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(5) 太陽フレアと恒星フレアの統一モデル

太陽フレアの最高電子温度(T)とエミッション・メジャー() の間には相関がある( は とともに増大する)こと が知られています(e.g., Feldman et al. 1995, Yuda et al. 1997)。 ただし、 は電子密度、 は体積。 この関係は、通常のフレアよりエネルギーの小さなマイクロフレアでも 成立しており(Shimizu 1995)、一方、太陽フレアより何100倍 -何千倍も エネルギーの大きな恒星フレア(Algol, UX Ariなど)も同じ相関の 延長上にくることが知られています(Feldman et al. 1995)。 さらに興味深いことには、最近あすかで発見された原始星フレア (Koyama et al. 1996, Tsuboi 1996)の温度とEMも同じ相関にのることが わかってきました(下左図参照)。 この相関が成立する温度とEMの範囲は、 もの広い範囲に及び、共通の 普遍的な物理機構が働いていることを予感させます。

われわれ(Shibata and Yokoyama 1999)は、 Yokoyama and Shibata (1998) が見出したフレア温度のスケーリング則(磁気リコネクション加熱(下右図)と 熱伝導冷却のバランス)と圧力平衡(フレアループの磁気圧= ガス圧)を用いると、 エミッション・メジャーが


と書ける、ということを見出しました。(ただし、 はコロナ磁場強度。) 太陽黒点(または活動領域)と原始星の平均磁場強度は 同程度と考えられているので、この関係式は上の経験的な 相関関係を良く説明します(下左図参照)。 以上のことから、共通の普遍的物理機構とは「フレアの最高温度は、 リコネクション加熱と熱伝導冷却のバランスで決まる」ということであり、 観測されたEM-T関係は、 原始星フレアにおいても太陽フレアと同様に磁気リコネクションによる エネルギー解放が重要な役割を果たしていることを強く示唆していると言える でしょう。

[参考文献] Shibata, K. and Yokoyama, T. (1999) ApJ 526, L49-L52 (他の引用文献については、この論文の参考文献を参照のこと)

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(柴田 一成 記)