歳時記村 (3)

その参

-- 1998年8月 --


村上昌己


 夏 の 珍 客 

 八月になっても梅雨前線は消滅しないで、北陸・東北は梅雨明けしないままだった。関東でも梅雨明けしたと行っても曇天傾向が続いて、からりとした夏空には巡り会えなかった。今年の梅干しも三日三晩といかず出来が良くなかった。気温も前線の南北で大きく違い体調の管理が難しい。

   八月上旬には夏休みがとれて、久しぶりに上田市の山村に数日滞在した。しかし長野でも夜は晴れずに月の暈を眺めて過ごした。関東に戻った後も曇りがちの天気が続き夜間の観測は捗らなかった。木星も二回ほど見ただけで、今年のペルセウス座流星群は一つも見ることが出来なかった。

 今年の夏の珍客が写真の百合の花で、日当たりの悪い庭の片隅に自生して、初夏より茎を伸ばしていた。七月になると三つの蕾が大きくなって、どんな花が咲くのか楽しみに待っていたが、八月中旬になって次々に花を開いた。山百合の強烈なにおいと違う淡い香りがあって上品である。白い花が開いたところに薄く紅がかかるのも面白い。何という名前の百合か判らなかったので図書館へ出向いて調べたところ、葉が細いが「テッポウユリ」であろうと思われる。海岸に近い崖に生えるとある。名前は聞くが植生しているのを見たのは始めてである。近所を見るとあちこちで同じ花を見かける。昨年まで気が付かなかったのはまったく不思議なことで、今年だけの事なのであろうかと思っていると、家人の話では昨年も見かけたとのことである。我が家でも同じ場所に茎を伸ばしていたが花は持たなかったとのことで、百合が自生して花を持つことなどやはり珍客といえる。

 長野での滞在中に五十歳の誕生日を迎えた。思い出すと、二十歳の時は山行の途中の列車の中だった。三十歳の年は七月末に長男が生まれた暑い夏だった。四十歳の時には火星観測を始めた。『火星通信』に登場するのは暫く後で、1990年になってからのことである。還暦の年にはどのような夏を迎えるのだろうか?

 九月の惑星達の様子を見ると、木星・土星が観測好期である。海王星・天王星も共に「やぎ座」にありに観望の好期といえる。
 火星は朝方の低空「かに座」にいる。九月末にでもは視直径は4秒角台とまだ小さい。午前2時半には「出」るようになるが、日の出時の高度は九月15日でも20度を少し上回る程度である。
 水星は、朝方の空に移り上旬には金星・レグルスと明け方の低空で並んでいる。以後は九月25日の「外合」に向けて急速に太陽に近付いていく。金星も朝方の空で十月末の「外合」に向けてどんどん太陽に近づく。九月11日には水星と1度以内に接近する。
 観測の好期である木星は九月17日に「衝」を迎える。「うお座」から少し「みずがめ座」に逆行した所である。九月7日には木星食があるが日本では昼間の時間で見られない。比嘉保信氏から八月上旬撮影された木星と土星のビデオ画像を送って戴いた。沖縄ではの良いシーイングに恵まれた迫力ある画像が、モニターいっぱいに拡がる。今期の木星の活動の様子がよく捉えられている。
 土星は九月になると午前3時には「南中」するようになる。リングの傾きも年々大きくなり、土星らしい姿を楽しめる。「衝」は十月のことである。

 九月6日には、八月に続き半影月食が起きる。今回は日本でも見ることが出来る。食の最大は20時頃になる。

( 25 August 1998 )

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