CMO/ISMO 2024/25 観測レポート#14
2025年四月の火星観測報告
(λ=064°Ls ~ λ=077°Ls)
村上 昌己・西田 昭徳
CMO
#546 (
♂・・・・・・ 『火星通信』に送られてきた四月中の火星面画像をもとに十四回目のレポートを纏める。火星は四月には順行を続けて「ふたご座」から中旬には「かに座」へともどり、日没時には南中をすぎるようになり、夕空高く見えるようになっていた。黄経での「東矩」は四月21日のことであった。月末にはプレセペに近づいていった。明るさは落ちてプラスゼロ等級になり、今観測機も終盤である。
四月には季節(λ)はλ=064°Lsから077°Lsまで進み。視直径(δ)は、月初めのδ=8.2”から、月末にはδ=6.6”まで小さくなった。傾き(φ)は北向きに大きく、11°Nから16°Nになっていて、縮小している北極冠が観測できた。位相角(ι)は、下旬にはにはι=37.1°と今期の最大となり、朝方の南半球の欠けが大きくなっていた。
右図には、この期間の視直径と中央緯度の変化の様子をグラフで示した。赤い実線が今接近の視直径の変化である。傾き・中央緯度(φ)は緑色の点線で示している。黄色くマークされているところが、今月のレポート期間の様子を示している。
前回接近時の火星面の様子は以下のリンクから参照できる。
* CMO#528
(01 May ~ 31 May 2023, λ=058~072°Ls, δ=5.4~4.7”)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/528/2022repo_16.htm
* CMO#529
(01 June ~ 30 June 2023, λ=072~085°Ls, δ=4.7~4.2”)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/529/2022repo_17.htm
2010年の接近時には、もう少し大きな視直径の時の観測記録が、以下のリンクで閲覧できる。
CMO#371 (16 Mar~
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn5/CMO371.pdf
2012年の小接近時にも、視直径の大きな時の記事があり、以下のリンクから辿れる。
CMO#395 (1 February~
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/395_Repo07.htm
♂・・・・・・ 2025年四月の火星面の様子
○
火星面概況
火星は、四月には季節(λ)はλ=064°Lsから077°Lsまで進み、北半球の夏至(λ=090°Ls)前の火星面になっていた。視直径(δ)は月初めの8秒角から、月末には6秒角台までさらに小さくなった。位相角(ι)は36〜37度台となり、朝方の南半球の欠けが大きくなっている。
この季節には、少し縮小がすんだ北極冠が明るく見えていた。午後の山岳雲の活動は、午後の遅い火星面が見え難くなり、はっきりとらえられた画像は少なくなっている。赤道帯に懸かる靄の明るさは、はっきりしてきた。傾きはさらに北向きに大きくなってきて、φ=15°Nを越えてきている。
○ この期間の北極冠の様子
四月も極展開画像を並べて北極域の様子を月初め・中旬・月末と比較してみた。中央緯度が10°Nを超えて傾きが大きくなり、視直径はたいぶ小さくなったが縮小してゆく北極冠の様子がとらえられている。
λ=065°Lsの上旬では、雪線緯度は平均値で72°N〜74°N付近で全体は丸くとらえられている。10日にはルウィス(MLw)氏の画像に北極冠内にかげりがとらえられていて、周辺域が明るくなっていて、オリュムピア(Olympia)が北極冠より分離してきたようである。北極冠との間がリマ・ボレアリス(Rima Borealis)という暗帯で、視直径の大きな時は右画像のように確認できる。(トピックスに元画像)
中旬になると、オリュムピア付近が残って、他の部分の融解は進んでいるようで、形がいびつになってきている。月末になるとオリュムピア付近以外の雪線は78°N〜80°N付近に後退しているようになり、これ以上は大きく縮小が進まない永久北極冠状態になっているようである。
ここで、北極冠の少し季節が進んだマーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)の画像を取り上げる。右側は、MOLAの画像である。リマ・ボレリアスとカスマ・ボレアリス(Chasma Borelias)が北極冠の亀裂として観測される。
オリュムピアは融けてなくなり、永久北極冠は、80°N〜85°N付近に000°W方向に偏心して残るようである。北極冠周辺の観測は次期接近期からの観測対象になる。
○ 夕方の山岳雲の活動
午後の火星面の山岳雲の活動の様子を示す画像を取り上げた。下図の上段は、タルシス三山・オリュムプスモンス付近の高山の含まれる領域の上・中・下旬の様子を取り上げた。B光画像には、山岳雲の様子が明るく捉えられている。
下旬の画像では、低緯度に位置するオリュムポス・モンス辺りの明るさが強くなっている。比較して、アルバ・パテラあたりの明るさは弱くなったように感じられる。タルシス三山もまだ低緯度の二つの高山の活動は弱いようである。
