98/99 report #02

1998/99 CMO Mars Report #02

1998年十月後半・十一月前半の火星面觀測


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
♂・・・・・・・ 7 Nov (δ=4.7"、054゚Ls)に村上昌己(Mk)氏が觀測に入った (Mk氏email:「今朝は晴れ上がって、火星の初観測が出来ました。五時半に目が覚めたので一回見ただけでしたが、高度は十分で、横浜では視界が開けていますから三時台から観測出来るようです。火星の大きさも十分で前期末に夕方見ていたときよりも条件よく見えました。火星面の暗色模様は捉えられませんでしたが、北極冠はまだ大きく見えますね。極冠周囲の薄暗いのも感じました。」) 。日岐敏明(Hk)氏は伊那谷の霧に惱まされて、約一ヶ月缺測した。福井は霧は出るものの、十月から十一月にかけては温暖で、これは我々老體には何より、觀測は氣持ちよく捗った。十一月初め京都で近畿の「木枯らし一號」を聞いたが、然程のことはなかった。但し、本格的な冬型の氣壓配置になると福井では斯うは行くまい。

♂・・・・・・・今回 16 Oct から 15 Nov 迄の期間中紀録された觀測は次の通りである。


      HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk) 箕輪・長野 Minowa, Nagano, Japan
              3 Drawing (7, 15 November 1998)  360×16cm speculum

      MINAMI, Masatsugu 南 政 次 (Mn) 福井 Fukui, Japan
           64 Drawings  (21, 24, 25, 26, 28, 29, 31 October; 1, 3, 5, 12〜15 November 1998)  400×20cm refractor* 

      MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  横浜 Yokohama, Japan
             4 Drawings  (7, 14, 15 November 1998)    370×15cm speculum

      NAKAJIMA, Takashi 中 島  孝 (Nj)  福井 Fukui, Japan
           34 Drawings  (21, 24, 25, 26, 28, 29 October; 1, 3, 5, 10〜14 November  1998) 340, 400×20cm refractor*


                                             *福井市自然史博物館天文臺 Fukui City Observatory
♂・・・・・・ベルリンのA NIKOLAI (ANk)氏から、多分今季最も早い一枚と思われるCCD像が送られてきた。

      NIKOLAI, Andre アンドレ・ニコライ (ANk) ベルリン Berlin, Deutschland
            1 CCD Image  (1 September 1998)   15cm refraktor am WFS
δ=3.9"、季節は023゚Lsで北極冠が出たところであろうか、大きく明るい。φ=17゚N。

A NIKOLAI's CCD Image on 1 Sept 1998
by use of a 15cm Refr at WFS

♂・・・・・・今期間中、16 Octには視直徑δは4.4秒角であったが、15 Novには4.9秒角に伸びた。季節は044゚Lsから、057゚Lsに進捗し、北極冠の溶解が始まっている。中央緯度φは24゚Nから25゚N、位相角ιは27゚から31゚に増えた。土星は「魚座」で高く、恰好の好い姿を見せているが、25 Oct 頃は、土星に向けられていた望遠鏡をそのまま東へ動かすと火星が視野に入ってきた。視赤緯+9゚ほどであったと思うが、その後明らかに火星は土星より南に落ちている。それでも薄明中、可成り高くなる。薄明中の觀測を奨める。福井では現在6:40JST邊りで日の出。陽の出後も暫く觀測可能である。

♂・・・・・・福井では十月中旬十日間缺測であった爲に、ソリス・ラクスには出會わなかったが、21 Oct (046゚Ls)にはマレ・アキダリウムが南中し、6:40JSTω=039゚Wでは薄明ながら濃く明確であった。北極冠は對照的に白く明るい。南端ではアルギュレ?が白斑。
 24 Oct (048゚Ls)にはシヌス・サバエウスが見え、マレ・アキダリウムが朝という構圖になる。前者は青色系、後者は褐色系である。21:00GMTにはω=000゚Wで、シヌス・メリディアニがマルガリティフェル・シヌスと分離した。ノアキスは鈍いが、クリュセは明るい。
 シュルティス・マイヨルの片鱗は 25 Oct に見えている。ヘッラスも明るいようである(048゚Ls)。
 28 Oct:シヌス・サバエウスの東部が濃い。北極冠を取り巻く暗帯は太い。
 29 Oct (050゚Ls)には好シーイングでシュルティス・マイヨルが南中した。マレ・テュッレヌムやウトピアが濃く、ダークフリンジは北極冠を隈取る。20:50GMTω=309゚Wではヘッラス白く、シュルティス・マイヨルは明確。北極冠はザラッとした感じ。6:30JSTでは更にシーイングが安定した。
 31 Oct (051゚Ls):南端は白いが必ずしもヘッラスに一致しない。北極冠は確かに小さくなって來ている。

