歳時記村 (2)

その弐

-- 1998年7月 --


村上昌己


 長 梅 雨 

 七月初めの記録的な暑さでは、今年の関東地方の梅雨明けは早いものかと思っていたが、変則的な気圧配置になって、前線帯が東北地方東岸から関東にかけて南北に停滞して、七月下旬になっても曇天傾向が続いている。 六月の黒点観測日数は僅か9日間、七月もまだ10日間に達しただけである。夜間も晴れず、今シーズンの木星には、まだ一回もお目にかかっていない。

 春に若芽をたのしんだタラノキは、大きく葉を茂らせ地味な白い花が咲き始めている。タラノキはヤツデに近い植物なので、ヤツデの球状の花を想像して貰えばよい。この花には蜜・花粉が多いのか、甲虫類から蝶類・蜂・虻まで昆虫が多く集まる。そのおかげで我が家の裏庭は今年も蝶道になって、シジミ蝶からアゲハ蝶類までいろいろな蝶が飛んでいる。既に青筋アゲハ・黒アゲハを確認している。写真の黄アゲハは、自宅の窓から、昨年撮影したものである。蝉の声はまだ聞こえないが、庭にアブラゼミの死骸が転がっていたから、もう土から出ているのが判る。

 七月4日には日本初の惑星探査衛星「のぞみ」が火星を目指して打ち上げられた、地球や月を使ってスイングバイで速度を上げ、今年年末には火星へ向かう軌道へ移る。火星到着は1999年10月11日の予定である。詳しい内容は下記の宇宙科学研究所のウエッブサイトで見ることが出来る。

  http://www.planet-b.isas.ac.jp/

 七・八月の惑星達の様子は、木星を除いて観測好期にない。

 火星は八月末には午前三時に「出」るようになる。五時半の日の出時の高度は20度ほどになるが、視直径は4秒角になったばかりでまだ小さい。八月5日には金星と接近する。
 水星は、七月17日に「東方最大離角」となり、西空に姿を見せた。福井ではNj氏とMn氏が14日と17日に270×20cm屈折で「観望」したそうである。その後八月13日の「内合」に向け足早に太陽に近付いていく。八月31日には早くも「西方最大離角」となり明け方の空で光る。
 金星は十月末の外合に向けて遠くなっていく。日の出時の空で高度を変えずに北行していたが、八月にはいるといよいよ太陽に近づき始める。
 木星は七月19日に「留」となり九月の「衝」に向かって「うお座」を逆行している。八月のはじめには午前三時頃に南中するようになり、観測の好期になってきた。今期の木星は南赤道縞(SEB)が活動的で、縞内部に白斑の連鎖が観測されている。「合」の期間に異変の起きた永続白斑 BC-DE 付近は、依然として永続湾の確認しにくい状態が続いているようである。ソリトンとしてその後分離してくる可能性もあるから今後も要注意である。永続白斑 FA は眼視観測でも認められるようである。
 土星は七月になって午前0時には「出」るようになった。「うお座」東部にあって木星に次いで登ってくる。7月22日に「西矩」となり、はやくも八月17日には「留」となって逆行へ移る。「衝」は十月のことである。
 海王星・天王星は共に「やぎ座」にあり、七月24日・八月3日にそれぞれ「衝」となる。観望の好期といえる。

 八月22日には、ボルネオ島で見られる金環日食に伴う、部分日食が国内で観測される。近畿地方を北限界線が通り以北では部分食は見られない。那覇でも最大食分が0.28という軽度の日食である。八月8日には、半影月食が起きるが、見られるのはアメリカ・ヨーロッパ・アフリカの経度で、日本からは観測出来ない。

 今年のペルセウス座流星群は8日が満月で条件が悪い。しかし、月の条件の良い十一月のしし座群は大出現が期待されているし、六月末には、ポン=ウィンネッケ彗星関連流星群の突発が観測されて、流星観測の話題も豊富である。

( 25 July 1998 )

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