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(21) 太陽フレアに伴うプラズマの噴出現象

普段、我々が目にする太陽はとても穏やかです。しかし、近年の衛星観測によっ て、その活動は驚くほど激しいものであることがわかってきました。太陽フレ アと呼ばれる太陽爆発現象は、その規模の大小はあるにせよ日常的に起こり、 膨大なエネルギーを解放し、プラズマの噴出を伴うこともあります。そのプラ ズマが地球まで到達し、地球磁気圏と相互作用して見られるのがオーロラです。 また、飛んで来たプラズマが地球上の送電線に異常電流を誘導し、破壊するこ ともあります。我々は、太陽で起きた爆発現象を実際の生活で間接的にではあ りますが触れているのです。

爆発に伴って太陽から、硬X線、軟X線、線などの電磁波が放射される ことがあります。現在、この太陽の爆発現象(太陽フレア)を説明する理論とし て、磁気リコネクション(磁力線の再結合)と呼ばれる理論があります。この理 論では、再結合点の上空にプラズマの塊が存在し、磁気リコネクションの結果、 その塊が噴出すると考えられています。

本研究では、Yohkoh衛星に搭載された硬X線望遠鏡と軟X線望遠鏡を用いて、 2000年11月24日に起きたフレアを解析しました。その結果、プラズマの塊は硬 X線が放射される度に噴出し、加速を受けていることが確認できました。この 結果はリコネクション理論で予想される硬X線の放射と噴出プラズマの関係を 強く支持するものです。今回解析したフレアは、膨大なエネルギーを解放した イベントなので、大量のプラズマが噴出し、加速を受けたと考えられます。こ のことから、プラズマの噴出が確認されないフレアでも現在の観測性能では検 出されない程度のプラズマの噴出、及び加速があるのではないかと、推測され ます。

2002年にRHESSI、2005年にSolar-Bが打ち上げられ、現在より高分解な衛星観 測が可能になります。この種の研究は更に詳細な解析が可能となり、磁気リコ ネクション理論の確立、更には我々の生活と大いに関係のある太陽フレアの解 明を目指します。

(高崎 宏之 記)



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