96/97 report 020

1996/97 Mars Observation Reports -- #020--


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
♂・・・・・・・・ シーズンオフを決め込んでいた處、RSc氏から報告が入った。 彼はシーズンの初めと終わりを押さえる趣味があるが、 今回は別項のIMW電子ニューズレターにあるように十一月末黄塵が報告されているので、 その觀測を行ったようである。
 SCHMUDE, Richard W, Jr リチャード・シュムード (RSc) ジョージア GA, USA
    1 Drawing  (10 December 1997)     570X 51cm speculum


視直徑δは4.5秒角であるが、高度が可成り低い筈で困難である。しかし、 季節は233゜Lsで充分黄雲の季節になっている。φ=12゜S。觀測は22:41GMTから23:04GMT迄、 ω=272゜Wである。
 然し、RSc氏の觀測によると、特別明るい處はなく、 暗色模様も惚けてはいるが見られ、北半球より暗い由。 ただ、南極域も特別明るくは感じないのは、どちらにしても問題である。LtE参照。

♂・・・・・・・・追加報告:森田行雄(Mo)氏からの報告は#180 (25 Oct 1996)と#184p1990 の追加報告で途切れているが、その後の觀測を纏めて、次のように三月末日迄のものを送って來られた。 TPとCCDとはDecの終わりからJanの初めに掛けてダブっているが、 この邊で兩者切り替わっている。

 MORITA, Yukio 森田 行雄 (Mo)  廿日市 Hatsuka-ichi, Hiroshima, Japan
   13 B&W Photos  (24, 25 Nov; 3, 11, 〜15, 23, 27 Dec 1996; 3, 4, 11 Jan 1997)      
                       f/100× 25cm speculum TP2415
   91 CCD Images  (27, 29, 31 Dec 1996; 11, 15, 18, 19, 25 Jan; 1, 7, 8, 14, 19, 22, 23 
                   24 Feb; 1, 3, 4, 5, 7, 8, 11, 17, 19, 20, 22, 24, 25, 30, 31 Mar 1997)
                       f/50× 25cm speculum  Mutoh CU-04
報告用紙の束は分厚なもので、TPの方は192枚の写真から成り、CCD像の方は實に566 枚が使われている。一夜に四十分ごと7枚ぐらいの時がある。

 TP(ロディナール1:80)でマレ・アキダリウムなど暗色模様と北極冠が好く現れるのは、 13Dec(050゜Ls)の像からで、δ=07.0"。ω=050゜WでIntでクリュセが夕方明るい。 以後北極冠は概ね明確である。 特に3Jan(060゜Ls)ω=208゜Wでの北極冠は綺麗である (Int)。

 27Decの像はTPとCCDとが比べられるのであるが、未だTPの方が肉付きがよく、 CCD像は印刷の所爲もあるが艶がない。露出時間はR光で1/10になっている。CCDは Photoshopでアンシャープマスク處理である。年末はシュルティス・マイヨルが見えている。

 19Jan(067゜Ls)ではマレ・アキダリウムが出てくる。

 1Feb(072゜Ls)では再びシュルティス・マイヨル中心で、ウトピアも濃い。B390では北極冠が分からない。

 7Feb(075゜Ls)ω=242゜Wではシュルティス・マイヨルが朝方、Gではその西縁が明るい。 Rではアエテリアの暗斑が出ている他、Gではエリュシウムが稍明るい。

 8Feb(075゜Ls)のω=200゜Wではシュルティス・マイヨルが確認できないが、ω=233゜Wでは充分内側。 エリュシウムはRでも見える。

 22Feb(082゜Ls)ω=070゜WのGで北極冠が小さく見えるが、 Rでは弱い。像としてはソリス・ラクスの邊りは不鮮明(δ=11.7")。

 23Feb(082゜Ls) ω=032゜WのR像では北極冠が明白で、ヒュペルボレウス・ラクスも分離できる。 シヌス・メリディアニが夕端に濃い。この日はω=052゜W(ニロケラス明確)、ω=073゜Wにも良像がある。

