前ページ 目次 次ページ

太陽磁場活動望遠鏡 (Solar Magnetic Activity Research Telescope: SMART)の建設

強い太陽フレアが発生すると、宇宙空間および地上の電気・通信・情報設備が 様々な影響を受けることが知られており、又その際、宇宙ステ−ション等 大気圏外で活動している宇宙飛行士の上には健康上無視できない量の放射線が 降り注ぐことが危惧されています。従って、これからの現在文明と宇宙活動に とって、強い太陽フレアの発生を事前に予知して、警報を発することが必要と なります。また、太陽系以外の宇宙で起こっている様々な突発的高エネルギー 天体現象にも、天体磁場が重要な役割を果たしていることが判って来ましたので、 太陽フレアの研究は活動的宇宙の実験室とも云われています。

我々は飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡を用いた観測から、強い太陽フレアは 強く捩れた磁束管が太陽内部から浮上してくる際に生じることを多くの例で 明らかにすることに成功しました。ところが、捩れた磁場構造が現れただけで フレアが起こるとは限らないことも判りました。また、どのようなメカニズムで、 フレアの引き金が引かれるのかについては未だ全く判っていません。これを知る ためには、磁束管の浮上によって誕生する黒点群の磁場構造の変化とその周辺の 活動現象を太陽全面にわたって、連続的に詳しく追跡する必要があります。 このために開発されたのがSMARTです。予算要求の段階では「高分解能太陽 全面像望遠鏡」と呼んでいましたが、太陽の磁場活動を研究するという目的を 強く意識して、 太陽磁場活動望遠鏡(Solar Magnetic Activity Research Telescope)と呼ばれ、 略してSMARTという愛称が使われるようになりました。 SMARTの完成写真と工場内組み立て時の写真を図1に示しています。

SMARTは次の4本の望遠鏡から構成されています。

(1) 20cm全面像望遠鏡:
口径20cm・ F10対物レンズ + 0.25 幅Lyotフィルタ + 16M(496×4096)ピクセルCCDカメラで 太陽全面としては世界最高分解能の像を取得します。

(2) 20cmベクトル磁場望遠鏡:
口径20cm・ F10対物レンズ + 0.125 幅Lyotフィルタ + 4MピクセルCCDカメラによって、 太陽全面としては世界最高分解能のベクトル磁場像を取得します。 また再結像レンズ系を切り替えることによって、より高分解能のベクトル 磁場部分像も取得します。

(3) 25cm高分解能望遠鏡:
口径25cm・ F8対物レンズ + 世界最大口径 50mm 0.25 幅Lyotフィルタ + 16Mピクセル CCDカメラによって、高分解能の部分像を撮影します。

(4) 25cmファブリペロ望遠鏡:
口径25cm・F8対物レンズ + Fabry-Perotフィルタ + 偏光分離プリズム + 16MピクセルCCDカメラによって、より高精度のベクトル磁場像を取得します。 また、偏光分離プリズムを光路分離プリズムに、6302 フィルタを フィルタにそれぞれ置き換えるることによって、Hと 6100 連続光の2色で高分解能像を取得します。

SMARTがその性能を十分に発揮して太陽磁場活動と太陽フレアの研究に 新しいページを開くことがいに期待されています。

(黒河 宏企 記)



前ページ 目次 次ページ
PDFファイル(クリックして下さい)