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(4) 火星の極冠の研究

天体望遠鏡で火星を見ていると、赤い火星の一部が白く輝いているのが わかります。これが極冠と呼ばれるもので、火星大気の主成分である 二酸化炭素が冬に気温が下がると北極や南極に凍り付いてできています。 ちなみに下の図はアメリカのハッブル望遠鏡がとった火星の画像です。 大気の主成分が北極と南極の間を行ったり来たりするので、 この極冠の形成は火星の大気大循環に大きな影響を与えます。 どれくらいかというと、たとえば1火星年(地球では約2年)で 気圧が約25%も変化するほどなのです。 つまり火星の気象を考えるうえで、極冠の研究は無視できないもの となってきます。 しかし極冠の内部については、未だにほとんどわかっていません。 地上観測からは極冠の大きさは計算できても、その内部構造までは わからないのです。 やはりそこは火星探査機で実際にそこにいって観測するのが 一番なのですが、それの先駆けとされたアメリカの火星 探査機Mars Polar Landerも失敗に終わり、まだまだ極冠の内部を 知ることができるのは先の話かもしれません。

さてそこで私たちの研究ですが、数値シミュレーションによって 極冠の形成過程を調べています。 具体的には季節ごとの極冠の大きさや、それによる気圧の年間変動です。 極冠の大きさについては、京都大学付属飛騨天文台等で観測された 地上データがたくさんあります。 また気圧のデータについてはアメリカの火星探査機Vikingのデータを 使っています。 しかしやはりデータの数が足りないことは明らかで、日本の 火星探査機「のぞみ」を含めこれからの火星探査に期待せざるをえません。

(早川 知範 記)


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