2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#07

2014年三月の火星観測 (λ=096°Ls~110°Ls)

CMO #421 (25 April 2014)

-(その2) –

 

310日から19日まで (λ=100°Ls〜λ=105°Ls)


  10 March (λ=100°Ls~101°Ls): JPp氏とAVn氏がω=001°Wで、CPl氏がナントに戻ってω=012°Wで、EMr氏がω=068°Wで、Y MORITA (Mo)氏がω=212°W214°W224°Wで、T KUMAMORI (Km)氏がω=234°Wで撮像した。

  JPp氏の像は穏やかな像で、シュルティス・マイヨルの沈んだ跡に夕霧、アルギュレ邊りに極雲、B像では赤道帶霧も感じられる。シヌス・メリディアニはキレが然程好くないが、ブランガエナはRで成功しているからRGBでも見える。マルガリティフェル・シヌスの西方も好く描冩されている。マレ・アキダリウムはシヌス・サバエウスに比べても淡い。北極冠は南に突出しているように見える。IR像については、次のAVn氏の處で。

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  AVn氏の同じ角度の像はIR單像で、IR像はJPp氏像にも含まれ比較が出來る。同じIR685である。ブランガエナ近邊はJPp氏の像の方がシヌス・メリディアニやマルガリティフェル・シヌスの先端の両端からの絞りも含めて、しっかりしているが、マレ・アキダリウムの北西部近邊の描冩はAVn氏の方が好い。部位によって写りが違いますね。

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 CPl氏像は、良像で、シュルティス・マイヨルが遺した夕縁に白雲が二つの塊になっていることを示している。北の方はBでも濃く、Gで先鋭。Bで赤道帶霧は淡く見える。シヌス・サバエウスの西方の並びの暗色模様はどれも綺麗に出ている。アリュンの二本爪、マルガリティフェル・シヌスの二重構造、クリュセの南端の様子など 地上からも好く見えるじゃないか、といったところ。マレ・アキダリウムの内部分布もよく分かる。 北極冠の描写が些し足りないか。多分、複雑な動きがあるんでしょうな。形は前日のピクでのIR像の様なんでしょう。

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 EMr氏像は マレ・アキダリウムがやソリス・ラクスが夕方に來ている光景。ソリス・ラクスの本体や、ニロケラスの爪など可成り明確。朝方ではタルシス山頂が褐色の斑点、アスクラエウス雲が少々見えている。クリュセ東の夕端から赤道帶霧が朝方まで続いている。北極冠から湯気のような細い霧の筋が南西に出ている。 

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  Y MORITA (Mo)氏像は、マレ・キムメリウムの描写が此までで最高。CM近くにはエリュシウムで、内部の白雲と地肌の分離はOKである。白雲の方はB像にも出ている。アエテリア暗斑の微細構造も昨期と同じで好く描冩された。オリュムピアはリマ・ボレアリスを跨いで北極冠の南にある。オリュムプス・モンスは沈み、シュルティス・マイヨルはもう少しで顔を出す。

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 T KUMAMORI (Km)氏の今期初めての報告。シュルティス・マイヨルが朝に出ている。些し青味があるか。ヘッラスが白くリム上にある。エリュシウム雲は地肌から十分に分離されてない。オリュムピアは明るい。

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   11 March (λ=101°Ls): この日はD PARKER(DPk)氏がω=054°Wで、Mo氏がω=186°Wで、AVn氏がω=301°Wで撮像し、三方向からの観測である。

  DPk氏像は緩い暗色模様であるが、実はアガトダエモンからティトニウス・ラクスの邊りは必ずしも馴染みとは言えない詳細が出ているし、ニロケラスの鋏の部分もディテールに富んでいる。一方、ソリス・ラクスや マレ・エリュトゥラエウムの邊りは暈けまくっている。弱めのマレ・アキダリウムもそうである。これは上空に靄が分散しているからかも知れない。夕端からクリュセには赤道帶霧があるし、朝方には廣く濃淡のある朝霧が擴がっていて模様を隠している。G像とB像が格別に好いようである。北極冠の内部には明部が一様ではない。ヒュペルボレウス・ラクスは濃いが、南半球の暗さに比してドッコイドッコイである。