17日の画像では夕縁近くのオリュムポス・モンスが明るいが、このときのオリュムポス・モンスの火星地方時は、13h25mほどのまだ早い時刻である。「衝」の後では、午後側の火星面が小さくなり夕方のターミネーターは観測出来ない。
下段には、エリュシウム・モンスの午後の山岳雲の様子を示した。
○ 赤道帯霧 (ebm: Equatorial Band Mist)
活動的になっている赤道帯霧の様子を並べてみた。上旬・中旬・下旬の様子を並べてある。夕縁にクリュセがある経度である。タルシスを横切って朝縁までの明るさが感じられる。朝霧の中からはタルシス三山。オリュムプス・モンスの山頂が飛び出して暗く見えている。赤道帯霧(ebm)は今後も明るくなっていき、ピークは北半球の夏至 (λ=090°Ls) 頃になる。
○ ヘッラスの様子
今回もヘッラス(Hella)の様子を並べてみた。夕方のヘッラスが明るくなっているのは上旬からとらえられている。
下段には、阿久津氏が中旬から連日追いかけた画像から選んで、夕方・日中・朝方と並べてみた。ヘッラスはλ=090°Ls頃には、降霜で明るくなるのが知られているが、まだ朝方の活動は感じられない。大きく欠けの中に入っていることもあるのかもしれない。これらのB光画像にもシュルティス・マイヨルを挟んで拡がる赤道帯霧が淡くとらえられるようになっている。
○ トピックス
ここでは、四月に捉えられた、興味ある画像を紹介する。
北極冠内部の亀裂
四月には、ルイス(MLw)氏が、北極冠内部に陰りが出て自転とともに移動している様子をとらえている。上部で取り上げた北極冠の極座標展開図にも加えてある。陰りの右側の明るさはオリュムピアである。30日にはフォスター(CFs)氏も北極冠に亀裂を記録している。夕方側の小さい方がオリュムピアで、間の暗帯がリマ・ボレアリス(Rima Borealis)である。
上の、夕方の山岳雲の活動の中に取り上げた、17日のウォーカー(GWk)氏の北極冠にも明るさの偏りが見えているが、今ひとつはっきりしない。
♂・・・・・・ 2025年四月の観測報告
四月には前月と同じメンバーから報告が寄せられている。ギリシャのカルダルス(MKd)氏より追加の21観測報告があり、三月より報告数は増えている。日本からは石橋氏より2観測。フィリッピンの阿久津氏の36観測。中旬から月末までの連日の撮影で報告数を延ばしてくれた。アメリカ側からは4名より25観測。ヨーロッパ側からは3名より28観測(21観測は追加報告)。アフリカのフォスター氏からの21観測で、合計では10名から112観測であった。
五月中旬になってピーチ(DPc)よりメールで、2024-2025年に撮影した惑星画像などのリンク集が届いたが、ウエッブペ−ジからの転用には許可が必要とのことで、ここでは追加観測として取り上げない。英文ISMOページのMay2025LtEのリンクからたどられたい。ギャラリーには取り上げていない2025年一月から四月までの画像を見ることができる。
阿久津
富夫 (Ak) セブ、フィリピン
AKUTSU, Tomio (Ak) Cebu island,
The PHILIPPINES
36 Colour*+ 15 B# + 14 IR# Images (2, 4, 13, 14, 18~30 April 2025) 17 days
36cm
SCT with an ASI224MC*, 45cm
Newtonian (F/4) with a Mars-M#
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_Ak.html
クライド・フォスター (CFs) ホマス、ナミビア
FOSTER, Clyde (CFs) Khomas,
12 Sets of RGB + 16
R610LP Images (7~9. 15~18,
20~23. 30 April 2025) 12 days
36cm SCT with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_CFs.html
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
ISHIBASHI, Tsutomu (Is) Sagamihara,
2 Colour + 2 B
Images (6, 30 April 2025)
31cm Newtonian (F/6.4) with an ASI 462MC
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_Is.html
マーチン・ルウィス (MLw) セント・アルバンス、英国
LEWIS, Martin (MLw) St. Albans, Hertfordshire, the UK
3 Colour Images (4. 10 April 2025) 45cm Dobsonian,
with an Uranus-C
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_MLw.html
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
