98/99 report #09

1998/99 CMO Mars Report #09

1999年四月前半(1 Apr〜15 Apr)の火星面觀測


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
♂・・・・・・・今年は櫻の開花が福井でも早く、この期の足羽山での觀測はボンボリ照明の「上」で始まったが、今ではすっかり新緑氣配でボンボリだけが名殘。皆さんのところは如何でしたでしょうか。今回も天候は優れた方ではなかったが、視直徑は何年ぶりかの大きさになり、沖縄のId、Hg兩氏は好い結果を出している。Ak氏の像も格段に好くなった(『天文ガイド』六月號參照)。視直徑の分、Mk氏は20cmの實力を味わっているそうである。殘念ながらHk氏は大切なときに脱落した。

♂・・・・・・・視直徑δは1Aprに14.0秒角であったが、15Aprには15.5秒角に伸びた。10Apr頃に15秒に達し、四十五日間ほど續くと思う。季節は1Aprが118゚Ls、15Aprが125゚Lsであった。中央緯度φは15.7゚Nから17.2゚Nに上がっている。位相角ιは18゚から08゚に落ち、すっかり圓くなった。これで深い夕方の觀察は焉わりである。

♂・・・・・・・この期間に『火星通信』宛に送られた觀測者と觀測は次の通りである:


     AKUTSU, Tomio 阿久津 富夫 (Ak)  栃木・烏山 Karasuyama, Tochigi, Japan
            13 CCD Images (4, 5, 8, 9 March 1999) f/60×32cm spec equipped with a Teleris 2 

      FALSARELLA, Nelson ネウソン・ファウサレッラ (NFl) ブラジル Rio Preto, Brasil
            18 Drawings (17, 19, 25, 27〜31 March; 2〜7, 8/9, 10, 11, 12 April) 
                                               260, 325×20cm speculum

      GRAY, David デイヴィッド・グレイ (DGr)  ダラム Kirk Merrington, Durham, UK
             5 Drawings (28 March; 1/2, 6/7 April 1999)    350×42cm Dall-Kirkham

      HERNANDEZ, Carlos カルロス・ヘルナンデス (CHr) マイアミ  Miami, FL, USA
             2 Drawings  (13 April 1999)  235-285×20cm SCT

      HIGA, Yasunobu 比嘉 保信 (Hg)  那覇 Naha, Okinawa, Japan  
            32 Video Images (6, 7, 8, 13, 14, 15 April 1999) 
                                     25cm speculum equipped with Sony DCR-TRV900 

      ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id)  那覇 Naha, Okinawa, Japan
            13 Drawings (5, 7, 8, 13, 14, 15 April 1999)  400, 500×31cm speculum

      IWASAKI, Tohru 岩 崎  徹 (Iw)  北九州 Kitakyushu, Fukuoka, Japan
             9 Drawings (2, 4, 7 April 1999)  400×21cm speculum

      MELILLO, Frank J  フランク・メリッロ (FMl)  ニューヨーク NY, USA
             6 CCD Images (11, 14 April 1999) 20cm SC  Starlight Xpress MX-5

      MINAMI, Masatsugu 南  政 次 (Mn)  福井 Fukui, Japan
            49 Drawings (1, 3, 4, 5, 14, 15 April 1999)  400×20cm refractor* 

      MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  藤澤 Fujisawa, Kanagawa, Japan
            21 Drawings (5, 6, 7, 8, 9, 13, 14 April 1999)  320, 425×20cm Saheki speculum

      NAKAJIMA, Takashi 中 島  孝 (Nj)  福井 Fukui, Japan
            26 Drawings (3, 4, 5, 8, 12, 14, 15 April 1999)  400×20cm refractor*

      NARITA, Hiroshi 成 田  廣 (Nr)  川崎 Kawasaki, Kanagawa, Japan
             8 Drawings  (4, 5, 8, 13, 14, 15 April 1999)   400×20cm refractor

      NIKOLAI, Andre アンドレ・ニコライ (ANk) ベルリン  Berlin, Deutschland
             2 Sets of CCD Image  (1/2 April 1999)   15cm Refraktor am WFS