  Mo氏像の出来は前日に劣るが、オリュムプス・モンスの夕雲が出ているのが新しい。北極冠も冴えないが、より明るい部分が小さく左に寄っているようにみえる。。

  AVn氏の像はIR單像。シュルティス・マイヨルが夕方に來て、シヌス・メリディアニが朝早くに見える光景。リマ・ボレアリスに黄塵による切れ目があるかも知れない。IRで、ヘッラスは北極冠の明るさにも負ける。

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 12 March (λ=101°Ls~102°Ls): この日はMJs氏がω=200°WSBd氏がω=202°WMVl氏がω=210°W213°W217°WAVn氏が ω=304°Wでそれぞれ観測した。

  MJs氏像では午前のエリュシウム・モンスの雲がこぢんまりと小さく、RGB像ではアエテリア暗斑沿いの明地帶と分離している。小ささはGB像でも見られる。朝霧は濃い。オリュムプス・モンスの白雲は沈むところ。マレ・キムメリウムの描写が好い。北極冠は平たく、リマ・ボレアリスを挾んでオリュムピアが明白。

  SBd氏像でもエリュシウム・モンスの笠雲は小さく、後続の地肌の色と対照的。まだオリュムプス・モンスの夕雲は夕縁に留まっている。Gで綺麗。マレ・キムメリウムは可成り詳しく出ている。プレグラは二重構造を見せる。MJs氏同様、北極冠の南にオリュムピア。

  MVl氏のエリュシウム・モンス雲は三枚とも些し暈けて、地との対照がうまくない。寧ろR像で分離が出來る。アエテリア斑点の縦に割れているのは覗える。ω=217°Wではシュルティス・マイヨルが明確に像に入って來て居る。ω=213°Wから可能なのだが、この像は朝縁にartifactなものが殘っているので断念。オリュムピアの邊りはどれも分離している。

  AVn氏の像はIR像。シュルティス・マイヨルの北端から南部のホイヘンス邊りまで、好く出ていて、シヌス・メリディアニも朝方に見える。IRだけではオリュムピアも捕まえにくいし、ヘッラスも鈍い。

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 13 March (λ=102°Ls): JPp氏がω=326°WLAt氏がω=332°W+ω=342°WJSb氏がω=345°WCPl君がω=338°W+ω=352°WEMr氏がω=031°WDBt氏がω=041°WMJs氏がω=189°WJ KAZANASJKz)氏がω=194°Wに観察した。

   JPp氏像のRGB像はぼんやりした像だが、夕縁に沈む處のヘッラスは蒼白く、シュルティス・マイヨルの東側の夕霧はシュルティス・マイヨルにも被さっている。朝縁には勿論朝霧。赤道帶霧もうっすらと見える。北極冠はB光でも中央で南に飛び出している感じ。RGBIRで見ると、その先に黄塵の細い流れが南西方向に出ているか。LAt氏の兩像は餘り変わりがないが、両方ともシヌス・メリディアニやブランガエナの描冩がよい。IR(ω=344°W)も詳しいが、三像とも北極冠に詳細がない。JSb氏像も前二者と似ているが、マレ・アキダリウムは完全に内部に入って居て朝霧の影響も少なく、オクシア・パルス邊りは前二者より可成り這入って詳しい。北極冠も南へ膨らみ。

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  CPl氏のω=338°Wではヘッラスは些し殘っているほか、シュルティス・マイヨル上の白霧は青味をexplicitに帯びている。アエリアは沙漠の色合いと些し違う。ω=352°Wでは、ヘッラスはもう見えなくなり、シュルティス・マイヨル上の白霧(Bでは複雜)はアエリア北部にはみ出している。北極冠は南に凸型である。B像では赤道帶霧が顕著で、北極冠も縦型楕円である。ω=345°WIR像もある。

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  EMr氏像は然程締まりはないがスケールを大きく示している。マレ・アキダリウムはど真ん中だが、北西部の三角模様を遺して依然淡化している。RGBでは北極冠西南部に黄塵が下りて茶色になっている。可成り濃いヒュペルボレウス・ラクスに接している。B像でも覗える。Bでは赤道帶霧が明らか。

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  DBt氏の像はR像でクリュセの南端の模様が出ているか、と言った他は平凡。沙漠は赤く、暗色模様は蒼っぽい。Bにはやや赤道帶霧が出ているか、と言ったところ。

