CMO #436 (25 July 2015) 和文お便りLtE Now

前号の和文LtE

最新のemailが上に來ています。


  ・・・題名:冥王星される降格

発信: 29 June 2015 at 22:44 JST

 

近内令一です。出張の嵐から帰還してペリエノート和訳作業に戻りました。
明後日あたりには完訳発信できると思います。

 先日シーハン先生の冥王星Q&Aエッセイを読んでいた時に、10年ほど前にplutoed”がアメリカで流行語大賞になったことを思い出しました。”降格させられる”という意味で、冥王星に同情したものです。世界的に話題になったようです:

http://blog.udn.com/profhuang/3178525

先日アメリカ人の友人に聞いたところ;Plutoed? Ah, it's plutoed to be no longer in vogue much any longer... と洒落で返されました。名詞の動詞化はよくある話ですが、固有名詞からの場合は長続きしないようですね。”江川る”と言っても今の若い人たちには何のこっちゃのように。パ二クる、テンパる、皮肉る、事故る、等々普通名詞からのは長持ちしますですね。そう言えば銀塩写真の時代によく使っていた”コンポジットする”は英語でも”composited”、”compositing”と使っていましたが、これも元はと言えば形容詞の動詞的用法だったのかな、と連想しました。

   また宜しくお願いいたします。

近内 令一 (石川町、福島県)

 

 

  ・・・題名RE: CMO435途中

発信: 22 June 2015 at 23:46 JST

 

拝復:CMO編集お疲れ様です。

この季節のfrosted Hellas の画像としては、ペリエの引用したGOPEACHの画像、そしてWESLEYの画像はいずれも35p~40pクラスの口径の現時点で極限に迫るhigh resolution imageだと思います。中でもWESLEYのギャラリー掲載の画像の仕上がりは独特で、一見霞がかった低コントラストなカラー画像に見えますが、その実階調豊かで、個々の模様の輪郭も鮮明で微細なところまで多様性に富み(…even the finest details show a rich diversity…)、私の好みの仕上がりかもしれません。というか、ここ2シーズンの眼視観測の経験からも感じるのですが、aphelion misty/cloudy Marsは最良シーイングではこんな風に (WESLEYの画像のような感じに) 眼視では見えるのだと思います。また、LtEの画像モンタージュでも示しましたが、WESLEYの画像には、Terby crater以外に、Hellas西方に点々と連なる中程度のサイズのfrosted cratersも白斑として明瞭に写っていて、画像全体的に信頼度が高いと思われます。

   一方、35pと41pの口径の差もあるかもしれませんが、GOPEACHの画像は処理やり過ぎで不自然です。一見凄まじいディテールの迫力ある画像ですが、最詳細レベルの模様は単調 (rather monotonic) で、極端な言い方をすれば、同じ太さのミミズがのたくっているように見えます。過剰画像処理の為せる業でしょう。衛星画像等で見ると、例のOxus Dark SegmentからはDeuteronilusProtonilus沿いに色々な大きさ、形の濃い暗斑が並んでいます。GOPEACHの画像ではどれも、光輪に囲まれた同じ大きさの不明瞭な丸い暗斑に見えます‧‧‧‧過剰処理するとmisty感は飛んで全体的にコントラストは上がるが、微細な斑点は回折限界のエアリーディスクの大きさに揃って単調にまとまってしまうのだと想像しています(明斑も同様だと思います)WESLEY (多分) モデストな画像処理では、これらの暗斑は形、大きさ、濃さでまだバラエティに富んでいます。このような、昔風に言うとナチュラルな画像上の方が、デリケートな所見を検討する際には確実性が高いようにも思えます。過剰処理の単独画像では、細かいレベルではどこに何が出るか判りません。波長域別個別画像セットも吟味できるのが望ましいことは言うまでもありません。

このような観点で観察すると、アングルは違いますが、Martin LEWIS16 May 201444.5pドブによる一発カラー画像も凄いと思います。最詳細部まで多様性があり (ODSの長円形の本性が明瞭です!)、階調も豊かで、ワインカラー部もよく判ります。

 

  つい長々と書きましたが、ペリエ君にケチをつける気は毛頭ありません。ノートの5行分の空きには画像なり、LtEへのリンクをつけていただくなり、南先生のお考えのようにどうぞ宜しくお願い申し上げます。

     また宜しくお願いいたします。

近内 令一 (石川町、福島県)

 

 

  ・・・題名RE: お見舞い

発信: 16 June 2015 at 17:09 JST

 

拝復:

 入院検査の結果も冠状動脈に大きな異常なしとのことでなによりです。ジーメンスは総合テクノロジーの多国籍企業で、医療機器部門でも傑出していますが、欠点は非常に高額なこと。ジーメンス製の歯科治療椅子は頑丈精密で歯科医師の憧れですが、一台ウン百万円で、メンテナンス、修理費用も目の玉が飛び出るほどです。循環器関係の診断機器ならば気の遠くなるようなリース代で、大学病院でもおいそれとは新型機に交換とは行かないかもしれません。余談ですがドイツのSiemens本社の社員はジーメンスと発音しますが、他は世界中どこの国でもシーメンスになってしまいました。英語の影響でしょうか。まあ、ビソーヴン、チョピン、パイキャッソー、ミヤラ‧サイアナム(シレーネスの海!)と聞いても何も感じなくなってますから敵性語に脳味噌の芯まで毒されてしまったものです、あーあ。

