今回からこの欄を再開する。當分毎月15日が観測〆切として、前月16日から15日までの一ヶ月の觀測について受けた報告についてレヴユーする。
27 Octで火星の視直徑δは4.0"であった。季節は068゚Ls、中央緯度は26゚N、位相角ιは22゚であった。季節は1995年三月初旬 (11 Feb 1995最接近)、1997年一月下旬 (20 Mar 1997最接近)頃に出会った季節相當する。 15 Novには視直徑はδ=4.3"、季節は076゚Lsに進み、中央緯度はφ=25゚N、位相角はι=25゚となった。φは來年の四月に向けて南の方に降りてゆく。一方、位相角は年末から來年二月末に掛けて更に大きくなる。
♂・・・・・・今回報告の觀測次第は次の様である。
MINAMI, Masatsugu 南 政 次 (Mn) 福井 Fukui, Japan
11 Drawings (27 October; 4, 5, 13, 14 November 2000) 340,400×20cm refractor*
MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo) 廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima Japan
6 Sets of CCD Images (30 October; 2〜5, 7 November 2000)
f/50×25cm spec equipped with an ST-5C
NAKAJIMA, Takashi 中 島 孝 (Nj) 福井 Fukui, Japan
3 Drawings (27 October; 13, 14 November 2000) 400×20cm refractor*
PARKER, Donald C ドナルド・パーカー (DPk) 佛羅里達 Miami, FL, USA
1 Drawing (11 November 2000) 440, 510×41cm f/6 spec
1 CCD Image (11 November 2000) f/55×41cm spec equipped with a Lynxx PC
* 福井市自然史博物館天文臺
♂・・・・・・・・ この期間の觀測:
筆者達(Nj&Mn)の27 Octの初觀測の際には淡い雲があって、好い像は得られなかったが、ω=130゚W邊りで、北極冠は明確であった。Nj氏の感想では、北極冠が頭の中のイメージより小さく見えたと言うことであった。南端が意外と明るい。 4 Nov、5 Nov(072゚Ls)の筆者の觀測はω=033゚W〜ω=062゚Wに亙ったが、北極冠とマレ・アキダリウムの存在が明らかであった。北極冠も正常の大きさだが、縁はかなり濃いバンドで囲まれて見えている。南半球の暗部も見えるが、部位は判らない。クリュセは夕方にやや明るく、タルシスが朝方で明るく見える。觀測は21:00GMT過ぎまで可能であった。
森田(Mo)氏は3 Novにはω=073゚W、4 Nov(072゚Ls)にはω=060゚W邊りでRGB像を得ているが、特に後者のR像(0.4s)には午後のマレ・アキダリウムがかなり濃く出ている。クリュセに明斑がある模様。北極冠は弱い。7 Novにはω=029゚Wまで進んだ。
11 Nov (075゚Ls)には大統領選話題沸騰のフロリダで唐那・派克(DPk)氏がスケッチとCCD像を得た:スケッチは10:05GMT〜10:25GMTに得られていて、ω=195゚Wで北極冠の他プロポンティスTが明確に描かれている。エリュシウムは中央だが、ケルベルス-プレグラの暗條に比して明瞭ではない。北半球の縁には朝霧が見えているほか、マレ・キムメリウムが朝方に濃い。このとき火星の高度は23゚とある。35゚に昇った10:54GMTでのCCD像はω=203゚Wで、北極冠が太いダークフリンジと共に明確である。南半球にも仄かに暗部が見える。フィルターはRG610で0.7s露出、輪郭も綺麗である(二枚コンポジット)。マイアミはこの日寒冷前線の後面だが、氣温は21℃と暖かい様である。フロリダは日本より十時間(約150゚W)早い、若しくは十四時間後を觀る。
13 Nov、14 Nov (076゚Ls)には福井で、ω=310゚W〜ω=334゚Wを觀測した。北極冠は圓く明確でダークバンドはマレ・アキダリウムの方に延びている。流石シュルティス・マイヨルも淡いが確認出來、ヘッラスも夕端で少し明るい。シヌス・サバエウス邊りは然程見えないが、ノアキスの南は朝方に掛けて南端で白く見える。
♂・・・・・・福井では朝方氣温は攝氏で一桁臺であるが、この期間は然程の寒さではなかった。昨年頂戴した袖無しチョッキ(背中が暖か)で充分であった。寧ろ、この時期福井市は鯖江邊りからやってくる濃霧に襲われることがあって、夜更けに快晴であっても朝方の心配がある。これからは西高東低に惱まされる。尚、Nj氏は上の記録よりも多く足羽山で待機していることを附け加えておく(昔からの傳統で早く夜半前から準備室で待機する)。ただ、今のところNj氏は曇り男で、深夜まで晴れていても彼が居ると曇って來たり、濃霧になったりする、だけでなく、酒精の入った彼が一眠りして朝方天文臺に辿り着くと俄に曇るというようなことがあったのである。それに對して、彼に所用があった4、5Novには夜半まで曇りや濃霧であったものが、朝方晴れ渡ったものである。駄目かと思った夜半來の霧まで霽れるのには却って驚いた。
火星に對して、衝近い土星、木星は牡牛座にあって深更甚だ高くて羨ましい。最近はガリレオ衛星も常時圓盤に見える。ただ、衛星が球形の儘、視野内で矢鱈ステップするのが判るので、運轉時計に歪みが出てきたかと心配である。眼視には差し支えないが、CCDやヴィデオ等では困るかもしれない。
火星の視直徑は現在4秒角臺であるから少々のシーイングでは細かな觀測は未だ未だ不可能である。最近はCCD絡みで、何も寫っていない火星像が出廻っていて、ピーチ氏邊りから和製の像が筆者などに緊急でemailで逆送されて來たりしている。ピーチ氏には判斷が出來無いからであろうが、ひょっとして全球的黄雲の様なことがあるかも知れないからである。然し、CCD本人が眼視でチェックしていれば済むことで(Mo氏は眼視で判斷している)、斯くの如き模様も極冠も出ていないような像を斷りも無くヨソ様にemailでバラ撒くのは觀測者として非常識である。幸い『火星通信』關係ではない。
♂・・・・・・この欄は當分前月の16日GMTから15日GMT迄の一ヶ月の觀測を扱います。從って、次回は15Dec〆切で三國宛にご報告下さい。畫像はJpgファイルでemailで結構ですが、出來るだけ速やかにデータやノートをA4報告用紙に記載してお送り下さい。