Ten Years AGO  (72)   - CMO #108 (25 August 1991) -


 

 火星は、1991年八月には「しし座」を順行し月末には「おとめ座」へと移った。太陽との離角も月末には20度ほどになり、11月の「合」にむけてゆっくり接近していた。いよいよ追加報告の到着ももなくなり、観測のまとめに入っている。

 CMO#108の記事は、まず「E H コリンソン氏逝く」から始まる。マッキム (RMk)JBAAに書かれた追悼文からの抜粋と、筆者の南氏がもとBAA火星課長コリンソン氏を知るきっかけとなった山本一清先生訳の「火星(The Planet Mars)」と題される、1953年にコリンソン氏がBAAの総会で講演された内容の訳文が掲載されたパンフレットの紹介がある。

 次いで、1988CMO観測ノート(15)として「10月初めの Thaumasia Foelix上の朝霧について」がある。ICARUSに掲載されたヴァイキングの水蒸気の測定データー解析図を二つ紹介して、タイトルの時期に見られたSolis L周辺の強い朝霧との関連を説明している。地上からの観測結果と探査機のデーターを検討して、現象の解析に役立てる大切さを説かれている。

 今期の解析も始まって、1990 OAA Mars Section Note (1) 340°Ls360°Ls (Dec 1990)に於けるHellas南西の朝方の雲塊」が嚆矢で掲載された。1990年十二月に見られた南半球朝方縁の顕著な白雲についての考察で、上記ICARUSの図にある330°Ls付近で、南半球の水蒸気量が低緯度で増加するようになる事との関連を指摘している。

 「夜毎餘言XXII」 は「處変われば Topsy-turvy と題して、枕に日欧対比のルイス・フロイス著の小冊子の話を挙げて、「處変われば・・」の話へと続く。まずは臺北での体験談から始まる。我々の馴染んでいる漢字の横書きで、左読みか右読みかに関することである。『火星通信』の「介紹」も考えられたい。次いでスコットランド対イングランド、イギリス対フランスの対比となり、コインのターンの二通りのパターンから、両面書きの書類の書き方へと進み、最後は観測報告の時刻の筆記の話へと落ちる。時刻の表記には各国各様の習慣があり、いろいろあって当たり前で、特に統一する必要はないとする。世界各地の文化の多様性を理解して自分たちの習慣のスケールだけで判断せずに、視点を変えて見てみようと言うことを説いている。枕には南先生の研究のテーマも披瀝されており、是非再読されたい。 

 LtEは、冒頭にRoy CERRETA(Teramo, Italy)からのLtEが一通だけ掲載されていて、ご本人の観測方法と、イタリアでの火星観測事情が紹介されている。

 そのほか、正誤表、カンパ報告、編集後記が掲載されている。編集後記には福井のNj氏などのメンバーのこの夏の様子が紹介されている。

村上 昌己 (Mk)


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