが出ている。北極冠の描冩は冴えない。

 PLw氏の画像はシャープさは足りないが、ほぼ必要な模様は把握している。アウロラエ・シヌス邊りの描冩はもう少し可能であろう。北極冠内の亀裂は出ている模様。

  XDp氏の画像は15°W内の四像だが、どれにもクリュセ東からタルシスまでの赤道帶霧はB像で把握されている。全体的にはω=051°Wの像が落ち着いている。ヒュペルボレウス・ラクスが極めて濃く、マレ・アキダリウムが平凡で、東北部の変遷はつかみきれない。ティトニウス・ラクスはRG像で濃く出る。

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 EMr氏の像は、朝方のオリュムプス・モンスの風下山岳雲から、タルシス山脈およびその東の雲の拡がりを好く描写している。ただ、キーになる暗色模様がぼやけて位置取りが難しい。マレ・アキダリウムの沈み方もぼんやりしている。

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MJs氏のω=263°Wは、前日のAWs氏のω=261°Wに対応していて面白い。なんと言っても、エリュシウム内の山岳雲と地の明部との対応が、興味のある點だが、MJs氏の場合、このキレが些し劣る。但し、風下の珍しい雲の立ち方は出ている。その他シュルティス・マイヨルの描冩もR像では好いが、人工ゴーストが西端に見える。ヘッラスは北極冠の色より蒼白い。オリュムピアは沈むところだが、その後方は赤っぽい地面の拡がりになっている(前日のAWs氏像でも見られるが、AWs氏の砂漠は全体に赤味を帯びているので分別が難しい)

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    08 March (λ=099°Ls~100°Ls): SGh氏が ω=359°WEMr氏がω=088°WD BATES(DBt)氏がω=116°WMVl氏がω=217°W224°W227°W236°W239°W243°W245°W250°Wで撮像、SBd氏がω=248°WMJs氏がω=256°Wで撮った。SGh氏像は不満ではあるが、本人の像としては好くなった。この人の観測地點は欧州とアジアを結ぶ地点にあって重要で今後の向上を期待したい。

  EMr氏の像は暗色模様と淡い霧が乱れて見応えがある。ソリス・ラクスやティトニウス・ラクス、夕方のマレ・アキダリウムなどが出ているが、クリュセから朝方に伸びる赤道帶霧が淡く見られ、B像で明白だが、CPl6Marのもっと朝方に見られた"アスクラエウス雲はこの時間までに霧散したようで、本格的な場合はマダのようである(と言うより、衝後にならないと朝方は狭い)。アスクラエウス・モンスやオリュムプス・モンスの朝方の雲は早くから孤立して白い。オピル-カンドルは地肌が明るい。

  DBtの画像はB像のオリュムプス・モンスの雲やタルシスの雲が見られるのが取り柄、北極冠も存在だけ。

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  MVl氏の像は、八像ぐらいあるが、全体で30°W幅で、間隔は10°Wもしくは5°Wにするのが好く、二三度の違いならば、どちらかを選ぶべきであろう。ヘッラスがどの邊りから出てくるとか、オリュムピアがどのように隠れてゆくかなど、5°W(廿分)間隔で十分である。なお、エリュシウムの内部構造はω=239°W243°Wで見られるか、と言ったところ。

 

  SBd氏の画像では、エリュシウム内の雲と地肌の明るいところの區別がより明確で、シュルティス・マイヨルの北端あたりの描冩や、ヘスペリアやマレ・キムメリウムの北西部の描冩は可成り詳しい。オリュムピアも出ていて、北極冠内に構造があるようである。ヘッラスは朝縁で十分白く輝く。

   MJs氏の像はMJs_7 Marの像より遙かに鮮明で、エリュシウム内部の明るい部分の分布はより明白である。雲が南へ流れている様子も見える。色彩も可成り表現されていて、オリュムピアの後方の赤味や、南アウソニアと思われる處の赤味も貴重である。SBd氏像にも見られるが、全体に沙漠が綺麗な色で、MJs氏の地肌は汚れているために、赤味の箇所が目立つとも言える。オリュムピアが明白で、北極冠には内部構造がある。ウトピアの濃淡も目立つ。朝縁に出る線状の人工ゴーストの處理はSBd氏の方が上手。

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  09 March (λ=100°Ls):  SGh氏がω=356°Wで、CPl(+M DELCROIX))がピク・デュ・ミディでRGB像を ω=011°Wで、A VANONI(AVn)氏がIRω=043°Wで、AWs氏がω=234°Wで、MJs氏がω=244°Wで、それぞれ撮像した。

  SGh氏像はそこはかとなく好くなっているか。シュルティス・マイヨルが沈んだ後に霧の殘り、朝方クリュセに朝霧、シヌス・メリディアニが真ん中、北極冠も見える。

 CPl氏の画像はピクの106cmに依るもので、RGBを見る限りKn氏の言ではシーイングが好くないのでは?ということだが、鮮鋭度はないものの殆ど把握している。マルガリティフェル・シヌスの北部が二つに割れているのは懐かしい光景。オキシア・パルスの邊りも詳しくその西のクリュセへの垂れ下がりも出ている。

IR(ω=005°W)で見ると、それはそれは詳しい。アリュンの右爪の二股割れなど出ているし、マルガリティフェル・シヌスから西の描冩も完璧である。なお、RGBではシュルティス・マイヨルの沈んだ跡の残滓の夕霧やアルギュレ邊りと思われるところの白雲が顕著で、B像にはクリュセを通る赤道帶霧が出ている。RGBではマレ・アキダリウムの東側、オクススの間の明帯は色彩が黄色に揺れて特別になっているが、IRでは一寸こちらの知らない内部構造が見える。それは途中に明帯の両端を結ぶ細い橋が見えることである。これは後のDPk氏の像の處でもう一度論じる。マレ・アキダリウムの北側の明部も独特である。IRでも明るい。矢張りヒュペルボレウス・ラクスが最も濃く、マレ・アキダリウムの濃度分布は平凡である。

   VANONI(AVn)氏の画像はIRだけだが、詳細が好く出ている。シヌス・メリディアニは夕端近くだが、アリュンの爪の二本は見えているし、ブランガエナやクリュセ南端のごちゃごちゃも好く出ている。アウロラエ・シヌスの描冩もOKである。線状ゴーストもなく、濃いヒュペルボレウス・ラクスの形状描冩も好いのではないかと思う。

  AWs氏の画像は單像のカラー。エリュシウムの内部の明部の分離は綺麗。アエテリアの暗斑は二重に割れている。オリュムピアの描冩も詳しくて、怪しげな細い暗線が横切っている。北極冠内に亀裂も見られ、附近に極地特有の黄塵がある様子。シュルティス・マイヨルは未だ朝方で覆う朝霧が蒼くみえる。マレ・キムメリウムの蟻ンコの様子は明確。ヘッラスが朝の境界にある。B像がほしい。

  MJs氏像はAWs氏より10°W遅れだが、シーイングが劣っていて、エリュシウムの内部など不明だが、Bでは白雲のところが明るく見えている。シュルティス・マイヨルはまだ蒼い。ヘッラスは10°W差では同じように見える。

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http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140309/AWs09Mar14.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140309/MJs09Mar14.jpg

 

(村上 昌己/  )  


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