CMO/ISMO 2022/23 観測レポート#18

2023年七月の火星観測報告

 (λ=085°Ls ~λ=098°Ls)

2022/23年接近の観測報告集計

村上 昌己・西田 昭徳

CMO #530 (10 August 2023)


・・・・・・ 今接近期最後のレポートは、十八回目となり、『火星通信』に送られてきた七月中の撮影画像より作成した。火星は七月には「しし座」で順行を続けて、10日にはレグルスの北を通過して赤緯を下げていって、21日にはは10Nを下回ってしまった。日没時の高度も月末には20゚程に低くなり、視直径も4秒角を切って今接近期の観測は終了となった。

 


 

七月には、火星の暦は、季節(λ)λ=085°Lsから098°Lsまで北半球の夏至を越えて進んだ。視直径(δ)は、δ=4.2”からδ=3.9”にまで減少して、暗色模様を捉えることも難しくなった。中央緯度(φ)22°N台から<φ=25°N台と大きく北を向いている。位相角(ι)26°から、月末にはι=21°まで減って丸みが戻った。

 

この季節の視直径の大きな時の記事は、2012年の小接近時にあり、以下のリンクから辿れる。

CMO#397 (16 March~31 March 2012, λ=084°~091°Ls, δ=13.7~12.6”)

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/397_Repo09.htm

CMO#398 (1 April ~30 April 2012, λ=091°~104°Ls, δ=12..6~10.0”)

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/398/398_Repo10.htm

この期間には、火星面朝方の縁からの飛び出し現象が多発して捉えられている。当時は太陽の活動期にあたり、CME (Coronal mass ejection) も多発していて関連性が指摘されている。次回の2024/2025年の接近期も太陽活動は極大期にあたり、同様の現象が捉えられる可能性が高い。ご参照のこと。

CME(コロナ質量放出)  https://en.wikipedia.org/wiki/Coronal_mass_ejection  英語

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E8%B3%AA%E9%87%8F%E6%94%BE%E5%87%BA 日本語

 

 

・・・・・・ 七月の火星面の様子

 ○ 火星面概況

七月にも、入信した画像はメリッロ(FMl)氏とルウィス(MLw)氏の二名からの五日間のものだけとなってしまった。お二人には、今期も最後まで火星に望遠鏡を向けていただけたことに感謝したい。

以下にすべての画像を並べてみた。

 


 

七月前半までは、日没時の高度もまだ高くシーイングの良好なときもあり、主たる暗色模様や、季節的な北極域やヘッラスの明るさなどが捉えられている。後半のメリッロ氏の画像では、暗色模様の少ない経度となり、ほとんど特徴は捉えられなくなってしまった。

 

 

・・・・・・ 七月の観測報告

七月に寄せられた観測報告は、追加観測も含めて以下の三名からの14観測となってしまった。

七月の画像は上図にとりあげたものだが、追加画像は以下のリストのリンクから辿れる。

 

マーチン・ルウィス (MLw) セント・アルバンス、英国

   LEWIS, Martin (MLw)  St. Albans, Hertfordshire, the UK

      1 IR Image (6 July 2023)  45cm Dobsonian, with a Mars M -U

      https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2022/index_MLw.html

 

フランク・メリッ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

   MELILLO, Frank J (FMl)  Holtsville, NY, the USA

      4 Colour 1 R* Images (4, 6, 12, 22*, 30 July 2023)

                                     25cm SCT with an ASI 120MC & DMK21AU618.AS*

      https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2022/index_FMl.html

 

追加報

マノス・カルダシ (MKd)   アテネ、ギリシャ

   KARDASIS, Manos (MKd)  Glyfada-Athens, GREECE

      8 Colour Images (17 ~19, 23 February; 3, 14, 15 March 2023)  36cm SCT with an ASI 290MM,

       https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2022/index_MKd.html

 

 

・・・・・・ 2022/23年接近の観測集計

 今接近の報告は、24名の方々から合計931件であった。1件としては、火星面経度(ω)5゚違うものをIR画像を含めて数えている。各地域ごとの内訳は以下のようになった。アジアの1名は、セブ島に観測所を開設した阿久津氏の報告である。前接近に比べて観測者数は半減している。報告数も1/3に近い。

報告したくださった方も若い新人はいなく、ベテランの観測者ばかりとなっている。

 

日本 (6名、324観測)アジア (1名、18観測)南北アメリカ (8名、300観測)

ヨーロッパ (7名、153観測)アフリカ (1名、123観測)オーストラリア (1名、13観測)

 

前接近の集計は以下のURLから参照できる。

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/510/2020repo_21.htm

 

次には月別の報告数の推移を現すグラフを示す。

 


 

今接近の最接近は121(最大視直径δ=17.2”)、黄経の衝は128日であった。接近前に観測数が増加して、最接近後には急減少してしまう傾向は変わっていない。

 

 

次に報告数の多かった観測者の報告状況を示す。

 


 

観測数のトップは熊森(Km)氏で141観測であった。カラーカメラとモノクロカメラを使用したLRGB画像とB光画像、IR画像とのセットであった。上階のベランダにケラれるようになってからも撮影を続けられたが二月中に観測終了になった。二番目は、フォスター(CFs)氏で123観測のRGBIRセットの観測を報告された。途中の接近期(Aug.~Nov.2022)の欠測は、南アフリカからナミビアへの転居のためで、残念なことであった。

 石橋(Is)氏は、一日の観測数は多くないが、B光画像を含めた64の報告を2023年四月までコンスタントに提出された。吉澤(Ys)氏・浅田(Ys)氏は、それぞれ63報告・45報告を寄せられた。接近前の視直径の大きな時期だけの報告だったが、インターバル観測で一日あたりの撮影数が多く報告数が多くなっている。

 阿久津(Ak)氏は、フィリッピンのセブ島に観測所を創設されて、観測活動を始められて、設備は整いつつある。今期の報告数はまだ少なかったが、九月・十月にはタイミング良く黄雲の画像の撮影に成功している。

 アメリカ側からの報告では、メリッロ(FMl)氏から92報告、モラレス(EMr)氏から66報告、ウイルソン(TWl)氏から55報告、ゴルチンスキ(PGc)氏から54報告が寄せられている。

 ヨーロッパ側からは、スゥエ−デンのワレッル(JWr)氏から49報告、ギリシャのカルダシス(MKd)から36報告、フランスのグザヴィエ(XDp)氏から33観測、イギリスのルウィス氏からは19観測の報告があった。ピーチ(DPc)氏からは10観測と今期はふるわなかった。

  オーストラリアからは、ウエズレイ(AWs)氏の13観測だけであった。

 

報告をお送りいただいた諸氏にはあらためて感謝を申しあげます。有難とうございました。今接近期のレポートは今回で終了となります。次回、20251月に最接近となる火星は、最大視直径がδ=14.6”の小接近です。「かに座」でループを描いての接近となります。傾きは北に大きく、北極域・北半球の観測となります。

 

観測開始の目安として、以下に接近前半の暦の様子を取り上げておきます。

 

現象 視直径     UTC              Ls    中央緯度   星座

                   6.0”     2024 Aug 05       307   5.1S        Tau

                   8.0”               Oct 09          343  10.8N       Gem

                  10.0”              Nov 11          360  14.8N       Can  北半球の夏至

      留   12.3”             Dec 07, 21h  013  15.2N       Can

   最接近 14.6”    2025 Jan 12, 13h   029  10.8N       Can

 


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