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2001年4月10日のフレア

フレア(太陽表面爆発)は、磁場のエネルギーが短時間に解放される太陽系内で 最大の爆発現象です。フレアにより解放されるエネルギー量の見積りは、フレ アのメカニズムを解明する上で非常に重要です。しかし、エネルギー解放が主 に希薄な上層大気であるコロナで起こっており、見積りに必要な速度 磁場強度などの物理量を直接測定することが非常に難しく、詳細に見積もられ た例はこれまでにはほとんどありません。

一方線では、フレアに伴い、磁場極性の異なる細長い明部(フレアリ ボン)が2つ並んで現われる「two-ribbon」と呼ばれる構造や、それが時間的に 太く、互いに離れる向きに広がってゆく現象が見られることがあります。これ はコロナ中のエネルギー解放により生じた非熱的な高エネルギー粒子や熱が、 彩層と呼ばれる下層大気に伝搬し、それにより線での放射を引き起 こすからです。またフレアリボンが時間とともに広がってゆくのは、コロナで のエネルギー解放が次々と起こっていることに伴います。 私達は、2001年4月10日に発生した大規模なtwo-ribbonフレアを、京都大学花 山天文台ザートリウス望遠鏡を用い、線で観測しました(図 1左)。 線では、太陽表面を高空間分解能の観測することが可能で、この観 測結果によりフレアリボンの成長速度の場所による違いを詳細に調べることが できました。

これを基に私達は、フレアリボンが広がる速度とフレアリボン外縁の光球磁場 強度(図 1中)を用い、またフレアのモデルを仮定することで、解放されたエネ ルギー量を見積もりました。そして見積もられた量を、エネルギー解放量を良 く表しているとされる、硬X線や電波の光度曲線と比較しました(図 1右)。 これらの光度曲線が非常に良い一致を示したことから、見積もりが間接的では あるものの、空間的な構造を知ることが出来る、非常に精度良いものであると 言えます。

(浅井 歩 記)



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