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太陽フレアと巨大アーケード

太陽コロナでは多くの現象が起こっており、特に注目される現象が「太陽フレア」 です(左の図)。太陽フレアは太陽表面の一部分で発生し、ごく短時間 に大量のエネルギーを放出する現象です。そして、 ここでもうひとつ注目する 現象が「巨大アーケード」と呼ばれる現象です(中央の図)。 巨大アーケードは、大きい場合では太陽半径程度のスケールにもなり、一日以上 もの間、光り続ける例もあります。しかし、単位時間に発生するエネルギーはフ レアと比べてとても小さく、今までは余り注目されませんでした。

1991年に打ち上げられた科学衛星「ようこう」により、フレアと巨大アーケード がカスプ形状(ロウソクの炎の形状)を持つことが明らかになりました。カスプ 形状は、フレアのエネルギー開放機構と考えられる磁気リコネクションと密接に 関係しており、今ではフレアと巨大アーケードは同じ物理現象ではないかと考え られています。

今回の研究では、フレアと巨大アーケードは、磁気リコネクションによるエネル ギーの発生量とコロナから彩層への熱伝導によって失われるエネルギーが等しい と考え、温度などの観測可能な物理量から、フレアと巨大アーケードの大きさ (長さ)を推定し、実際の大きさと比較しました。 右の図が、予測される大きさと実際の大きさを比較したものです。図を見ると、 多少のばらつきはありますが、予測される大きさと実際の大きさはよく一致して います。従って今回の研究は、太陽フレアも巨大アーケードも、同じく磁気リコ ネクションによって加熱される物理現象であることを示します。

付け加えますと、さらにこの結果は、「恒星フレア」にも関係しています。恒星 フレアは地球からとても遠くで起こるため、実際の大きさや他の物理量はよく分 かりません。しかし、仮に恒星フレアも太陽フレアと同じ物理現象であると考え、 そのX線量から分かる温度などの物理量を使えば、今回と同じ方法でその大きさ を推定できます。

(山本 哲也 記)



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