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大フレア発生黒点群においてみられた黒点の回転運動について

私たちは、フレアのエネルギー蓄積・解放機構の解明を目指して、 大フレアを発生させた黒点群(活動領域)の特徴を統計的に調べています。 今太陽活動周期(第23活動周期: 1996年から)に出現した黒点群の数は 1996年から2002年までの7年間で約2300個でしたが、そのうち 大フレア(Xクラスフレア)を発生させたものは34領域でした。 これらの34領域のうちSOHO衛星(Solar and Heliospheric Observatory)の データが存在する32領域について黒点群の発達・衰退過程を調べました。

今回の研究で新たにわかったことは、大フレアが発生した黒点群に 共通して何らかの回転運動がみられるということです。 小さな黒点の発生と時計回り或は反時計回りの一定方向への運動や、 デルタ型を形成している異極の間の磁気中性線(磁場の極性の境界部分)の 回転運動が多くの黒点群でみられました。 デルタ型とは、同一半暗部(灰色のところ)内に異なる極性の 暗部(黒いところ)が存在する磁場構造をいいます(下図参照)。 回転の方向には規則性がみられ、黒点の出現が北半球の場合は 回転の向きは時計回り、南半球が反時計回りという傾向にありました。 この傾向は磁場のヘリシティ(ねじれ)の南北半球則と関係が あると考えられ、デルタ型の磁場構造が一本の磁束管をねじったときに できる「こぶ」の部分であると考えると、うまく説明ができます。 このような磁束管のねじれの部分には大フレアのための エネルギーを蓄えることができるので、フレアの条件として 磁束管のねじれ構造が必要であると考えられます。




(石井 貴子 記)



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