2009/2010 CMO火星通信』火星觀測ノート (9)

2009/2010年の北極冠の縮小状況

 CMO #381 (25 February 2011)

南 政 次、西田 昭徳


2009/2010年の接近は久し振りに北極冠の縮小を北の春分前から観測できる機会であった。但し小接近に近いために、また冬季でシーイングに恵まれる機会はほとんど無かったために、ここにグラフとして結果を提供するが、少しバラツキがあるようである。観測は南政次(Mn)の足羽山の福井市自然史博物館天文台の20cm鏡で得られた多数のスケッチを使い、計測もMnが行ったが、ドルフュスの公式によるグラフ化は西田昭徳(Ns)が行った。ドルフュスの公式(Icarus18(1973)142)は、古い話だが南極冠の場合について、CMO#003(25Feb1986)号で紹介してあるほか導出の仕方も含めて廿数年の間に何度かCMOで書き下しているので、ここでは省略し、式だけ述べる。

 

 いま、φを中央緯度、ψを北極冠の半角とすると、ψ=-|φ|+arccos[1-(d/r)]となる。ここで r はスケッチ径の半分(半径)d は極冠の深さである。したがって、雪線Θ

  Θ=/2)-ψ=/2)+|φ|-arccos[1-(d/r)] 

となる。引用する図は横軸がλ、縦軸がΘである。

 

注意するのは。この方式では北極冠の東西巾は度外視することである。実は、もし東西巾を測ろうとすると、位相角の大きいときは困難であるほか、シーイングによって可成り違って見える。深さdは位相角があっても測定上は誤差が少ない。

 

 尚、今回の北極冠の予告については、

CMO#357 (25 April 2009)

Forthcoming 2009/2010 Mars (1)

Mars in 2009/2010(2009/2010年の火星). I

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn5/CMO357.pdf

CMO#363 (25 October 2009)

Forthcoming 2009/2010 Mars (8)

今回の火星の見掛けの大きさや位相の変化

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn5/CMO363.pdf

等で行っているほか(ここの図によるとλ=085°Lsぐらいから公式を換えねばならないことが分かるが、今回は末期なので無視した)

CMO#289 (25 March 2004)  Repo#24

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/289OAAj/index.htm

も参考になろうし、一般論としては、

CMO#338 (25 Nov 2007)

Forthcoming 2007/2008 Mars (14)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2007Coming_14.htm

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2007Coming_14j.htm

も必読であろう。

 

 さて、話を戻して、Mnの觀測は40分毎に行うために、同じ日(更に同じλ)に幾つも数値が得られる。実際は北極冠が円くはないために方向に依って違った値が出るので、バラツキが出る。出ない方がおかしいのである。特に北極雲が出ているときは同じ日同じλでも変わる。春分前からλ=010°Lsぐらいまでは北極雲の動きが激しいので、グラフでは白点で示している(実際はλ=020°Lsあたりまで白雲は出る)。また、北極冠が縮小し円形に近くても円形がマレ・アキダリウムの方に偏っているために、マレ・アキダリウムが見えるときは大きく見える。λ=020°Ls のあたりはマレ・アキダリウムが見えていたし、λ=040°Lsあたりもそうであった。グラフにもその特徴が見えている。

 

  なお、ドルフュスが1946~1950年頃に集めた資料(たとえばCMO#109(25Sept1991)に載せている)では今回の結果より稍小さめに出ているように思う。λ=020°LsあたりではドルフュスはΘ=22°N~28°Nを出しているのに対し、われわれのはΘ=25°N~30°Nとなっているようであるし、λ=040°LsではドルフュスではΘ=22°N~23°N、われわれではΘ=23°N~30°Nぐらいの差がある。

 この範囲はいわゆるボームのプラトーの範囲に入るのであるが、これによるとΘ=26°Nあたりで一定である(ボームの場合は実に仰山の結果を平均化している)

なお、λ=066°Lsではわれわれはω=116°Wでタルシス三山の見えるかなりよいシーイングの機会を得たのだが、この時はΘ=16°Nあたりで、ドルフュスの巾に入っている。

 ボームのプラトーの有る無しは前年度の黄雲の活動に関わるという話があるが、今回のわれわれの結果からはどうであろうか。ただ、先にも述べたように北極冠の偏りのために、プラトーもwavyになっている。黄雲との関係は定かでないが、とにかく春分後直後は北極冠の溶解は速くはない。λは進んでも、春先は未だ低温で、溶解を速めるような風がまだ弱いのかも知れない。大循環との関係は重要で、上に引用したCMO#338 (25 Nov 2007)Forthcoming 2007/2008 Mars (14)を参照していただきたい。

 

 なお、観測中、中島孝(Nj)氏とも何度も話し合ったが、今回の北極冠は縮小が遅いように感じられた。但し、λ=085°Lsぐらいから急速に縮小化した。足羽山でのMnの観測はλ=124°Ls =4.8")迄であった。


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