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MJs氏の像では蒼白い綿毛玉のオリュムプス・モンスが夕方に傑出している。エリュシウム・モンスの雲は実に小さくなり、先に南に向かって起っていた様子とは沈静化している。未だ朝方の所爲か。地の色の差は歴然である。プレグラの微細もやや見え邊りは茶褐色。B像での様子は面白く、赤道帶霧は淡く存在している。オリュムピアは明白。δ=13"になった。

 JKz氏はMJsのほぼ20分後の観測、但しカラー單像。オリュムプス・モンスは更に夕端に寄ったが綿毛玉の勢いは変わらない。エリュシウム雲は些し暈けてきたか。然し芯はある如し。マレ・キムメリウムの蟻ンコは出ている。オリュムピアは明確。朝霧は強く見える。

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    14 March (λ=102°Ls): 先ずCPl氏がω=319°WXDp氏がω=002°WDBt氏がω=017°WMo氏がω=169°WM KADRASIS (MKd)氏がω=278°W(その他Rω=262°WIRω=288°W)で観測した。

  CPl氏の画像はRGBB、およびIR685に依るもので、RGBではヘッラスが内部に暗い影を見せながら青白く輝き、ヘッラスから吹き出したような淡い霧がBでもRGBでも見える。夕霧はシュルティス・マイヨルに懸かっているのが判る。赤道帶霧は微弱である。北極冠は少し立っている。Bでも然り。アリュンの爪は明らかで、ホイヘンス・クレータも見える。IRω=326°Wのもので、ヘッラスは消えかかっている。

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  XDp氏像はカラー像とRBBでは赤道帶霧が出ていると言える。夕端のところはRGBでも見えている。ただ、朝端は明るさがゴーストラインを作っている感じである。北極冠立っているためか、RでもBでも小さく見える。18cmでも好く冩るものである。

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DBt氏像はR,G,Bともぼやけている。

  Mo氏像は夕方にオリュムプス・モンスやタルシスの白雲を見せている。北極冠の直ぐ南西には霧の拡がりがある。エリュシウムはぼんやりしている。

  MKd氏像は色が鈍いが、良像である。シュルティス・マイヨルの主な特徴、北端やホイヘンスなどは暈けながらも出ている。ヘッラスはGで綺麗。北極冠あたりは何かありそうだが、一寸描冩不足。リマボレアリスは明確で、オリュムピアも夕方にみえている。

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  15 March (λ=102°Ls~103°Ls): AVn氏のIRω=303°Wで、EMr氏がω=013°WT ISHIBASHI (Is)氏がω=141°Wで、Mo氏がω=149°Wで撮った。

  AVn氏のIR685像はシュルティス・マイヨルとシヌス・サバエウス中心の画像で、シヌス・メリディアニの二本爪まで出ている。ヘッラスはIR特有で、沙漠より暗い。内部に陰あり。北極冠は平べったく、朝方にヒュペルボレウス・ラクスが濃くくっついている。マレ・アキダリウムの本体は未だ出てこない。

  EMr氏像は詳細は大概Rで出ている。マレ・アキダリウムの左岸は南中近いが、淡く、矢張りヒュペルボレウス・ラクスの方が濃い。シュルティス・マイヨルは沈んでいるが、夕霧は殘っている。Bでは赤道帶霧が淡く見えている。北極冠は中に入った部分が円いコアの様になっている。アルギュレ邊りに白雲か。

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  Is氏の像はヴィデオから900枚をスタックしたようだが、北極冠が朧に感じられるだけで、何も冩っていないのと同然。

  Mo氏像も氣流は好くないようだが、オリュムプス・モンスの白雲は先行するタルシス白雲と分離し、GBで綺麗で、RGBのオリュムプス・モンス雲はコットン・ボール状。LRGBよりRGBが好い。北極冠の直ぐ南西には霧の擴がりがある。朝方のエリュシウム邊りは描冩不足。

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http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140315/Mo15Mar14.jpg

 

