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高校生観測実習を開催しました ―せいめい望遠鏡で銀河を観測し、宇宙の膨張を探る―

概要

京都大学岡山天文台では、2026年3月26日(木)・27日(金)の2日間、地元の金光学園高等学校から高校1年生5名と引率教員3名を迎え、せいめい望遠鏡を用いた観測実習を実施しました。 参加者は、銀河の分光観測とデータ解析に取り組み、観測データをもとに宇宙の膨張を調べました。 せいめい望遠鏡ではこれまで大学生向けの実習を行ってきましたが、高校生を対象とした観測実習は今回が初めての試みです。

実習内容

今回の実習では、さまざまな距離にある銀河を対象に分光観測を行い、得られたスペクトルデータの解析を通して、銀河の後退速度や宇宙の膨張について調べました。

実習は、国内最大の光学望遠鏡である口径3.8mのせいめい望遠鏡と観測装置の見学から始まりました。 せいめい望遠鏡は大学の研究者たちが中心となって開発された望遠鏡で、独自の仕組みを持つ部分もあります。 参加者からは、望遠鏡の構造そのものに関する質問もあり、その細かな仕組みにも強い関心が向けられていました。 その後の講義では、宇宙が膨張していることを観測からどのように調べるのか、また分光観測によって銀河の光の波長のずれを測り、 銀河が私たちから遠ざかっていることをどのように読み取るのかについて学びました。昼休みには、隣接する浅口市天文博物館も見学しました。 その後は、実際の観測データを用いた解析練習や、夜の観測に向けた準備を進めました。

夜の観測では、参加者は2つのグループに分かれ、望遠鏡の操作を行い、可視光3バンド同時撮像分光装置 TriCCS を用いて銀河の分光観測を行いました。 分光観測では、銀河を非常に狭いスリットに正確に導く必要があり、画面を見ながら望遠鏡の位置を細かく調整し、観測記録を取りながら作業を進めました。 各自が役割を分担しながら観測を進め、はじめは戸惑う様子も見られましたが、しだいに手順をつかみ、協力して作業を進める姿が印象的でした。

せいめい望遠鏡と観測装置について説明を受ける参加者
せいめい望遠鏡と観測装置について説明を受ける参加者
協力しながら観測する参加者
協力しながら観測する参加者

2日目には、取得したスペクトルデータをもとに解析を進めました。データ処理は決して簡単ではなく、根気のいる作業でしたが、最後までやり切り、銀河の後退速度を見積もることができました。 さらに、それを別の観測から調べられている距離と組み合わせて、宇宙の膨張率、すなわちハッブル定数を求めました。夜は引き続き観測を行い、銀河のほかにも月面や木星、参加者が希望した星も観測しました。 「今回の実習テーマ以外にもエスキモー星雲の撮像など、普段できない観測をさせていただき感激しました。」と参加した生徒は実習を振り返ります。 今回の実習の指導にあたった川端美穂 特定助教は、「高校生向けの観測実習は他の機関や望遠鏡でも実施されていますが、 今回はせいめい望遠鏡の口径や機動力を生かせる内容を目指し、宇宙膨張をテーマに設定しました。 その分、内容はやや高度で、解析するデータ量も多い密度の高い実習となりましたが、無事に終えることができました。 この実習を通じて、将来のせいめい望遠鏡の利用者、天文学を志す生徒が少しでも増えてくれることを期待しています。」と、今回の実習を振り返りました。

銀河のデータを解析する参加者
銀河のデータを解析する参加者
観測結果をもとに宇宙膨張について考察する様子
観測結果をもとに宇宙膨張について考察する様子
参加者が撮影して解析した銀河の画像とスペクトルの例
参加者が撮影して解析した銀河の画像とスペクトルの例

今回は、天気予報では不安の残る状況でしたが、幸運にも2日間とも晴天に恵まれ、観測と解析の両方を予定どおり進めることができました。 望遠鏡で天体を観測するだけでなく、得られたデータを自分たちで解析し、その結果をもとに宇宙の膨張というテーマに迫ったことが、今回の実習の大きな特徴です。 参加者にとって、天文学の研究が観測・解析・考察の積み重ねで成り立っていることを実感する2日間となりました。

謝辞

今回の初開催にあたっては、金光学園高等学校の教員の皆様をはじめ、国立天文台岡山分室、浅口市天文博物館、他大学での観測実習経験者の方々、京都大学関係者から多くの助言と協力をいただきました。 ここに感謝申し上げます。