特異銀河 (相互作用銀河・衝突銀河)
銀河には渦巻模様を持つ渦巻銀河、模様の見えない楕円銀河等が良く知られていますが、奇妙な形をした銀河も稀に存在します。 ここでは、比較的大きな銀河が相互作用している、或いは衝突して奇妙な形になっている銀河を見てみましょう。
銀河相互作用初期の銀河
まず写真の左下を見て下さい。Arp※1 94で、二つの銀河が衝突しかかっているところです。まださほど変な形にはなっていません。 宇宙は膨張しているのに銀河が衝突するなんてことがあるのかな?と思われるかもしれませんが、銀河同士の重力が宇宙膨張に勝って衝突することがあります。 実際アンドロメダ銀河(M31)も我々の銀河に近づいており、40億年ほどするとぶつかると考えられています。
※1 Arp 何番というのは、Arp という人が作った特異銀河写真集(Atlas of Peculiar Galaxies; 1966, 1978)の何番目という意味の銀河名です。 NGC銀河とかぶる場合もあり、例えば、Arp 94はNGC 3226とNGC 3227のペアを指します。
銀河相互作用が進んだ銀河
写真上段のArp 105, Arp 273, Arp 290の3つの系では、二つの銀河がペアのようになっていて、銀河から延びた構造(tailやbridgeと呼ぶことが多い)が見えています。 このような構造は、もともと銀河の中に存在していた星やガスが潮汐力によって引き延ばされて銀河の外側に出てくることで形成されます。 特に、左上のArp 105では2つの銀河のペアの上方向に淡い銀河がいますが、ここまで延びた構造も見えています。
多重衝突銀河
もっと多くの銀河がお互いに重力相互作用している系もあり、写真中央とその右はそれぞれ、Arp 143とArp 319で、 数個の銀河がほぼ同じ場所に存在していて複雑に相互作用している現場です。 こういった銀河の集団は銀河群と呼ばれますが、特にこのような密集した銀河群はコンパクト銀河群と呼ばれます。 ちなみにArp 319には、ステファンの五つ子という愛称があるのですが、左下の円盤銀河は他の4つの銀河よりずっと手前に存在していて、本当は四つ子です。
衝突晩期

(右:2MASS Image Service より)
写真下中央(Arp 157)とその右(NGC 2146)は、銀河衝突がより進んだものと考えられます。これらの系では、ダストによる吸収が激しく、そのせいでよけい奇妙な形に見えます。 顕著な例としてArp 157を見てみましょう。何がどう相互作用しているのかよくわからない感じですが(3つほどの銀河が相互作用しているようにも見えます)、 これはダストによる吸収のせいです。 ダスト吸収の影響が小さい、波長2μm付近の赤外線でみると、大きな銀河(下側)のすぐ右上にやや小ぶりの銀河が接近していることが明らかです。 大きい方の銀河にダストが多く存在していて星の光を吸収し、変な形に見えていることがわかります。 Arp 157やNGC 2146のような衝突銀河には、ダストや分子ガスが大量に存在し、活発な星形成が起こっていることがあります。 この時、大質量星も多数誕生し、それらが寿命を迎えて超新星として爆発します。 実際、NGC 2146では、過去約20年間に3つも超新星が出現しました。 NGC 2146の画像中に、SN 2024abflと示されている天体が見えていますが、これは、2024年に出現した、重い星の最期の爆発による超新星です。
トップ画像
Ⓒ 京都大学岡山天文台/ 東京大学
高解像度版(6382x3688pix, 9.3MB)
Arp 105 (NGC 3561) |
Arp 273 (UGC 1810, 1813) |
Arp 290 (IC 195, 196) |
Arp 94 (NGC 3226, 3227) |
Arp 143 (NGC 2444, 2445) |
Arp 319 (NGC 7317-7320, Stephan's Quintet) |
Arp 157 (NGC 520) |
NGC 2146 |