    16 March (λ=103°Ls):  XDp氏はω=295°W304°W322°Wの連作、FMl氏がω=007°Wω=019°WMo氏がω=139°Wで撮った。

  XDp氏像の第一像(ω=295°W)のヘッラスは興味のある様子をしており、先行部と後方の蔭が出て明部が巴型になっている。暗色模様の描冩も好く、細身のシュルティス・マイヨルではホイヘンスも出ているかという状況。シヌス・メリディアニが這入ってきており、逆側ではエリュシウムは沈むところか、白霧が夕縁に見える。Bではここからシュルティス・マイヨルを越えて赤道帶霧がほのかに見える。北極冠の周りには小規模の砂塵が起こっているようだ。第二のω=304°Wではヘッラスが些し回転して様子が違い、コアは西北側の明部が廣く見える。北極冠周邊は氣になるが、一寸像の大きさが小さいか。オリュムピアは夕端でくっきりしている。シヌス・メリディアニはやや中に入ったが、アリュンは分離しない。第三像は些し時間が空きすぎで、ヘッラスは最早縁だけ。その代わりアリュンの爪が分離し、マルガリティフェル・シヌスも這入ってきている。夕霧はシュルティス・マイヨルに被ってアエリアへ出ている。Bにも明白で、赤道帶霧が太く見えている。北極冠は起きあがってきている。オリュムピアは最早見えないが、霧を遺しているか。G像を省くのは好くないが、18cmでは秀逸な像群である。

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  FMl氏の二像は古式ゆかしいToucamの像だが、シヌス・メリディアニの形やマルガリティフェル・シヌスの北部など綺麗な描冩で、特にシヌス・メリディアニの南やマレ・アキダリウムの朝方、マルガリティフェル・シヌスの南側への白霧の廻り具合を描写している。沈んだシュルティス・マイヨルの跡の白霧は特にω=007°Wでは強い。北の暗色模様ではヒュペルボレウス・ラクスを濃く捉え、マレ・アキダリウムの北部の様子も好い。北極冠も鮮やかである。

  Mo氏の像は前日と10°W違い。矢張りLRGBよりRGBの方が好い像で、オリュムプス・モンスとタルシス雲の間は褐色の暗帯。雲の配置はB像で綺麗。夕端の霧もRGBでは深い。エリュシウムのあたりは前日よりも朝方でよく分からない。北極冠は二つに割れたような感じで、左()側がより明るい。

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   17 March (λ=103°Ls~104°Ls):  JPp氏がω=290°Wで、EMr氏がω=342°Wで、DPk氏がω=345°Wで、Km氏がω=146°Wで、AVn氏がω=263°Wでそれぞれ撮った。

 前日のXDp氏のω=295°W像に明らかであった興味深いヘッラスの内部構造がJPp氏像でも見られる。エリュシウム雲は夕端で些し強く出て、その後続が南中のシュルティス・マイヨルの東半分まで可成り濃く被っているように見える。被っているシュルティス・マイヨルの部分はやや蒼い。GBで見ると更に西へ出てアエリアまで伸びているかも知れない。北極冠も内部構造を示しているようで、Rで見ると北極冠右端から筋が南西に延びている感じがある(ω=294°WIR像でも)。オリュムピアは沈み掛けている。暗色模様ではホイヘンスが見える。シヌス・メリディアニは十分に這入ってきていない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140317/JPp17Mar14.jpg

 EMr氏の像はフランスから三時間半ほど後の像で、シュルティス・マイヨルは白霧を抱えて夕端に沈むところであるが、ホイヘンスが見えている。夕霧はアエリアへも出ている。赤道北側には霧が東西に漂っているごとくである。ヘッラスもおおかた沈んでいるが、西の外に白霧が流れている様子。朝方ではマルガリティフェル・シヌスが見えているが、その西側は大きく朝霧に包まれ、マレ・アキダリウムも然りで朝方は霧で淡く、東北部は既に、砂を被ったように淡くなっている。ただヒュペルボレウス・ラクスが濃く北極冠に接している。北極冠自身はくっきりしないが、些し起っていて、砂被りで朝方は白くない。なお、今回は未だ太く濃いマレ・セルペンティスの描写がない。ということは、このあたりは変化してきたか。