 1 Nov (051゚Ls) 20:50GMTでω=280゚W、マレ・テュッレヌム濃く、シュルティス・マイヨルも明確。
 3 Nov (052゚Ls):薄明でシーイング良好。シュルティス・マイヨルが朝方に現れる。ω=260゚Wで北極冠は円く、暗帯とともに明るくクッキリしている。マレ・キムメリウムが見える。マレ・テュッレヌムが濃い。ヘッラスは鈍いが白く、アエリアは黄色味。
 5 Nov (053゚Ls):北極冠は明らかに小さくなっており、円い。ウトピア濃く、暗帯は太い。20:50GMTω=241゚Wはシーイング良好だが、朝のシュルティス・マイヨルは不明確。その北の円盤端が靄っている。概して、北極冠の周りの暗帯に比して、南半球の暗色模様は弱い。
 7 Nov (054゚Ls)にはHk氏がω=219゚W、227゚Wで觀測、北極冠は白く、明瞭だが、エリュシウムは認められない。4℃。同日7 Nov (054゚Ls)に横浜旭区でMk氏がω=224゚Wで初觀測、北極冠明確、暗帯は夕方が濃い。防寒具はまだいらない由。火星はρLeoの近く。
 10、11 Novは弱い冬型であったが、福井ではNj氏は觀測を敢行した。北極冠のみ。
 12 Nov (056゚Ls)にはMn歸着、透明度が好く、遠くカノープスが見られたが、高氣壓は南に寄って火星のシーイングは好くない。ω=180゚WでプロポンティスTの邊りから陰が南に奔る。
 13 Nov (056゚Ls)ω=140゚Wなどでアルバに注目するが顕著ではない。1995年一月にMk氏他によって、アルバの爆發が觀測されているからだが(#179參照)、今回ははまだ視直徑が十分ではないのであろう。タルシスも然程でない。ω=170゚WではプロポンティスT領域が最も濃く、ケブレニアが細長く靄っているようである。南端は明るい。
 14 Nov (057゚Ls):ω=120゚W邊りでアルバは明るいかも知れないという程度。北極冠の暗帯は朝方が明らかに幅廣い。南端の靄は複雜である。ω=141゚Wではダークフリンジは朝方の方ががクッキリしている。ω=160゚W、170゚Wでは、プロポンティスTが分離する勢い。エリュシウムは朝端で黄色味の明るさ。タルシスは然程でない。14 Novω=148゚WにはMk氏の觀測がある。13、14 NovはNj氏が久方の薄明觀測(Nj氏とMnの觀測數の差は、Nj氏が通常5時半で觀測を切り上げるのに對し、筆者は日の出後7:00JSTまで觀測する事もある爲)。
 15 Nov (057゚Ls)では矢張り北極冠を取り巻く暗帯は、Ω=130゚W以西で急に太くなることを確認。それと重なって北極冠の縁取り(ダークフリンジ)は濃い細線。南半球ではマレ・シレヌムが瞥見できるが、その南の円盤端に白斑がある。これは一ヶ月前にも見たような氣がする。同日にはω=136゚WでHk氏、ω=139゚W、148゚WでMk氏の觀測。北極冠中心。尚、今回の季節は Feb 1995 や Dec 1996 に遭遇しているので、北極冠や南端の靄について比較する必要がある。

♂・・・・・13 Novには火星に月が接近し、處によっては掩蔽であったが、福井では確認しなかった。筆者は前日カノープスの航跡を撮影していたこともあって、寝不足で、最初から諦め、目覚ましを火星の觀測時刻に合わせた。目覚まし前、3時半頃雲間から火星が出ていることでNj氏に起こされた。最近は齢の所爲か觀測時刻まで仮眠することが多い。Mk氏も同日細い月だけを見ている様である。

♂・・・・・・次号では16 Novから15 Decまでの報告を扱う。


Back to Top Page