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はじめに


平成12年度は、当天文台にとって、平成10年の飛騨天文台30周年、 平成11年の花山天文台70周年記念を経て、更なる新しい活動の ステップを踏み出した年でありました。 様々な教育研究活動が当天文台を舞台に活発に繰り広げられ、多くの 成果を挙げることが出来ました。 部分的ではありますが、教育研究環境の整備も進めることが出来ました。 関係各位のご尽力とご支援にあらためて感謝を申し上げる次第であります。


理工系離れと入学生の学力低下、小中高における理数教育内容の低下など、 科学技術立国をめざす我が国にとって、早急に改善すべき問題が多い中で、 大学における理学教育の果たすべき役割は一段とその重要性を増しております。 又一方で、21世紀は、宇宙ステーションの建設開始や月・火星基地の 建設計画に見られるように、人類が宇宙での活動を本格化させる時代であり、 宇宙への国民の関心も確実に高まっていると云えます。

当天文台は創設以来、宇宙の中でも我々にとって最も関係の深い太陽及び 太陽系天体の観測研究に最も重点を置いて、多くの教育研究成果を挙げきて おりますが、更にこれからの宇宙時代に向けて、太陽活動の研究を基盤とした 宇宙天気研究、太陽型宇宙活動研究など、分野横断的な新しい教育研究を 発展させると共に、人材の育成、青少年を中心とした生涯教育への貢献など、 当天文台の活動を一段と高めて行く必要があると考えております。


飛騨天文台では、データ通信回線を従来の384 Kbpsから1.5 Mbpsに高速化する と共に、通信時間料金方式から専用回線方式への切り替えを行いました。 飛騨天文台に最も近いSINETノード校である金沢大学までの専用回線を 設置することにより、コスト減を計り実現したものです。 これによって、人工衛星や世界主要天文台との国際協同観測及び 花山・飛騨両天文台の連携による画像データ解析が一段と 促進されることになりました。

11月にはこの高速専用回線を用いて、花山・飛騨天文台連携同時一般公開を 「太陽宇宙デジタルライブ」と銘打って開催しました。 文部科学省の「大学等地域開放特別事業」の後援も得て行われ、 訪れた小学生からお年寄りまで広い年齢層の方々に大変好評でした。 職員の少ない当天文台では、一般公開の準備や当日の案内における主役は、 大学院生と学部学生諸君でした。 自分たちの研究を研究者仲間にではなく、一般の人々に判りやすく説明する という案外難しく大切な課題を実践する場として、学生諸君にとって も、良い体験になったのではないかと思っております。


平成12年10月には、ゲッチンゲン大学のポスドク研究員であった 野上大作君が助手として採用され、飛騨天文台に赴任しました。 野上君は激変星など恒星活動の研究において、多くの成果を挙げている 大変元気な若手であります。 彼の加入によって、当天文台が新しく推進しようとしているテーマの 一つである「太陽活動研究を基盤とした恒星銀河活動の研究」にとって、 新しいステップが踏み出されたものと考えております。


平成13年 9月
京都大学大学院理学研究科附属天文台
台長 黒河宏企



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