CMO #435 (25 June 2015) 和文お便りLtE Now

前号の和文LtE

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  ・・・・題名CMO/ISMO#434読了

発信: 26 May 2015 at 23:09 JST

 

政次先生、近内令一です。大変ご無沙汰しております。CMO/ISMO#434及び同日本語版非常に面白く読ませていただきました。アントニアヂのレポートはクセがありますが、非常に大まかな気象学的情報や、表面模様の大雑把なスケールの概況を押さえるには結構役立つので、このような形で概説していただけるのは非常にありがたく感じますです。
  Mare Acidaliumの記述は:「……50°N以北では東の方に膨らんでいて、南西に向けて尖がった形をしていた。」ということだと思います。19131227日のThomsonのスケッチはλ=016°Lsあたりかと思いますが、似た季節の写真やスケッチ(たとえば福井市自然史博物館研究報告第42号の南先生の1993124日のλ=030°Lsのスケッチ)では確かにそのように見えます。しかしFig.8Thomsonのスケッチでは全くそのようには見えませんですね。

  エリュシウム雲のノートも非常に興味深く拝読しました。エリュシウムは独特の地形で、アルバ・モンスに匹敵する広大なElysiumu Riseの真ん中に火星第5位の標高の大火山エリュシウム・モンスが聳え立つ、ということで、タルシストリオとも、アルバ・モンスとも異なる気象学的振る舞いを見せるようです。地上からの観測及び破れ提灯を概観したところでは、北半球の春分から秋分までのこのあたりに水蒸気の豊富な時期にはエリュシウム台地全体スケールの活発な山岳雲活動が目立ち、エリュシウム山に限局したスケールの雲の活動はやや見分け難くなります(衛星の画像でも、まして地上からの画像では)。衝近くではエリュシウム山自体が再帰性反射(に基づくと私は考えています)による衝効果でピカピカ輝きますからややこしいことこの上なく、詳細の分析にはR,G,B,IR,できれば+Vのフルセット画像の吟味が必須と感じます。

  1000q超径のエリュシウム台地全体のスケールとしては、タルシストリオのような顕著な棚引き山岳雲現象は見られないようです。これは高度のスケールの違いと、緯度を含めた位置的環境の違いによるものかと想像しています。かってペリエ君がエリュシウム山本体になぜ棚引き山岳雲が見られないのか?と疑問をぶつけてきたことがありました。私は、衛星画像のreviewから、火星上のほとんど総ての大火山(Apollinarisのようなやや小型のものも含めて)には季節を選べばoro-graphical cloud activityが必ず見られると考えていましたので、14 Feb.2013付の拙英文LtEでエリュシウム三火山に見られた破れ提灯による棚引き山岳雲の例を示しました:
Solar
Planetary LtE Now for CMO/ISMO #34 (CMO #408)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/ISMO_LtE408.htm

エリュシウム山の棚引き山岳雲は、λ=000°Ls及び180°Lsの昼夜平分時に必ず見られる年中季節行事のようなもので、北半球の春分時のそれはエリュシウム地域の山岳雲活動の幕開けを飾り、秋分時のそれはエリュシウム台地の山岳雲活動の終焉を告げるものと思えます。地球型の南北二つのハドリーセル循環が存在する短期間に一致するのも興味深いところです。……本日の火心太陽黄経はλ=348°Lsですから、もう数週間のうちに破れ提灯にエリュシウム山の棚引き山岳雲が捉えられることでしょう。2011年、2012年、及び2013年の同現象のMARCI/MRO画像によるモンタージュを添付いたします。

 

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  北半球の秋分から春分にかけての半火星年は火星の気温が高く、また地上からの観測条件も不利ですが、破れ提灯やMEX VMCを頼りになんとかエリュシウムの丸一火星年の気象的変化を把握してみたいとは考えております。またタルシス巨大火山群、エリュシウム地域の山岳雲活動は一筋縄では理解できず、明け方、夕方、そして多分夜間にも広い意味での山岳雲活動が多層的に絡み合って活動している節がありますので、文献的な検証も少しずつ進めて行けたらと思います。


  この511日で満65歳となりましたが、なんと業界の県支部の監事を断れない筋から押し付けられ増々多忙となります。巻頭論攷やノートはとても書けませんが、諸先輩の著述の和訳ならば多少時間をいただければお役に立てると考えております。

  観測は何とか続けたいと思っておりますが、効き目の右目がかなり弱ってきたので困っています。
デジタル撮像への転進/転身も検討する時期にきたようです。

また宜しくお願いいたします。

 

近内 令一 (石川町、福島県)

 


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