      PARKER, Donald C ドナルド・パーカー (DPk)  フロリダ Miami, FL, USA
             9 Sets of CCD Images (1, 2, 3, 6, 15 April 1999) 
                                     f/55×41cm speculum equipped with a Lynxx PC

      SCHMUDE, Richard W, Jr リチャード・シュムード (RSc) ジョージア GA, USA
             1 Drawing  (2 April 1999)  380×25cm speculum

      SIEGEL, Elisabeth エリサベト・シーゲル (ESg) デンマーク Malling, Danmark
             1 Drawing  (1/2 April 1999)  270×20cm Schmidt-Cassegrain

      TEICHERT, Gerard ジェラール・タイシェルト (GTc) フランス Hattstatt, France
             2 Drawings  (1, 10 April 1999)  310,330×28cm Schmidt-Cassegrain

      WARELL, Johan ヨハン・ヴァレッル (JWr) ウップサラ Uppsala, Sweden
             4 Drawings  (31/1, 1/2, 2/3, 4/5 April 1999) 
                               25×10cm SC,  180×30cm SC, 330×16cm refractor

                                            *福井市自然史博物館天文臺 Fukui City Observatory
♂・・・・・・・・ 鼎の足:
 例を6Aprに採ると、唐那・派克(DPk)氏は05:45GMTから06:00GMTに良像を得ている(ω=026゚W)のに對して、日本では比嘉保信(Hg)氏が15:35GMTから18:56GMTまで(ω=167゚Wからω=216゚W迄)觀測、その後、イギリスのグレイ(DGr)氏は23:40GMTω=284゚Wで始めている。衝前後になるとイギリスも夕方からの觀測だから、足と足の間が縮まるであろう。

♂・・・・・・・・ アメリカ:
 アメリカ大陸の内、ブラジルは經度的にはヨーロッパと北アメリカの中間で貴重な地點である。例えば、2Aprの觀測ではフロリダのパーカー(DPk)氏は早くて5:30GMTから、シュムード(RSc)氏は6:00GMT邊り、一方デンマークのシーゲル(ESg)さんは00:00GMTである。然し、同日ファウサレッラ(NFl)氏は3:00GMT前後だから、非常に好い位置にいる。然し、NFl氏は早めの觀測のようで、8/9Aprには00:00GMT邊りで觀測しているから、ヨーロッパ型となってしまう。5Aprなどはスウェーデンのヴァレッル(JWr)氏と同じ1:00GMTの觀測である。10Aprにもタイシャ−ト(GTc)氏と同じ0:55GMTである。逆にDPk氏と繋がる時間帯はない。從って、今回はNFl氏はヨーロッパ側で扱うことにする。

 1Apr(118゚Ls)DPk氏の觀測は前日のヘルナンデス(CHr)氏のワッレス・マリネリスの塵雲觀測の追跡のためで強風の中でR光(RG610)とIntだけで行われた。ω=060゚W、071゚Wで異常は見られない。強風と雖も詳細は出ていて、アロマトゥム岬沖の塵白雲は依然出ているし、ヒュペルボレウス・ラクスやイアクサルテスが見える。
 2Apr(119゚Ls)にはDPk氏はω=056゚W、079゚W:両者ともソリス・ラクスの南に極雲の様な白雲が被っている。前者ではマレ・エリュトゥラエウムとマルガリティフェル・シヌスからアウロラエ・シヌスにかけて濃い赤が混じっている。この像にはユウエンタエ・フォンスが明確に出ている。後者のB光ではアスクラエウス・ラクスが濃い。オピールも白い(ここは以前赤道帯霧から外れていた)。同2Apr、シュムード(RSc)氏はω=065゚Wで觀測、矢張りソリス・ラクス南方に白雲。夕霧はクサンテまで昇っている。
Don PARKER's Blue Image
on 2 April 1999(118゜Ls)
at ω=078゜W