 シーハン先生の原稿和訳承知いたしました。私は冥王星に取り立てて思い込みもないので、惑星から降格しようが、復権しようがどうでもいいと思っていますが、思春期、青春時代からローヱル教の強い影響を受けたシーハン先生にとっては今回は特別なイヴェントということになるのでしょうね。冥王星の素顔、素性が明かされることについて、ソポクレースのオイディプース王のセリフを引用しているのはシーハン先生らしいですね。

 それよりも、大地震のちょっと後だったと思いますが、シーハンの“The Craters of Mars”に対してビーシュがLtEで“Craters on Pluto maybe!”(冥王星のクレーターもかよう!)と非道いイチャモンを付けたときに、“Craters on Pluto CAN BE”(冥王星の クレーターも可能!)というタイトルのLtEで私が援護射撃したことを思い出します。冥王星本体が壊れない限界の本体の1/3径のクレーターが存在して欠け際に位置すれば、光学計算上では8.2m口径のすばる望遠鏡に補償光学系を用いれば十分検出可能、という筋立てでした。そのような巨大クレーターをNew Horizonsが来月中旬のフライバイで冥王星上に捉えてくれたら面白いですね。

 

 また宜しくお願いいたします。

 

近内 令一 (石川町、福島県)

 

 

  ・・・・題名:追伸

発信: 11 June 2015 at 12:08 JST

 

 今朝方、MRO MARCI破れ提灯のJune 1~7の週分(λ=351354°Ls)の週間天気がアップされました。北半球春分近くのElysium Monsの棚引き山岳雲が出たか!?と期待しましたが、提灯が破れ過ぎで、肝心の地域がよく見えません()。すぐ北の独立火山Hecates Tholusからは東向きの短い棚引き雲が出始めているようにも思えます。次週アップには綺麗な棚引き山岳雲が捉えられるかと期待しております。但し、合による通信障害が心配です。

 

 Olympus Monsの棚引き山岳雲を生じさせる風の風向きですが、独立超高山ということで、troposphereの風が当たると考えれば、北半球の夏期の午後にこの地域のtroposphere中間部では北西向きの風が吹く、というシミュレーションの得られる気象モデルもあります。単純なハドリー循環に基づくモデルではなくて、理論立ては難しくて私には理解できません。

 

------- 追追伸 -------

Mesosphereの風向のシミュレーションでは、Elysiumu Mons地域の春分/秋分時の午後についても強い東向きの風が得られます。Elysium RiseElysium Monsのような複合的地形では山岳雲について多層的な分析が必要なのかと想像しております。

 

   また宜しくお願いいたします。

 

近内 令一 (石川町、福島県)

 

 

  ・・・・題名お見舞い

発信: 10 June 2015 at 22:56 JST

 

 南 政次先生、近内令一です。検査入院の結果はいかがでしたでしょうか。大事ないことを切望しております。

当方は相変わらず色々と多忙で、断れない宴席も多く、飲酒はできるだけ控えて体調を崩さないよう努めております。今月末には業界の健康診断があり、家内の命令でバリウム造影、各種腫瘍マーカー、他フルオプションで検査を受けますので一杯血を抜かれます。大事ないことを期待しております。

 

 さて、ペリエ君も#434のエリュシウム雲のノートの補充について何か書くようですが、実のところ私は、高山に棚引き山岳雲を生じさせる火星面の風向きについて十分理解できておりません。

 たとえば北半球の夏のオリュムプス山付近の風向きですが、単一のハドリーセルが存在して上行枝が北半球に、下行枝が南半球に位置するならば、ハドリー循環の戻り流は火星の地表面を北向きに、南半球から赤道を越えて北半球に向かうでしょう。この北向きの戻り流は南半球ではコリオリ力で進行方向の左に逸れて北西に向かうはずです(地球の南半球の南東貿易風のように)。この北向き戻り流が赤道を越えて北半球に入ると、今度はコリオリ効果で進行方向の右手に逸れて北東に向きを変えるはずです。したがってオリュムプス山のあたりでは南西からの地上風が吹くことになるでしょう。シンプルな Ames Mars Climate ModelによるNASAMars Todayの風速/風向予想図ではまさしくそのようになっております(λ=095°Lsの添付図参照)

 


 


 

 しかし#406のペリエノートの多くの画像にも示されるように、北半球の夏期のオリュムプス山の山岳雲は顕著に北西方向に棚引いており、この地域に南東からの地上風が卓越していることを示しています。この矛盾?はどうしたことでしょう?ペリエのハドリー循環の説明もよくわかりません。

 

 破れ提灯の所見から、春分/秋分の昼夜平分時にエリュシウム山の単独山体は短いながら明瞭な山岳雲の棚引き現象を示すと私は考えています。しかしながら、この時期特有の二相型のハドリー循環+コリオリ効果の考え方では、ハドリーセルの戻り流は地球の貿易風と同様西向き(東風)となるはずで、Mars Todayの予測図でもそのようになっています(λ=002°Lsの添付図参照)。しかし先のEメールに添付したMRO MARCIの画像のように、この時節のエリュシウム火山群の棚引き山岳雲は東方に伸びていて、西風が吹いていることを示しています。

 


 


 

 決定的な初歩的な理解不足、情報不足、誤解が私の方にあるのだと思いますので、さらに緻密な、大気の多層解析、地形の影響を含めた火星気象モデルのデータベースを昨年から調べ始めていますが、手に余ります。惑星気象学の専門家の解説をお聞きしたいものです。

 

   また宜しくお願いいたします。

近内 令一 (石川町、福島県)


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