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太陽磁場活動望遠鏡による磁場測定

2002年度に飛騨天文台に建設された太陽磁場活動望遠鏡(SMART)の最も 重要な役割の一つが、フィルタマグネトグラフによる高精度・高時間 空間分解能での太陽全面のベクトル磁場マップの取得です。 このマグネトグラフにおいては、

(1) コーティング式のプレフィルタについて、コーティングに依る太陽光中の偏光へ の影響が極力出ないようなのコーティング法を採用(太陽面上磁場はその大きさ や向きに応じて太陽光に特定の偏光成分を生じさせます)。

(2) 主要なレンズは特別に長時間冷却(ファインアニール)を施し、内部歪量を 微量に抑制。

(3) 太陽光中の偏光を解析するための回転式波長板の回転精度誤差や位相差ムラ を極限まで抑制。

(4) 視野端からの傾斜した光線に対しても各種フィルタにおいて波長シフトが 十分小さく抑えられる光学系を設計。

(5) 偏光フリーなファブリペローフィルタチャンネルを用意する事で、直交する 2偏光状態のフィルタグラムを同時取得し、地球大気擾乱の影響の軽減も可能。

(6) 高画素数CCDチップの中でも、最も感度の良いものを採用して測光ノイズを軽減。

(7) CCDカメラメモリーからのデータ転送に現在最速のインターフェースを採用。

(8) 吸収線のドップラーシフトやフィルタの透過プロファイルのムラの影響を 抑制できる4波長シフト式フィルタグラフを採用。

などと言った様々な研究・工夫を重ねて来ており、空間分解能的には勿論、磁場精度 的にも、時間分解能的にも、ベクトル磁場配置と太陽活動現象との相関関係を、 未だかつて無い高精度で調査する事が可能な観測装置となるでしょう。



(上野 悟 記)



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