FU Ori

オリオン座FU星(FU Ori)

この画像の左下に、星雲をともなって白く輝いているのがオリオン座FU星※1です。 オリオン座の、オリオンの右肩のベテルギウスと頭のラムダ星との中間あたりをせいめい望遠鏡でとらえました。 この画像全体は、暗黒星雲 Barnard 35の領域にあります。 この画像の中でも、右上部分にははっきりと黒く見えるところがあり、それはリンズの暗黒星雲 LDN 1594に相当します。

 ※1 変光星が発見されると、各星座でその星座の名とともにR,S,T,,, というアルファベットの大文字を冠して名前を付けるという習慣です。 Zまで行くと、次はRR,RS,RT,,,とし、ZZまで行くとAに戻ってAA,AB,AC,,,として行きます。

オリオン座FU星型バースト現象(FU Ori バースト現象)

恒星は、星間物質から生まれて、太陽のように核融合反応で安定して輝く主系列星になるまでに、 原始星の段階、おうし座T型星(T Tau型星)の段階などを通って来ます。 オリオン座FU星は、そういう進化の途中にあります。 そして、突然何百倍も明るくなって(バーストと呼ばれる)、それ以降ずっとその明るさが続いているという星です。 1936年末からの数か月でそれまでの16等星から9等星になり、最初は新星という現象かと思われました。 しかし20世紀の後半になって、これは主系列星になるまでに何十年かの間明るくなる現象であろうとわかって来ました。 そして、さらにこういった星が10個ほど見つかって「オリオン座FU星型」とグループ化されました。 この型の星として 画像ギャラリー NGC 6914 星形成領域の画像の右下に見える はくちょう座V1515星(V1515 Cyg)も、星雲をともなって輝いているのがわかります。

オリオン座FU星 と はくちょう座V1515星
オリオン座FU星型の2つの星
オリオン座FU星(左) と はくちょう座V1515星(右)

主系列星の前の、原始星の段階では、ガスが降り積もって行ってその重力エネルギーの解放が恒星を光らせています。 そして、力学的にだいたい平衡の状態を保ちつつ収縮して光るおうし座T型星の段階に進みます。 現在考えられているところでは、中心星への質量の降り積もりが時おり非常に激しくなって、それで、 全体として何百倍も明るくなるということが起こり、オリオン座FU型星バーストとして観測されるのでしょう。

オリオン座FU星は1300光年の距離にあり、この画像ではわかりませんが、連星系をなしています。 わずか0.5秒角だけ南に、伴星と思われ、明るくなっていないので主星よりずっと暗いオリオン座FU星Sが存在します。 すばる望遠鏡の補償光学観測装置で、主星へと降り積もりつつある星周物質や伴星をとらえています。

スペクトル

FU Ori のスペクトル

光を波長(色)ごとに分けて波長ごとの光の強度を示したものを「スペクトル」と呼びます。 普通の恒星のスペクトルを記録すると、水素などの原子が吸収する特定の色の光(吸収線)がへこんで見えます。 このオリオン座FU星のスペクトルでも、左の短い波長から順に、ナトリウム、カルシウム、水素、・・・の吸収線がへこんで見えています。 F型やG型の超巨星と同じようなスペクトル型だと考えられています。 ただし、水素の次、波長671 nmのリチウムに関しては、太陽のように主系列に達してしまうと核融合反応が中心部分で起こりリチウムは壊れてしまうので、この吸収線が見えているということは、その前の段階の星であることを示しています。

そして、水素原子の「バルマー系列アルファ線」(波長656.3nm)は、吸収線だけではなく、すぐ右側では明るさが増えていて、輝線になっています。 このように、吸収線と輝線が隣り合うスペクトル線形状のことを、「はくちょう座P星型輪郭(P Cyg型プロファイル)」と呼びます※2。 水素原子の本来のバルマー系列アルファ線の波長を中心とする強い輝線と、私たちに速く近づいて来るガスが吸収するため短波長側にドップラー偏移した吸収線との複合スペクトルなのです。 恒星からガスが星風として流出しているために、このように観測されます。

 ※2 天文学辞典の P Cyg プロファイル を参照してください。

トップ画像
2024年12月29日 21時39分(JST)
観測装置:TriCCS
露光時間:g, r, i各バンド 600秒
写野:24.2 x 14.3arcmin
 (横2x縦2の写野をマッピング)
Ⓒ 京都大学岡山天文台/ 東京大学
高解像度版(4145x2452pix, 2.3MB)

スペクトル
2025年1月15日 19時58分(JST)
観測装置:KOOLS-IFU
露光時間:VPH683 240秒
Ⓒ 京都大学岡山天文台