 3Apr(119゚Ls)にもDPk氏はω=055゚W、071゚Wで撮像。R光では詳細に富む。オレステスの擴張は明らか。ω=071゚WのB光ではアスクラエウス・ラクスが濃く出ているが、アスクラエウス雲も出ている模様で、R光ではモンテスが幾つか出ているかも知れない。
 6Apr(120゚Ls)にはDPk氏はω=026゚W邊りで良像。マレ・アキダリウムの内部が複雜に撮れている。オレステス延長は明確で、北極冠内にはカスマ・ボレアレが見える。
 11Apr(122゚Ls)にはメリッロ(FMl)氏がCCD像:R光像をω=338゚Wで撮り、その後ω=001゚WまでWr47でB光撮像:ヘッラスの歿から、クリュセ朝霧の濃化などが好く判る。リビュア雲も出ている。
 13Apr(124゚Ls)にはヘルナンデス(CHr)氏はWr23Aでω=290゚W、Wr38Aでω=303゚Wでスケッチ:シュルティス・マイヨル中心だが、マレ・アキダリウムが細く入ってくる様子が描かれ、デウテロニルスからウトピアまで詳しい。
 14Apr(124゚Ls)にはω=299゚WでFMl氏がWr25でCCD撮像、B光はω=301゚Wからω=309゚W:ヘッラスは白く、シュルティス・マイヨルの南部は暗く出ている(赤黒いということ)。ι=9゚。
 15Apr(125゚Ls)にはDPk氏がω=281゚W、304゚Wで撮像:前者ではエリュシウムが夕端で白く、後者ではシヌス・メリディアニが出て來ている。ヘッラスの内部は一様でなく西側1/4ぐらいが暗い。R光では南端に凹みがある。

♂・・・・・・・ 日本からの觀測:
 四月の初め、アメリカではアウロラエ・シヌス以東を觀測しているのに對し、日本では遅れてその西のオリュムプス・モンスが見えているという感じである。因みに福井での觀測は1Aprがω=181゚Wからω=250゚W(Mn)迄、15Aprがω=042゚Wからω=145゚W(Nj)迄であったから、この期間觀測可能であった範囲はω=040゚Wから西廻りにω=250゚W迄だったということになる。繰り返し觀測されたのはその中間ω=140゚W邊りということになるから、オリュムプス・モンスが中心になる。15Aprの福井での觀測時間は12:30から19:50GMTであった。16:00GMTやや前の南中であったと思う。アメリカ本土とは可成り時間差である。觀測終了はGMTで夕方、從って次第にヨーロッパの觀測開始時刻に近付いているわけである。

