M60 銀河, NGC 4647 銀河

M60とNGC 4647 二つの異なるタイプの銀河

おとめ座の方向に、二つの銀河が並んで見えます。楕円銀河※1 M60(NGC 4649)と、渦巻銀河NGC 4647です。 このペアはArp 116と呼ばれ、特異な形や重なりをもつ銀河を集めた アープ銀河カタログ※2 に登録されています。

M60とNGC 4647は、性質の全く異なる銀河です。 画像中央に見えるM60は黄白色に輝き、滑らかで丸みを帯びた形をしています。 温度の低い年老いた星が多く、銀河全体が黄白色に見えるのが楕円銀河の特徴です。 その右上に見えるNGC 4647は淡い青色を帯び、うっすらとした渦巻腕が確認できます。 青い光は若い星や星形成領域のもので、星が今も生まれていることを示しています。

Arp 116は物理的にある程度接近した銀河ですが、特異な形を示していません。 これは、銀河の衝突がまだ初期段階にあるためか、あるいは、強い相互作用を伴わずにこのまま離れていく可能性を示しているのかもしれません。

※1 文献によっては、M60を楕円銀河ではなくレンズ状銀河(S0)と分類している場合もあります。
※2 アープカタログやそこに掲載された代表的な銀河の解説は、 「特異銀河 (相互作用銀河・衝突銀河)」に掲載されています。

M60とNGC 4647のスペクトル

M60 のスペクトル
M60のスペクトル
NGC 4647 のスペクトル
NGC 4647のスペクトル

上の2つの画像で(a)の部分はM60とNGC 4647の光を波長ごとに分けた画像で、(b)は波長ごとの明るさを縦軸にとったグラフです。 このような波長ごとの明るさの分布をスペクトルと言い、二つの銀河のスペクトルを比べると、その性質の違いがよく分かります。

M60のスペクトル(上段)には、ナトリウム(Na)やマグネシウム(Mg)の吸収線、酸化チタン(TiO)による吸収帯が確認できます。 これらは温度の比較的低い星(G、K、M型星)のスペクトルに見られる吸収線で、年老いた星が多い銀河に特徴的なスペクトルを示しています。 電離した水素からの放射(Hα線)は見られません。

一方、NGC 4647のスペクトル(下段)では、水素からの放射(Hα線)が明瞭に現れています※3。 これは若い星が放つ強い紫外線によって周囲の水素ガスが電離し、再結合するときに生じる光で、星の誕生が今も続いていることを示しています。

※3 このほかにも、電離した窒素([N II])や硫黄([S II])からの放射が見られます。これらは星間空間で電子との衝突で励起されたイオンからの光です。

銀河の形、色、スペクトルの関係

NGC 4214 不規則銀河
不規則銀河の一例:NGC 4214

楕円銀河である M60では金属の吸収線が見られ、星形成はほとんど終わっていました。 一方、渦巻銀河である NGC 4647では電離水素からの放射が見られ、星の誕生が今も続いています。 実は、このような銀河の形と物理的な性質には、一般的な対応関係があります。

早期型の銀河(楕円銀河やレンズ銀河)では、冷たいガスが少なく、新しい星の誕生はほぼ止まっています。 そのため、長い時間を生きる低温の星が多くを占め、銀河全体は黄色から黄白色に見えます。 スペクトルには金属吸収線が目立ち、若い星やガスの活動はほとんど見られません。

一方、晩期型の銀河(渦巻銀河や不規則銀河)では、ガスや塵が豊富に残っており、新しい星が次々と生まれています。 その中には重い星も軽い星も含まれていると考えられますが、重い星は非常に明るいため、観測される光に占める割合が大変大きくなります。 重い星は高温で青白く輝くため、銀河全体の色も青みを帯びます。 スペクトルには電離水素からの輝線が現れ、活発な星形成が進んでいることを示しています。

トップ画像
2025年4月29日 22時44分(JST)
観測装置:TriCCS
露光時間:g, r, i各バンド 420秒
写野:23.8x14.5arcmin
 (横2x縦2の写野をマッピング)
Ⓒ 京都大学岡山天文台/ 東京大学
高解像度版(4078x2486pix, 6.8MB)

M60のスペクトル
2025年5月22日 20時25分(JST)
観測装置:KOOLS-IFU
露光時間:VPH-blue 1800秒
Ⓒ 京都大学岡山天文台

NGC 4647のスペクトル
2025年5月22日 22時00分(JST)
観測装置:KOOLS-IFU
露光時間:VPH-blue 1200秒
Ⓒ 京都大学岡山天文台