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回転星の崩壊によるガンマ線バーストの一般相対論的MHDシミュレーション

ガンマ線バースト(以下GRB)は数秒から数分の間で100keV程度のガンマ線を放出 する突発現象である。GRBはその最初の発見から現在に至るまで数多くの観測が あるにもかかわらず、何がGRBを引き起こしているか(central engineは何か)、 どのようにしてGRBを起こしているのかといった基本的な問題が解決されていない。 宇宙最大の謎であり、今もっとも注目されている天体現象である。

私はガンマ線バーストの最大の謎の一つである中心エンジンの解明を目標として 研究を進めてきた。近年の観測からGRBは非常に高速(100 )で 細く絞られたジェット構造をしていなければならないと考えられている。また、 GRBと超新星爆発との関連性を示す証拠がいくつか見つかっており、GRBの中心 エンジンとして有力視されている。 そこで私は特に中心エンジンとして有力視されている超新星爆発に注目して、 そこからGRBの元となる相対論的ジェットの形成を一般相対論的効果を含めた 磁気流体(MHD)コードによってシミュレーションしてきた。 超新星爆発をモデルとした相対論的ジェット形成のシミュレーションは今まで にいくつか行われてきたが、それらのモデルではジェットの形成、加速に関して 完全に解いていなかった。また発生したジェットの収束についても問題があった。 我々は新たに磁気的プロセスによるジェットの形成を試みている。それは磁場を 使うことによってジェットの形成、加速そしてジェットの収束まで完全に 解くことができるからである。

その結果、星の外層が中心コアの重力に引かれて落ちていく際、円盤状の 構造ができ、中心付近で衝撃波を発生し、それが外向きに伝播するときに 内側からジェット状の噴出を形成することが一般相対論的効果を含めた MHDシミュレーションによって初めて示された。このとき発生したジェットは 磁気圧と磁気遠心力によって加速され、回転のよって増幅されたトロイダル磁場に よるピンチによって細く絞られた構造を作っていることが分かった。また、 発生したジェットは光速の30%程度の速度を持っていることが分かった。

(水野 陽介 記)



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