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 DPk氏の像はEMr氏の10分ほど後の像だが、北極冠の描冩が優れていて、Rで見ると、南北に分裂しているように見える。これはカスマ・ボレアレであろう。これはEMr氏像で感じられないとんでもない結果で、、前回のXDp氏やEMr氏のレヴューの際に感じられた傾向が、一体全体何處へ行ったのかという状況である。これはシミュレーションで追わなければ容易に納得することが出來ないだろうから、シーズン終了後考え、Noteに書こう。実は驚くことがもう一つある。先にCPl氏の9 Marchのピクでの観測をレヴューしたとき触れたが、IR像では、例のマレ・アキダリウムの東岸とオクススで囲まれる明るい筋状領域を横切って細いブリッジが横切っていることを記したが、DPk氏の像、特にR像に依れば。このブリッジは一寸した斑點がそのように見えた可能性をDPk氏の像は暗示しているという事である。DPk氏の像にはその他特筆しておかなければならないことがあるようだ。ヘッラスに関しては夕端に來て残滓があり、そこからノアキス方向に溢れ出た霧が問題になろう。赤道帶の夕霧は縁近くのシュルティス・マイヨルを越えてアエリア北部に流れ出ている。B像で見ると、赤道の北に帯状に霧が太く奔っていて朝方の霧に合流し、マレ・アキダリウムの南部に被っている。マレ・アキダリウム全体朝方は朝霧に覆われ、グラデーションが綺麗である。マレ・アキダリウムの東側に沿う明帯内部の詳細がこの畫像には出ている。霧から離れた暗色模様は詳細に富んでいて、シヌス・サバエウスやシヌス・メリディアニは美事であり、マレ・アキダリウムとウトピア(沈んで見えないが)間の細かな模様は原画を見て貰うほかない。もう一つ、北極冠の描冩も優れていて、Rで見ると、南北に分裂しているように見える。これはカスマ・ボレアレであろう。

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 Km氏の像はオリュムプス・モンスの南中過ぎの像で、雲を被っているオリュムプス・モンスと先行するタルシスあたりの夕雲が出ている。その間の淡い褐色帶が見えている。北極冠などの描冩は覚束ないが、二つコアに見えないことはない。

 AVn氏のIR像ではシュルティス・マイヨルが未だ朝方でヘッラスもリムにあると思うがIRでは輝きがない。一方エリュシウムは夕方で地肌の部分が明るい。微細構造ではヘスペリアとマレ・キムメリウムの絡みなど興味深い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140317/Km17Mar14.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140317/AVn17Mar14.jpg

 

   18 March (λ=104°Ls): XDp氏がω=271°W287°Wで観測、JPp氏がω=276°Wで、DBt氏がω=350°Wで、JKz氏がω=130°Wで、MKd氏が ω=214°W232°W253°Wで夫々観測した。

  XDp氏の像は、前々日と比較して、シュルティス・マイヨルが朝方に寄っており、シヌス・メリディアニなどは姿を見せないが、夕方ではエリュシウムが輝きながら沈むところ。ヘッラスの内部構造は前々日同様面白く出ている。北極冠域ではオリュムピアが沈むところだが、可成り明るい。カシウスの凸凹も出ている。赤道帶霧は太くシュルティス・マイヨル前後を奔っている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140318/XDp18Mar14.jpg

 JPp氏の画面でもエリュシウムは夕端近くで可成り明るい。Bでも然りだが、赤道帶霧は然程ではない。但しシュルティス・マイヨル北部は濃紺である。ホイヘンスも明らか。しかし、ヘッラスの構造は些し暈けている。オリュムピアはR, Gで見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140318/JPp18Mar14.jpg

 DBt氏のR像はなかなか秀逸で、LRGBではL起源の朝霧が密に被って綺麗な描冩。マレ・アキダリウム南部は朝霧の影響を受けている。ヒュペルボレウス・ラクスはマレ・アキダリウムより遙かに濃い。夕端に殆ど没したシュルティス・マイヨルから流れる夕霧もLRGBでは見えている。Bでは暗色模様が出過ぎるようだ。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140318/DBt18Mar14.jpg

  JKz氏の画像はオリュムプス・モンスを中央で捉えている。白雲は可成りコンパクトで、タルシスの方でも局所化しているように見える。クサンテの方は夕霧で真っ白である。北極冠は南側に小さめの明るいコアがあり(その近傍は砂色)、昇ってくるオリュムピアも明るい(但し局在化しているのでオリュムピアの破片かも知れない)。暗色模様はめぼしい詳細が出ていない。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140318/JKz18Mar14.jpg

MKd氏の三像はエリュシウムを中央から夕方まで追っているが、夕方になるほど明るさは増す。但し、内部の詳しさに乏しい。ω=214°Wではオリュムプス・モンスの雲の残りが夕端で明るい。一方、ω=253°Wの像ではエリュシウムから出た太い霧状のバンドが一旦南に向かい、一転してまた弧を描いて降りてきて、シュルティス・マイヨルを掠める(B像は無いが、LRGBで読める)。シュルティス・マイヨルも紺色になっている他、夕方のマレ・キムメリウムの描冩など平均以上と思う。夕方のオリュムピアも見えている。ヘッラスは這入ってきていて可成り白さが強い。ウトピアは太い砂塵が南北に出ているかも知れない。なお、エリュシウム内の明るさの分離も出來るように思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140318/MKd18Mar14.jpg

