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はじめに

平成11年度は当天文台にとって、この数年来力を注いできた 新しい活動システムの整備が、色々な面で実を結び始め、更に これらに新たな推進力が加わって加速し始めた、重要な節目の年でありました。

この年創立70周年を迎えた花山天文台では、平成11年11月27日に、長尾真 京都大学総長 、丸山正樹大学院理学研究科長をはじめとした約100名の 方々の御列席を得て、記念講演会と記念祝賀会を開催し、今後の発展への 決意を新たに致しました。

この記念事業に先だって、花山山頂まで光ケーブルが敷設され、デジタル データ通信回線がこれまでの128 Kbpsから1.8 Mbpsまで一挙に高速化されました。 これによって、大容量天体画像データも迅速に送受信することが可能となり、 飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡で撮影された高分解太陽像をリアルタイムで 花山天文台に転送して、公開する実験等も行われました。

70周年事業の一環として、花山天文台の一般公開を実施しましたが、大変な 盛況で、市民の皆さんの宇宙に対する素朴な興味と天文台への親しみに触れて、 我々自身も大変勇気ずけられました。 公開での案内の主役は、数少ない職員よりもむしろ、大学院学生と学部学生でした。 天文台設備や研究成果の紹介パネル・ビデオ等の製作にも活躍して、学生諸君に とっても良い経験になったようです。 飛騨天文台では既に毎年一般公開を行っていますが、これを契機に花山天文台でも 定着させて行きたいと考えております。

平成10年度に創立30周年の記念事業を行った飛騨天文台では、その際に 新設されたデジタルデータ通信システムを活用した教育研究が盛んに行われました。 特に、これを用いることによって、ドームレス太陽望遠鏡と、TRACE・YOHKOH衛星 等との国際協同太陽観測が、効率良く行われるようになり、太陽活動現象の 多波長同時観測による総合的な解析研究が益々盛んに行われるようになりました。

両天文台における教育研究活動の活発化に伴って、観測・解析・装置開発の 実働部隊としてのポスドク非常勤研究員や、観測・データ整理・解析の補助を 行なう研究支援職員の果たす役割が非常に大きくなりました。 行政職員の定員削減が進み、常勤技術職員の不足が危機的な状況にある中で、 これらの非常勤職員が更に力を発揮出来る条件を拡充していくことが益々重要と なって来ております。

常勤職員では、柴田一成氏の教授就任が11年度において特筆されるものであります。 柴田教授は、太陽を基盤とした宇宙磁気プラズマ活動現象の研究の専門家であります。 当天文台では、当面の最重要課題として「太陽面爆発現象の研究」の推進と 「太陽研究を基盤とした恒星銀河活動の研究」の開拓を掲げて、多チャンネル 高分解能太陽撮像装置及び1.6 m光学赤外望遠鏡を概算要求しております。 柴田教授の加入によって、これらの特徴ある観測天文学の教育研究を、今後とも 更に推進し、次代を担うべき若手研究者、大学院学生や学部学生がそれぞれに 十分活動出来る教育研究施設として更に発展させて行きたいと考えております。

平成12年 8月
京都大学大学院理学研究科附属天文台
台長 黒河宏企



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