3C273

3C273:クエーサーの発見とその正体

3C273の拡大画像
図1:3C273 (トップ画像中央付近の切り出し)

3C273は、最初に見つかったクエーサーです。3C273というのは電波源の名前ですが、その正体を調べていくうちに、クエーサーという天体の発見につながりました。 「クエーサー発見」の物語 はこちらをご覧下さい。

クエーサーとは?

銀河の中心に太陽の質量の数千万倍から10億倍程度の超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホールということもあります)が存在し、 そこに何らかの原因でガスが降ってくるとブラックホールの周りにガス円盤(降着円盤)が形成されます。 降着円盤は10万度程度の温度になり、極めて明るく輝きます。その光度は太陽の1兆倍程度に達します。これがクエーサーです。 あまりに明るくそれが存在する銀河が見えなくて恒星状に見えます。降着円盤のサイズは太陽系と同程度で、そこから銀河1個分より明るい光を放出しています。 そのエネルギー源はもともとは降ってきたガスの重力エネルギー(位置エネルギー)です。 ガスがブラックホールに落ちていくときに位置エネルギーが運動エネルギーに変わっていきますが、ガス円盤を作って高速で回転しているとガス同士がこすれて熱くなり、 この高温ガス円盤が強力な放射を出しています。また、降着円盤より外側を飛び回っている多数のガス雲がその放射を受けて電離され、これらガス雲が強い輝線を出します。

クエーサーほどの明るさではないですが、同じ仕組みで明るく輝く天体が銀河中心に見られることがあります。 中心の光度がクエーサーほど明るくないので、銀河が見えるのです。このような銀河を発見者の名前にちなんでセイファート(Seyfert)銀河と呼びます。 歴史的にはセイファート銀河の方が先に認識されていたのですが(1940年代)、クエーサーの正体解明と共にその正体が理解できるようになりました。 本ギャラリーのNGC4151は近傍のセイファート銀河です。

3C273

3C273のスペクトル
図2:3C273のスペクトル

トップ画像のまんなかあたりに星状に見える天体が3C273です(図1 参照)。距離は約20億光年です。発見当時(1963年)としては、びっくりするほど遠い天体でした。 図2は3C273の観測波長での可視スペクトルです。図に「H I」と書いてある明るい輝線は、水素が出すバルマー線と呼ばれる光です。 宇宙が膨張している影響で、地球に届くまでに波長が引き伸ばされるため、地球で観測される波長は我々がよく知る水素の波長とまったく異なります。 この輝線は、上記電離ガス雲が放つ輝線です。電離ガス雲はブラックホールの強い重力に拮抗する高速(数千km/s)で運動していて、 そのため光のドップラー効果で輝線の幅が広くなっています。実は、この輝線幅等から巨大ブラックホールの質量が推定されています。

ところで、図1をよく見るとクエーサーから右下に少し延びた構造が見えています。クエーサーに付随するジェットです。 電離されたガスがブラックホール周辺から光速に近い速さで飛び出しているものです。 どのようにジェットが形成されるのかはよくわかっていませんが、磁場が関係していると考えられています。

なお、3C273 は電波で明るいクエーサーですが、一般的には電波強度の弱いクエーサーの方が多いです※1

※1 クエーサーの語源は何でしょうか?最初は3C273のように、電波源として発見され、恒星状の電波源ということで、 準恒星状電波源:quasi-stellar radio sourceと呼ばれていましたが、やがてこれをつなげてquasar(クエーサー)と呼ばれるようになりました。 一方、電波強度の弱いクエーサーもたくさん見つかり、これらはquasi-stellar object(QSO)と呼ばれ、quasarと区別して使っていた時代もありました。 しかし、今は区別なく使う人がほとんどです。今では、それぞれ、radio loud quasarとradio quiet quasarと呼ぶのが一般的に見えます。

宇宙論的天体としてのクエーサー

3C273は、発見当時(1963年)は極めて遠い天体でしたが、その後このような天体は次々と発見され、 遠方の宇宙(つまり昔の宇宙)にはクエーサーがたくさんいたことがわかっています (例:QSO B1422+231 クエーサー)。 見つかっているクエーサーでは100億光年位(宇宙誕生30数億年頃)のものが多いです。 ただし、クエーサーは常にクエーサーとして存在しているわけではなく、間欠的つまりある期間だけ非常に明るくなる現象と考えられています。 間欠的といっても、銀河の一生に一回だけ明るい期間があるだけなのかもしれませんが、よくわかっていません。

宇宙誕生後8億年頃にもクエーサーが存在することが知られています。こんな早い時期に既に超大質量のブラックホールが形成されていることになります。 こんな大質量のブラックホールがどのようにできるのかは未解明で、天文学の大きな研究課題となっています。

トップ画像
2024年6月11日 21時00分(JST)
観測装置:TriCCS
露光時間:g, r, i各バンド 1080秒
写野:10.6x6.3arcmin
Ⓒ 京都大学岡山天文台/ 東京大学

スペクトル
2024年5月20日 19時51分(JST)
観測装置:KOOLS-IFU
露光時間:VPH-blue 840秒
Ⓒ 京都大学岡山天文台