CMO/ISMO 2022/23 観測レポート#19

2022/23年の火星観測・追加報告

 2022/23年接近の観測報告集計(更新)

村上 昌己・西田 昭徳

CMO #531 (10 September 2023)


・・・・・・ 火星は八月には「しし座」で順行を続けて「おとめ座」へと入り、夕空で太陽との離角を縮めている。「合」となるのは今年十一月中旬のことである。今回はギリシャのマノス・カルダシス(Mkd)氏から一月中の追加報告が送られてきたので追加のレポートとする。

 

・・・・・・ 追加の観測報告

カルダシス (MKd)からの追加観測は下記のリストのようである。本人もお便りの中で触れているが(九月の英文LtE参照)、報告画像に記入されているのは、撮影機材と観測地で、暦のデータは観測日時だけである。UTとしてあるので、その時刻で暦の計算をすると、画像のω (火星面中央経度)が模様と一致しない画像も含まれていた。ギリシャの時差は+2時間なのでその調整をすると、どうにか一致する画像になるようで、CMOのギャラリーに上がっている画像は右画像のように、修正後の暦の数値となっている。元々、記入されていた時刻は、Local Timeとして残してある。

右に引用した画像では、M Acidalium (マレ・アキダリウム)にダストの帯が掛かっているのが描写されている。この時期は、北極冠廻りでのダストの活動が活発であるし、アルギュレ雲も活動的なときであり、良く捉えられていると思う。この前後に寄せられた画像を調べてみても、はっきりダスト活動を捉えた画像は見られない。翌24日のルウィス(MLw)の画像がM Acidaliumとその東側を捉えている。

 

 

マノス・カルダシ (MKd)   アテネ、ギリシャ

  KARDASIS, Manos (MKd)  Glyfada-Athens, GREECE

   5 Colour Images (8*, 19, 23, 24, 27 January 2023)  36cm SCT with an ASI 290MM & an ASI 462MC*

       https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2022/index_MKd.html

 

 

・・・・・・ 2022/23年接近の観測集計(更新)

 上記の追加報告を加えて観測集計を更新する。今接近の報告は、24名の方々から合計936件であった。1件としては、火星面経度(ω)5゚違うものをIR画像を含めて数えている。各地域ごとの内訳は以下のようになった。アジアの1名は、セブ島に観測所を開設した阿久津氏の報告である。前接近に比べて観測者数は半減している。報告数も1/3に近い。

報告したくださった方も若い新人はいなく、ベテランの観測者ばかりとなっている。

 

日本 (6名、324観測)アジア (1名、18観測)南北アメリカ (8名、300観測)

ヨーロッパ (7名、158観測)アフリカ (1名、123観測)オーストラリア (1名、13観測)

 

前回2020年の接近時の集計は以下のURLから参照できる。

https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/510/2020repo_21.htm

 

次には月別の報告数の推移を現すグラフを示す。

 


 

今接近の最接近は121(最大視直径δ=17.2”)、黄経の衝は128日であった。接近前に観測数が増加して、最接近後には急減少してしまう傾向は変わっていない。

 

 

次に報告数の多かった観測者の報告状況を示す。

 


 

観測数のトップは熊森(Km)氏で141観測であった。カラーカメラとモノクロカメラを使用したLRGB画像とB光画像、IR画像とのセットであった。上階のベランダにケラれるようになってからも撮影を続けられたが二月中に観測終了になった。二番目は、フォスター(CFs)氏で123観測のRGBIRセットの観測を報告された。途中の接近期(Aug.~Nov.2022)の欠測は、南アフリカからナミビアへの転居のためで、残念なことであった。

 石橋(Is)氏は、一日の観測数は多くないが、B光画像を含めた64の報告を2023年四月までコンスタントに提出された。吉澤(Ys)氏・浅田(Ys)氏は、それぞれ63報告・45報告を寄せられた。接近前の視直径の大きな時期だけの報告だったが、インターバル観測で一日あたりの撮影数が多く報告数が多くなっている。

 阿久津(Ak)氏は、フィリッピンのセブ島に観測所を創設されて、観測活動を始められて、設備は整いつつある。今期の報告数はまだ少なかったが、九月・十月にはタイミング良く黄雲の画像の撮影に成功している。

 アメリカ側からの報告では、メリッロ(FMl)氏から92報告、モラレス(EMr)氏から66報告、ウイルソン(TWl)氏から55報告、ゴルチンスキ(PGc)氏から54報告が寄せられている。

 ヨーロッパ側からは、スゥエ−デンのワレッル(JWr)氏から49報告、ギリシャのカルダシス(MKd)から41報告、フランスのグザヴィエ(XDp)氏から33観測、イギリスのルウィス氏からは19観測の報告があった。ピーチ(DPc)氏からは10観測と今期はふるわなかった。

  オーストラリアからは、ウエズレイ(AWs)氏の13観測だけであった。

 

報告をお送りいただいた諸氏にはあらためて感謝を申しあげます。有難とうございました。今接近期のレポートは今回で終了となります。次回、20251月に最接近となる火星は、最大視直径がδ=14.6”の小接近です。「かに座」でループを描いての接近となります。傾きは北に大きく、北極域・北半球の観測となります。

 

観測開始の目安として、以下に接近前半の暦の様子を取り上げておきます。

 

現象 視直径     UTC              Ls    中央緯度   星座

                   6.0”     2024 Aug 05       307   5.1S        Tau

                   8.0”               Oct 09          343  10.8N       Gem

                  10.0”              Nov 11          360  14.8N       Can  北半球の夏至

      留   12.3”             Dec 07, 21h  013  15.2N       Can

   最接近 14.6”    2025 Jan 12, 13h   029  10.8N       Can

 


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