 1Apr(118゚Ls)には輝くオリュムプス・モンスが夕端にあって、消えて行く様子が觀察された。ω=220゚Wでは殘滓のみ(ι=18゚)。この日はω=217゚Wでシュルティス・マイヨルの出現が確認されたが、ω=250゚W邊りまで朝霧に中にあって空色である。エリュシウムはケブレニアとY字型明部であるが、ω=240゚Wでは夕靄と同じ白さで、ケブレニアより白い。ω=250゚Wでは夕靄と區別がつかない。エリュシウムの白い部分はエリュシウム・モンスの雲の様で小型である。
 2Apr(119゚Ls)には岩崎徹(Iw)氏の觀測がある。ω=221゚Wでは朝霧だけでシュルティス・マイヨルが捉えられなかったが、ω=321゚Wでは淡く出ている。前者ではエリュシウム内に小明斑を見ているが、後者では見失った。ω=240゚Wではヘッラスを見ているようである。アエテリア暗斑はもっと力強く。
 3Apr(119゚Ls):Mnの觀測:ω=224゚Wなどでエリュシウム内にエリュシウム・モンスの雲。エリュシウムは暗部に取り巻かれている。從ってケルベルスは猫背である。一際アエテリアの暗斑に右を押さえられているが、これは赤黒い。ω=268゚Wでもプレグラ-ケルベルスが未だ見える。
 4Apr(119゚Ls) : 足羽山は10℃、夜櫻がボンボリに照らされて満開に近く、2日から車両通行制限。ω=164゚Wでオリュムプス・モンスの先行して暗帯、この時タルシスは南北二分されている。ω=184゚Wでは好いシーイングに惠まれ、プロポンティスTは濃い褐色系。アエテリアの暗斑は大かた朝霧の中にあって、南部はやや空色。北ではオリュムピアが見える。南ではマレ・キムメリウムの東部の南、像の南端に細く明るい部分が見える。O56ではオリュムプス・モンスより明るい。オリュムプス・モンスはこの時眞っ白だったが、中島孝(Nj)氏の紀録によれば、ω=198゚Wではフアッとしていて他を壓している。ω=215゚Wでは好く見えるが、ω=218゚Wでは淡くなった由(ι=16゚)。Iw氏もオリュムプス・モンスをω=193゚W(明白で北極冠より明るい)からω=213゚W(殘滓)まで觀測。ω=193゚Wでのアエテリアの暗斑の描冩はリアル。マレ・キムメリウムは三つの部分に分かれる。朝霧がエリュシウムの方まで張り出している。Mnはこの日はω=213゚W邊りでマレ・キムメリウムの詳細を見たが、シュルティス・マイヨルはω=212゚Wで捕捉できた。Nj氏はω=218゚Wで認め、ヘスペリアも分離している。エリュシウムは南北端とも暗帯で圓く閉じられている。 阿久津富夫(Ak)氏はω=147゚Wと ω=182゚Wで撮像、 後者は良像で、プロポンティスTとアエテリア暗斑が出ている。夕端のオリュムプス・モンスはR光でも明るく出ている。エリュシウムは朝方で白い。
 5Apr(120゚Ls)には可成りの觀測が出た。Ak氏はω=152゚Wとω=163゚Wで撮像、前者ではオリュムプス・モンスが特にG光で分離、後者ではプロポンティスTがほんのりと出ている。村上昌己(Mk)氏もω=150゚Wからω=180゚W迄オリュムプス・モンスを追っている。伊舎堂弘(Id)氏はω=196゚W、ω=206゚Wで觀測。後者では極朝方にノドゥス・アルキュオニウスを認め、オリュムピアも捉える。エリュシウムは未だ明るくなってきたかという程度の由。Nj氏はω=223゚Wでもエリュシウムは地肌色と見倣す。Mnの紀録では、ω=164゚Wで前日と同じく、タルシスが南北に二分されている。ω=175゚Wでマレ・シレヌムが夕方で緑掛かって見えた。一方朝方のアエテリアは北部は褐色系、南部は青色系である。ω=194゚Wでの輝度評価:オリュムプス・モンス0.0、北極冠0.5(オリュムピアはもっと弱い)、朝霧1.0〜1.5、エリュシウム2.0、南端の明部1.5。南端の明部は前日と同じくω=184゚Wで發現。ω=204゚Wでは、プレグラの北部のカーブが見事であった。ω=214゚Wではヘッラスが顕れた。Mnはこれから暫らく大津滞在で、14Aprまで缺測。
