※恒星間天体の 3I/ATLAS とは別の天体です
2025年11月20日の早朝にせいめい望遠鏡を用いて撮影したアトラス彗星 C/2025 K1 です。 2025年5月に発見されたこの彗星は10月8日に太陽に最接近したあと、11月10日に核が分裂しているのが見つかりました。 この画像でも3つに分裂してた核がはっきりと写っています。 せいめい望遠鏡では11月15と17日にもこの彗星を観測しており、図1のコマ送り動画として見ると3つの核が徐々に離れていく様子がわかります。 なおこれらの観測時には天球上を移動する彗星を追尾して撮影しているため、背景の星が線状に写っています。
彗星は、水や一酸化炭素などの氷をはじめ、多くの揮発性物質を含む天体です。 太陽へ近づいて表面温度が上昇すると、これらの物質が昇華してガスが発生し、塵とともに放出されることで、特徴的なコマや尾が形成されます。 活動がとくに活発になると、彗星は突然明るさが増す「アウトバースト」を起こすことがあり、その過程で彗星核が複数に分裂する場合もあります。 彗星は太陽系形成時の物質を閉じ込めた天体ですが、通常時に観測できる表面は宇宙空間の環境によって変質しています。 分裂彗星では内部の物質が露出するため、太陽系形成時の状態が保存された物質を直接調べることができる貴重な研究対象となります。
今回観測した C/2025 K1 は、まさにその分裂彗星の一例です。分裂の報告からわずか一週間以内にせいめい望遠鏡による追跡観測を開始し、3日間のデータを取得することに成功しました。 短期間で連続的に得られた観測データからは、分裂した核がどのように進化しているかを明瞭に捉えることができています。 せいめい望遠鏡の多色同時撮像観測は、彗星核の各要素がどのような軌道進化をたどるのか、核同士の成分が一様かどうか、さらには未発見の分裂核が存在するかといった、 分裂彗星の多様な物理的、力学的性質を解明する手がかりを与えてくれます。 C/2025 K1 は比較的明るい彗星であるため世界各地で観測が進んでおり、今回取得したデータを世界各地の観測結果と組み合わせることで、 この彗星の詳細な物理特性に迫る研究が今後さらに進展すると期待されます。
紅山 仁 (コートダジュール天文台 / 東京大学)
地球に接近する小型の小惑星を中心に観測し、その性質について調べている。
※このページに掲載している動画・画像は、せいめい望遠鏡で紅山さんが観測したデータをご提供いただき作成しました。
2025年11月19日29時19分(JST)
観測装置:TriCCS
露光時間:g, r, i各バンド 100秒
写野:12.3x7.2 arcmin
Ⓒ 京都大学岡山天文台/ 東京大学