 24Feb(082゜Ls)ω=035゜WのR光も好い。

 三月にはいると視直徑は13.3秒角に達した。1Mar(085゜Ls)ω=009゜WのR光は良像、 オクシア・パルスが明確でヒュペルボレウス・ラクスも出ている。

 3Marω=330゜W、ω=340゜WのR像はイスメニウス・ラクス、デウテロニルスを見せ、 朝のマレ・アキダリウムも濃いが、G、B光が上手く伴わない(何れもR光を悪くしたような像、同じ様なR光も矢鱈多い。 四十分ごとに整理すること)。ω=358゜Wではテムペが朝縁で明るいか(R光)。

 5MarもR光はω=329゜W、ω=340゜Wだけ選べばよい。

 11Mar(089゜Ls)ω=239゜WのR光にはエリュシウムからケブレニアが明るく出ている。 ウトピアが弱くなってきている。ω=250゜W、ω=259゜Wも同様。 B光では朝のヘッラスが稍明るいか。ω=270゜Wまで。R光ではノドゥス・アルキュオニウスは出ているようである。

 17Mar(092゜Ls)ω=184゜WのR光にはプロポンティスT及びその東への流れ、反対の側のアエテリアの暗斑などが明確で、 ケブレニアの明るさなども好く出ている。ケルベルスも弱いが見える。ω=194゜Wも似ている。然し、 北極冠の解像力がない。ω=211゜WではエリュシウムがR光で明るい(B光はdull)。

 19Mar(093゜Ls、δ=14.2")ω=185゜Wの西端にアルバが見えるか(R光)。

 20Mar(093゜Ls、δ=14.2")ω=142゜WのB光には辛うじてオリュムピアの白斑が出ているか、というところ、 北極冠も含めて、解像力が伴わない。以後、ω=151゜W、ω=162゜W、ω=170゜W、ω=180゜W、 ω=190゜W、ω=200゜W、ω=210゜Wと續くが、白斑は殆ど現れない。工夫の要る處である。

 筆者の場合肉眼で當日、ω=115゜Wからω=220゜Wまで四十分毎に刻んだが、ω=134゜Wでオリュムプス・モンスは捉えられ、 最後の縁上迄追えた。又ω=190゜W邊りでは北極冠から南に破片が分離しているのが明白であった。 後半ω=200゜W邊りのプロポンティスTの分離など見事であるが、概して暗色模様に強く、明部に弱い様である。 多分この儘では、B光に関しては、TPの方がよい結果を出した可能性がある。

 22Mar(094゜Ls)ω=164゜W:エリュシウムはR光でも朝縁で明るい。

 24Mar(095゜Ls)ω=105゜W:ソリス・ラクスとマレ・アキダリウムが夕縁に濃い。ω=116゜Wの像はR光の中でも優れた像で、 夕方にはニロケラスが残り、朝方にはプロポンティスTが入ってきている。アルバは見え、他の白斑も朧気ながら検出される。 北極冠もしっかり描冩されている。B(B390)光が上手く働かないのは惜しい。ω=126゜WのR光にもアルバは明白。 B光はそれを悪くしただけ。月末マレ・アキダリウムが南中するが、シーイングが伴わない。

 31Mar(098゜Ls)ω=061゜Wは良像。南ではソリス・ラクスが入って來ていて、北ではヒュペルボレウス・ラクスが明確。 マレ・アキダリウムの描冩も南部の濃度を的確に出している。ω=070゜Wではソリス・ラクスが完全に見える。 オピル・カンドルが顕著である(G光でも)。然し、朝方の描冩はω=090゜Wに至っても細かくない。 このころの話題はHSTの像(#191p2102)や解説にも出ているように朝方の部位の白斑や暗點の動向であった。

 報告全體の像を拝見して気付くことは、R像など好く選ばれていない(選ぶ必要がある)と言うことであって、 無闇矢鱈に並べる必要はない。四十分間隔の少數の報告で十分で、 問題の現象が見られたときのみ改めて參照のため近傍の報告を受けるつもりである(Hg氏の像の分析などがそれに當たる)。 聨續觀測ではB光像を必ずfeatureし、Lsに從って(雲の動きなど)分類して行かねばならない。


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