 6Apr(120゚Ls):この日には比嘉保信(Hg)氏がω=167゚Wからω=216゚Wまでヴィデオを撮っている。最初からオリュムプス・モンスは分離している。ω=177゚Wでは先行する暗帯が明確。ω=186゚Wから耀きだす。エリュシウムも朝霧の中で明るい。ω=216゚Wではエリュシウム・モンスは青色光でも小さく顕著である。朝霧が強い。
 7Apr(121゚Ls): Mk氏はω=125゚Wから開始、ω=145゚Wでオリュムプス・モンスを捉える(Mk氏の計算では午後1:40火星地方時である)。Id氏はω=223゚W、232゚Wでエリュシウムを中央寄りに把えているが、モンスの明るさに惑わされたのか、全體が小さい。これではアエテリアの暗斑の立場が無い。Id氏の最も不得意とするところ。Iw氏とHg氏とは時間的に丁度Mk氏とId氏の間を埋め、Iw氏はω=167゚W、176゚W、186゚Wで觀測、前二者ではオリュムプス・モンスとタルシスを隔てる暗部を捕捉する、タルシスの方が明るい。プロポンティスTでは苦勞している。Hg氏はω=152゚W(15:10GMT=24:10JST)からω=199゚Wまで撮像。ω=152゚Wではオリュムプス・モンスとタルシスの間の暗帯を描冩し、ω=162゚Wでは夕端のタルシスが北部は眞っ白だが、南部はやや黄色味掛かっているのを分離している。ω=191゚Wではアエテリア暗斑が朝霧の中。ω=198゚Wではケルベルスを挾んでエリュシウムの反對側に明部があるようだが、青には顕れていない様だ。
 8Apr(122゚Ls): Ak氏はω=111゚Wでソリス・ラクスの翳を撮像、その南が靄っている様子。ω=127゚Wではクサンテからオリュムプス・モンスまで白帯だが、後者は分離しており、Bでは暗帯が見える。ω=153゚Wではオリュムプス・モンスが耀いている。Nj氏もω=131゚W~ω=141゚Wでタルシスから南高緯度までリムが明るいとする。實は、Mk氏がω=131゚Wでの觀測から南端東に青白い明部があることに注意して、翌日の觀測へ繋げる。尚、この時Mk氏はNj氏同様オリュムプス・モンスを分離、Mk氏の計算では午後0:45。
 9Apr(122゚Ls)にはMk氏がω=122゚Wで、東南端タウマシア-ダエダリアに青白い明部があることに注意、ω=132゚W、ω=142゚Wと追うが、ω=150゚Wでは見えなくなった様である。その後曇られた譯だが、回転するところをみると、極雲では無いようである。そこで、翌日かに大津に電話があった。確認の爲の依頼が數人の觀測者にあった筈である。尚、この日はシーイングが好かった由で、他にMk氏はω=122゚Wでオリュムプス・モンスを認めている(地方時午後0:05)。ω=132゚Wではアスクラエウス・モンスを分離した(午後2:40)。オリュムピアも検出された。この日、Ak氏がω=095゚W、115゚W、128゚W、137゚W、151゚W、163゚Wと撮っていて、最後の像などは良像で、プロポンティスTが中に入って、G光ではオリュムプス・モンスの暗帯が明確である。ω=137゚Wでも既に同様であるが、但し、未だクサンテの密度が高い。ω=095゚Wではソリス・ラクスが濃く、Mk氏の雲も出ているようである。朝方がはっきりしないのは少し殘念である。


