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磁気リコネクションジェットに発生する内部衝撃波と粒子加速の可能性

「太陽フレア」は「磁気リコネクション」によって発生すると考えられている。 その際、短時間のうちに磁気エネルギーが解放され、 高温ガスや高エネルギー粒子が作り出される。 それらが放射するX線や線は、 「ようこう」や「レッシー」衛星などによって観測されている。 ところで、 これらの高エネルギー粒子は、 「リコネクションジェット」(高速流)の両側に発生する slow shock(衝撃波の一種)や、 ジェットと磁気ループとの衝突によるfast shock(衝撃波の一種) によって作られている可能性がある。 しかし、太陽における「粒子加速」を完全に説明する理論モデルは、まだない。

そこで我々は、 ジェットがループトップのfast shockにたどり着く前に、 ジェットの内部で「内部衝撃波」を作る(その結果粒子加速が起こる) のではないかと考え、 高分解(使用したグリッド数は130001300 )の 2次元電磁流体シミュレーションによって検証した。 初期条件として、互いに反平行な磁場を置いて「電流シート」を作り、 電流シートの中心に摂動を与えた。 その結果、最終的に速い磁気リコネクションが起こった。 そして、その際に、 ジェットに以下の2種類の内部衝撃波が発生することが分かった(図)。 (第1段階)薄くなった電流シートで、 「セカンダリー・テアリング不安定性」が発生する。 その結果作られる小さなガスの塊が噴出されるために、 ほぼ等間隔に内部衝撃波が発生する。 (第2段階)その後ジェットが振動を始める。 その結果、ジェットの両側の高圧ガスに衝突してさらに内部衝撃波が発生する。

こうして作られる衝撃波が実際の太陽でも作られているとすれば、 太陽における粒子加速に効くはずである。 また、このようなリコネクションジェットの内部衝撃波は、 原始星や銀河・銀河団における粒子加速にも効くはずである。


(田沼 俊一 記)



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