前ページ 目次 次ページ

太陽フレアに伴う衝撃波

太陽で爆発(フレア)が起こると、衝撃波が発生する事がある。 1960年、モートンはフレア直後に太陽面を伝播する波のようなものを 発見した。この波は線という彩層が放つ光の観測で見つかり、 モートン波と呼ばれている。 その後もモートン波はフレアに伴ってしばしば観測され、速度は約1000km/sで、 フレア発生場所から50万kmも離れたところまで伝播する事が分かってきた。 モートン波の正体については線で観測される ことから「彩層を伝わる波」と考えられていた。 しかし1000km/sという速度は彩層の磁気音速(数十km/s)の10倍以上もあり、 彩層を伝わっているのであれば、すぐに拡散してしまい50万kmも遠方にまで 伝わることはなく「彩層を伝わる波」では説明できない。

この問題は内田によって解決された。フレアによって生じた弱い衝撃波(マッハ数が ほぼ1)はコロナをほぼ磁気音速(約1000km/s)で伝わる。その際コロナが 上層部ほど磁気音速が速い状態であれば、衝撃波は太陽面へと向かって屈折し 彩層と交わる。この交わった部分が、線で観測されるモートン波である と内田は考えた。弱い衝撃波の伝播速度は約1000km/sで観測されているモートン波の 速度と合致する。また、弱い衝撃波であれば遠方まで拡散せずに伝わる事が 出来る点もモートン波の特徴と一致する。 このようにモートン波を上手く説明できる内田モデルは現在広く支持されている。

京都大学飛騨天文台の太陽フレア監視望遠鏡は線で太陽全面を 常時観測しており、これまでに十数例のモートン波を発見している。 そのうち2例はコロナを観測する太陽X線観測衛星「ようこう」でも 同時に観測されており、X線波が見つかっている。我々はこれらのX線観測データを 詳しく解析することで、弱い衝撃波がコロナ中を伝播しており、 それに対応する彩層部分にモートン波が位置することが分かった。これは 内田モデルを肯定する決定的な証拠である。 また十数例のモートン波観測から、モートン波が観測されるフレア領域の 磁場構造には類似点があることが分かってきた。今後は豊富な観測例をもとに、 統計的な研究からモートン波発生の条件やメカニズムの解明に迫っていく。

(成影 典之 記)


前ページ 目次 次ページ
PDFファイル(クリックして下さい)