(left) MURAKAMI's drawing on 9 Apr 1999 (122゚Ls) at ω=132゚W
(right) ISHADOH's drawing on 13 Apr 1999 (124゚Ls) at ω=133゚W

 13Apr(124゚Ls)には好い結果がある:Mk氏はω=089゚W、099゚W、109゚W、119゚W&129゚Wで觀測、最初の觀測で南端に青白い雲を確認するが、ω=109゚W邊りでCM通過と見る。夕靄は濃く、赤道に沿って幾つかの雲溜まりがあって赤道帯靄をなしている。ω=128゚Wではアルバが明るい。Hg氏はω=068゚Wからω=111゚Wまで撮像:ω=077゚Wではソリス・ラクスの南に雲、朝霧も濃い。ω=106゚Wではオリュムピアとアスクラエウス・モンスが分離している。この邊りの像は朝方が興味深く、今後話題にしたい。Id氏も好いシーイングのもとでω=123゚W、133゚W、143゚W、152゚Wで觀測、ω=123゚WでMk氏の云うタウマシア-ダエダリアの雲を認める。濃いソリス・ラクスも若干被っているか。ポエニクス・ラクス確認。オリュムプス・モンスもアスクラエウス・モンスも見え、アルバ明るい。オリュムピアも明確に把握。ω=133゚Wは見事なので引用する。パウォニス・モンスも捉えるが、アルシア・モンスは雲がないとId氏は見倣す。ω=152゚Wもタルシス-クサンテの雲も複雜である。
 14Apr(124゚Ls):Mk氏はω=076゚W、ω=085゚W、ω=095゚W、ω=105゚Wで觀測。Hg氏はω=093゚Wからω=141゚Wまで撮影。Id氏はω=149゚Wで觀測。Mk氏はω=076゚Wで不分明ながら赤道帯霧を觀測、ω=095゚Wではソリス・ラクスの南の雲はダエダリアに張り出してきている。アウロラエ・シヌスははっきりしなくなったがオピルが明白。Hg氏の像ではω=121゚Wで既にオリュムプス・モンスが白い。ω=131゚Wではオリュムピアが見える。ω=141゚Wは良像である。Mnが復歸、雲があった爲ω=061゚Wの後トンで、ω=105゚Wからω=144゚W迄四十分毎。ω=105゚WでMk氏の雲を確認。ω=115゚W、124゚Wではダエダリアに降りている。Nj氏もω=120゚Wでタウマシアの雲を觀測、ω=129゚W、139゚Wでオリュムプス・モンスとアスクラエウス・モンスを、それを隔てる暗帯と共に描く。Mnの觀測ではオリュムピアはω=115゚W邊りから見えるが、ω=134゚Wではシーイングが向上し、甚だ明確であった。猶、ω=115゚Wではアスクラエウス雲とおぼしき白斑を見るが、ω=124゚Wでは明るいオリュムプス・モンスが現れている。以後明確。明確になる角度は興味深く、Hg氏の像等で検討の餘地がある。
 15Apr(124゚Ls):最初に述べた様に福井ではω=042゚W〜ω=145゚W、その間、Hg氏がω=057゚Wからω=102゚W、Id氏は雲と煙に惱ませられながらω=059゚W、091゚W、125゚Wで觀測。Hg氏はω=077゚Wから良像、ヒュペルボレウス・ラクスも明確で、ω=096゚Wではアスクラエウス雲の可能性。Id氏はω=091゚Wではソリス・ラクスの南に雲、オピル明るい、ヒュペルボレウス・ラクスも見ているがマレ・アキダリウムと繋がっている。ω=125゚Wではオリュムピア、オリュムプス・モンス共に確認、タウマシアの雲はダエダリアに降りている。Nj氏もω=116゚WでMk雲觀察。Mnは略以下の通り:ω=042゚Wでヒュペルボレウス・ラクス明確、朝霧の方が夕靄より濃い。ω=071゚Wアスクラエウス・ラクスが濃く、雲も在るが如き。夕靄はω=082゚Wで凝縮、ω=121゚Wではシーイングが向上し、オリュムプス・モンス(午前11:45)とアスクラエウス・モンスが見え、北ではオリュムピアが明白。Mk雲はこの角度では北極冠の反對側にあって極雲の様に見えるが、核は夕方に遷っている。ω=130゚Wでアスクラエウス・モンスは圓いが、白くない(午後2:20)。