MELILLO, Frank J (FMl) Holtsville, NY, the
5 Colour* + 4 Sets of RGB Colour* + 5 B Images (2*, 10, 18, 24,,
29 April 2025)
25cm SCT with an ASI 290MC* & an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_FMl.html
エフライン・モラレス=リベラ
(EMr) プエルト・リコ
MORALES RIVERA, Efrain (EMr)
Aguadilla,
6 RGB Colour images (3, 14, 20, 22, 26, 28 April
2025) 31cm SCT with an ASI 290MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_EMr.html
ゲイリー・ウォーカー (GWk) ジョージア、アメリカ合衆国
WALKER, Gary (GWk) Macon, GA, the USA
5 Sets of RGB
Images (2, 9, 13, 17, 21 April 2025)
25cm Mak-Cassegrain with a QYH5V200M
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_GWk.html
ヨハン・ワレッル (JWr) スキヴァルプ、スウェーデン
WARELL, Johan (JWr) Lindby,
2 Sets of RGB
+ 3 IR Images (14, 23, 26 April 2025 53cm Newtonian @ f/15 with an ASI
462MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_JWr.html
ティム・ウイルソン (TWl) モンタナ、アメリカ合衆国
WILSON, Tim (TWl) Jefferson City, MO, the
5 Sets of RGB
+ 5 IR Images (8, 14. 16, 22, 23 April 2025) 28cm SCT with an ASI 678MM
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_TWl.html
追加報告
マノス・カルダシス (MKd) アテネ、ギリシャ
KARDASIS, Manos (MKd)
21 Colour + 1 B images (21~24*, 27~30* Jan; 5*, 6*, 11, 17, 25~27 Feb; 1, 2, 7, 8, 10, 14 Mar 2025)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2024/index_MKd.html
♂・・・・・・ 2025年六月・七月の火星面と観測の目安
火星は「しし座」で順行を続け、六月中旬には17日にレグルスの北を通過してゆく。視直径は六月1日の5.5秒角から、七月1日には4.9秒角、「おとめ座」に入って八月1日には4.4秒角まで小さくなって、赤緯も八月10日には南に移り今観測期も終了時期を迎える。傾きは北向きに25°Nほどまで大きくなり、北極冠を含めて北極域が最後まで観測できるであろう。視直径が4.0秒角を切るのは九月中旬のこととなる。
六月には、季節(λ)は、λ= 091°Ls〜104°Lsまで進み、北半球の「夏至」過ぎの火星面を眺めることとなる。傾き(φ:中央緯度)は北向きに大きくなり、φ=21°Nから24°N台へ、位相角(ι)は、ι=35°台から減少して、ι=32°ほどに戻ってゆく。朝方の欠けは少しづつ小さくなって行く。七月には、季節(λ)は、λ= 104°Ls〜119°Lsまで移る。傾きは七月末にはφ=26°Nの最大まで傾く。位相角(ι)は、ι=32°ほどからι=28°ほどになる。
視直径は小さくなり観測は厳しくなるが、北極冠周辺のサイクロンの発生時期となってくる(λ= 120°Ls〜)、南半球への水蒸気の循環も進んで、ヘッラスの振る舞い、南極雲の様子などにも興味が出るが、傾きの北側に大きな期間で詳しい観測は難しい。
六月・七月中の火星面の様子を、いつものグリッド図で示した。ピンク色にしてあるところが欠けている部分である。
←P は、モータードライブを止めたときに火星が移動して行く方向で、南極を正確に上に向けるときに重要な値(北極方向角)で暦表ではΠで示している。北極冠の雪線の予想は図には反映されていないが、SnowLineの数値で示した。この季節になると、解け残る永久北極冠の緯度となり変化は少なくなっている。
今期の観測とも重なるが、次回接近期にも北半球の春分(λ=000°Ls)過ぎの観測となる。一サイクル前の観測期にまとめた下記の論考を参考にされたい。
2011/2012年の火星(そのII) CMO/ISMO #395 (25 March
2012)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/395_MNN.htm