 

    19 March (λ=104°Ls~105°Ls):  D PEACH (DPc)氏がω=272°WDBt氏がω=344°WJ BOUDREAU(JBd)氏がω=347°WMVl氏がω=092°W098°W109°W112°W115°W124°W130°WJKz氏がω=116°WMJs氏がω=128°WSBd氏がω=140°WBCr氏がω=146°Wで撮像した。

   DPc氏の北極冠はやや微細構造が出ている様子。リマ・ボレアリスの並びのダークフリンジを横切る細い黄塵も見える。オリュムピアは沈むところ。エリュシウムも夕縁に近く白雲が濃く起っている。B像では赤道帶霧が幅広く出ている。ヘッラスも中に入って濃く白く、霧がはみ出している様子。ホイヘンス・クレータは明確。朝縁にマレ・アキダリウムの北部先端が些し顔を出しているのは美事。

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  DBt氏像では、クリュセの朝霧が濃く、夕端ではヘッラスが些し見え、夕霧はシュルティス・マイヨルの北部を侵して沙漠に入って居る様子。アリュンの二本爪も見えている。マレ・アキダリウムは南部は朝霧で淡く、北部は些し濃度があるが、ヒュペルボレウス・ラクスの濃さには適わない。北極冠の詳細は不明。

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 JBd氏の像は、可成り上質で、シヌス・サバエウスからシヌス・メリディアニの詳細は美事。マレ・アキダリウムは朝霧を伴うが、正常に見える。ヒュペルボレウス・ラクスは濃いが、北極冠の北部に接する邊りは、些し砂塵で汚れている感じ。北極冠の南部はカスマによって北部と分かれるようで、より白さが目立つ。Rではマレ・アキダリウムの東側の明帯の中に"斑點"が横切っている。此はCPl氏の13March像に見えたものだが、此は更にDPk氏の17March像には斑點の並びで分解されている。JBd氏は37cmドール・カーカム使用である。

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 MVl氏像は過多だが、タルシス山系の雲やオリュムプス・モンスの雲の成り行きを追うことが出來よう。山頂の暗斑はどれにも多少出ている。オリュムプス・モンスはBで見ると、確かに雲は西山腹にある。これらの像で注目されるのは、北極冠とその周邊で、ω=115°W124°Wなどに好く表現されている。北極冠自身が東西に分かれて見え、西側がより明るく、東側は砂塵が被っている。リマ・ボレアリスを挾んで、南側には白斑が二點並んでおり、その些し離れたところにオリュムピアが這い上がっている風に見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140319/MVl19Mar14.jpg

  JKz氏像でもオリュムプス・モンスの西山腹の雲や、先行するタルシス山系の雲、更にはクサンテの夕雲も同様に押さえられていて、北極冠とその周邊も好く捉えられている。オリュムピアに先行する二つの白斑はB像で好く見える。北極冠内部西側の輝点は案外小さく、東側は廣く汚れている様子。

  MJs氏の像でもタルシス山系の白雲の拡がりは可成りシャープに出ていて、北極冠とその周邊も同じように把握されている。

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http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140319/MJs19Mar14.jpg

 

  SBd氏の像は更に美事で、オリュムプス・モンスの山頂やアスクラエウス・モンスの山頂は褐色系の暗點で、北極冠内部の明るい部分は棒状で立ちつつあるかも知れない。なお、オリュムピアに先行する白い斑點は四個あるように見える。暗色模様の様としては南でマレ・シレヌムが1986年来の姿を見せており、プレグラの二重構造は朝方だが、プロポンティスIと共に見える。

   BCr氏の像も鮮鋭度が高く、西山腹の雲は白く輝く。夕端近くには雲の拡がり。北極冠内の輝部は斜め棒状に起つ、オリュムピアに先行する斑點は三個は見える。コントラストが高い分、線状ゴーストが朝方縁に現れる。南端の様子は気に掛かる。

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http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140319/BCr19Mar14.jpg

 

 

 (村上 昌己/  )  


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