CMO/ISMO 2020 観測レポート#20

2021年六月の火星観測報告

 (λ=053°Ls ~λ=066°Ls)

村上 昌己

CMO #509 (10 July 2021)


・・・・・・ 今期20回目の観測レポートは、六月中に『火星通信』に寄せられた画像より纏めることとする。六月下旬になって、視直径は3秒角台と小さくなっているが、メリッロ(FMl)氏とルウィス(MLw)氏は撮影を継続して報告されていて、大まかな暗色模様はまだ捉えられている。

この期間には火星は「ふたご座」から「かに座」へと入って順行を続けていた。23日頃にはプレセペ星団の中を通過した。日没後の高度も低くなって、21時台には没するようになり、西空の開けているところでなければ見ることは難しかった。

 


 

六月には、視直径(δ) δ=4.2”から3.9”まで減少した。季節(λ) λ=053°Lsからλ=066°Lsまで進んで、北半球の初夏になっている。北極冠の縮小はすでに進んでいて、高山の午後の山岳雲の活動が活発になる季節になってきている。中央緯度(φ) 12°Nから19°Nと大きく北を向いて、北極冠が見えている。位相角(ι) 24°台から19°台となった。観測期は最終盤である。

 

 

・・・・・・ 六月の火星面の様子

報告された画像から、火星面の様子を日付順に並べた画像をご覧いただく。大きな暗色模様はまだ同定できる。

 


 

 

・・・・・・ 六月の観測報告

  2021年六月の観測報告は、アメリカ大陸方面からは、メリッロ(FMl)氏より4観測の報告があった。ヨーロッパ側からは、ルウィス (MLw)から2観測の報告があった。

日本からの報告は、森田行雄(Mo)氏から五月の追加報告が2観測あった。六月も撮影を試みるとのことであったが、平日は帰宅が20時頃になるとのことで、チャンスがなかったようである。

合計して3名からの8観測であった。それぞれの観測者の画像は次のリストのリンクから辿れる。

 

   マーチン・ルウィス (MLw) セント・アルバンス、英国

   LEWIS, Martin (MLw) St. Albans, Hertfordshire, the UK

      2 Colour Images (13, 22 June 2021) 45cm Dobsonian, with an ASI 224MC

         https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_MLw.html

 

   フランク・メリッ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

   MELILLO, Frank J (FMl)  Holtsville, NY, the USA

      4 Colour Images (11, 13, 17, 24 June 2021)  25cm SCT with an ASI120MC  

        https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_FMl.html

 

・・・・・・ 追加報告

   森田 行雄 (Mo)  廿日市市、広島県

   MORITA, Yukio (Mo) Hatsuka-ichi, Hiroshima, JAPAN

      2 Sets of LRGB Images  (29, 30 May 2021)  36cm SCT with an ASI 290MM

         https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2020/index_Mo.html

 

 

・・・・・・ 202011月のダスト・イベント画像

 伊舎堂氏よりの追加報告の中には、11月中旬のダスト・イベントの時の画像が含まれている。ωを揃えた「40分インターバル」撮影画像があり、いくつかを取り上げる。15日には4回、16日には5回、19日には7回のインターバル撮影をこなしている。天候などにより微妙にずれてしまうところは仕方のないことである。

 上段はωが揃っているが、下段は少し狂っている。並べて比較することで。ダストの拡がりの日変化が判断できる。マリネリス渓谷 (Vallis Marineris) がダストで細く明るく見えているところが比較の指標になる。全画像はギャラリーページを参照されたい。ここでの色調は筆者が弄くっていることをお断りしておく。

 


 

 参照記事として、「40分毎観測のすすめ」CMO/ISMO #387 を、ご覧いただきたい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/387/Mo_Mk_387.htm

 

 筆者も同様に、小口径ながら、ダスト・イベントの期間にωを揃えた撮影をしている。右側に示した参考図は、寄せられた多くの画像から、各日のダストの拡がりを示しているものである。日毎のダストの活動に関しては以下の第13回のレポートに掲載されている。

        https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/502/2020repo_13.htm

 


 

この期間の筆者の全画像を並べた集合画像は、下記のリンクで見ることができる。

http://isseikai-kudan.sakura.ne.jp/www2/planet/mars_topic/mr_202011_Dust_Mk.jpg


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