♂・・・・・・・・ ヨーロッパ+ブラジル側の觀測:
 ヨーロッパの觀測は寧ろアメリカの先を行っているという特徴が出ている。日本では1/2Aprがω=250゚W迄なのに對し、ヨーロッパはω=322゚Wからである。
 1Apr(118゚Ls)にはタイシャート(GTc)氏がω=017゚W、ヴァレッル(JWr)氏がω=028゚Wでスケッチ。両者ともマレ・アキダリウム中心だが、前者ではテムペが白い領域の由、後者は朝夕端が霧。
1/2Apr(118゚Ls)にはグレイ(DGr)氏がω=322゚Wとω=338゚Wで、シーゲル(ESg)さんがω=334゚Wで觀測した。DGr氏の前者はWr25使用、後者はWr58、ヘッラスは明るいが、ω=332゚W迄に弱くなる。但し、緑では未だ見え、シュルティス・マイヨルの方へ降りてきている様である。クリュセはRでも相當明るい。DGr氏は北極冠に未だ靄があると考えている(Gに據る)。ESgさんもクリュセに明るい朝霧、夕方のシュルティス・マイヨルの上には明部(ESgさんはイアピュギアとしている)。一方ニコライ(ANk)氏も同日ω=339゚Wとω=347゚WでCCD撮像:R光とB光でカラー合成(LtE參照)。前者ではヘッラスが少し殘っており、クリュセ朝霧が濃く、後者では朝霧は弱くなっておりマレ・アキダリウムが形好く入っている。夕端の方は翳っていて判断は難しい。更に同朝JWr氏はω=002゚W、10cmSCだがマレ・アキダリウム中心で、ニロケラスも見える由。ブラジルのNFl氏はω=015゚W前後。リビュアからの殘滓の夕霧1.4(北極冠0)。
2/3Apr(119゚Ls)にはJWr氏がω=313゚Wで、テュミアマタ朝霧が強く、リビュア夕霧も出ている。NFl氏はω=350゚Wで、リビュア霧がシュルティス・マイヨルを侵している。
4Apr(119゚Ls):NFl氏はω=355゚W、シヌス・サバエウスの北に夕霧。
5Apr(120゚Ls)にはJWr氏はω=322゚Wで觀測、ヘッラス明るく、リビュアからアエリアに掛けて夕靄、但しシュルティス・マイヨルは底が太く濃く描かれている。ノアキスの南部の端に3の明るさ。朝霧も明るい2。北極冠には細いダークフリンジがある由。NFl氏はω=340゚Wでスケッチ。シュルティス・マイヨルの先端はやや淡く(5)青の由。ヘッラス0.3(北極冠0)。
6Apr(120゚Ls): NFl氏ω=340゚W、同様の觀察。但し、NFl氏は所謂Syrtis-Blue-Cloudを夕方で拘るのは如何なものか。
6/7Apr(121゚Ls):DGr氏はω=284゚W(B)とω=295゚W(R)で觀測、透明度も好く、シーイングが向上し、Wr47Bでシュルティス・マイヨルからウトピア迄よく見える。但し、Wr47ではシュルティス・マイヨルの北部やウトピアは見難い由。ι=14゚。R光ではシュルティス・マイヨル内部などに幾つも暗點が見える如くでホイヘンス火口(グレースの泉)は確かに見える由。一方NFl氏ω=305゚Wでヘッラス0。
8Apr(121゚Ls):NFl氏ω=260゚W、ヘッラス0,エリュシウム0.8で白い。
10Apr(122゚Ls):NFl氏ω=270゚Wで前日と似たような觀察。夕方にエリュシウムを含むような夕霧を見ているようである。シヌス・サバエウスが出て來ている。GTc氏はω=277゚Wでスケッチ、ヘッラス明るい。しかし、北極冠がこんなに小さい筈はない。多分デカイ圓の中に描いているのであろう(何度も云っているのだが)。
11Apr(123゚Ls):NFl氏ω=285゚W、夕靄など前日に似ている。
12Apr(123゚Ls):NFl氏ω=255゚W、ヘスペリアが切れ上がり、アエテリアの暗斑(濃度3.8)が描かれている(メリッロ(FMl)氏は11Apr、14Aprでω=300゚W以上だから、NFl氏は北美と聨携する爲にもう少し觀測時間を伸ばさなくてはならない、などと日本語で云ってもしょうがないナ)。

♂・・・・・・・ 追加報告
 ファウサレッラ(NFl)氏の追加報告は、三月後半のもので日一度の觀測であるが、17Mar(111゚Ls)にはω=147゚W〜155゚Wでオリュムプス・モンスとその先行する暗い帯を見ている。19Marにはもっと中で捉えている。25Marω=070゚Wにはソリス・ラクスを見ているようだが描き方が苦手のようである。29Mar(117゚Ls)にはマレ・アキダリウムが中心。28Marはω=050゚W、30Marにもマレ・アキダリウム中心(觀測時刻は一定していない)。31Mar(117゚Ls)はω=000゚W邊り、リビュア霧と朝霧が描かれている。
 グレイ(DGr)氏の追加報告は28Mar(116゚Ls)ω=025゚Wで、R光による。アウロラエ・シヌスが強く濃く、ユウエンタエ・フォンスを捕捉。マレ・アキダリウムの内部構造がよく見え、ヒュペルボレウス・ラクスも明確。


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